第86話 このゲームは、先に発言する者が有利となり、後から発言する者は、不利となる。
1学年特別テスト4日目。
「三条と電話か? 仲がいいんだな」
外に一人でいた豊田を見かけたオレは、そう言って豊田の元へ行く。
「あんな奴と仲良しなわけないでしょ」
三条は、豊田から嫌われているのか。
「そうなのか……それより松原がリーダーを呼んでいたぞ。今日のリーダーは、豊田だろ?」
「松原が?」
「あぁ、そろそろ学校からメールがくる時間だ。何かあったときすぐに対応出来るよう今日は、出来るだけチームで行動しようということになったんだ」
「そう……」
「じゃあ、みんなのところへ行くか」
そう言ってオレは、来た道を戻ろうとすると豊田から服を引っ張られた。
「ねぇ、大山。連絡先教えなさい」
「何をいうかと思えば急な要望だな」
「急で悪かったわね。で、交換してくれないの?」
豊田が何を企んでオレの連絡先を交換したがってるのか知らないが、まぁ、連絡先なら教えても大丈夫か。
「はい、オレの連絡先だ」
「ありがと」
豊田は、すぐに連絡先を登録した。
「じゃあ、行きましょ」
豊田は、そう言ってオレより先に歩きだした。
豊田は三条のチームメイトだし、油断できない生徒であるのは間違いないな。
───────────
12時過ぎ、お昼を食べた後、メールが来た。
「1学年特別テスト~小試験~」
〈試験内容〉チーム内対決
〈集合場所〉第1会議室
〈ルール〉
①今から一つの『話題』をメールで送る。
生徒は、それについて話し合ってもらう。
だが、5人の内1人だけ違う話題を送る。
②生徒達は、5人の中で誰が違う話題を与えられたか見抜く。わかり次第、担当の先生に報告。
※同じ話題を持つ者は、話題が違うと思う者が誰か当てたら勝利。
違う話題を持つものは、自分が話題が違うと気付いた時点で勝利。
③得点について
・一度目で当てた場合、チーム得点を500点与える。
・外した場合、一回につきチーム得点が-1000となるので注意すること。
・自分の『題名』を口にした場合マイナス1000となる。
あなたの話題は、『カフェ』です。
─────────
集合場所の第1会議室へと着くとすでに皆、集まっていた。
「これで全員揃ったな。ルールは、さっき送ったメールの通りだ」
全員来たことを確認した後藤田先生は、そう言った。
オレは、空いている席に静かに座った。
「じゃあ、さっそく自分に与えられた話題について話してくれ。黙秘という手を使っても構わないがな」
後藤田先生は、そう言って一人、隅のほうへと座った。
黙るのもありか……。
だが、全員が黙ってしまったら何も進展はないままこのゲームが終わる。
一番に話すのは誰だろうか。
オレは、必用がない限り話さない選択を選んだ。むやみに話すことは、このゲームに負けるようなものだ。
オレは、必ずこのゲームに勝つことにした。テストで実力を出せず獲得できる得点を何度も失っている。だからこういうゲームで少しでもチームに貢献しようと考えた。
「う~ん、誰も話さないならオレが仕切らせてもらうけど……」
沈黙の状態が気に入らなかったようで松原は、話し出した。
まぁ、ここは、勝手に仕切らせておくか。
こうやって話し出してくれる人がいることは、こちらもかなり都合がいい。
「ところでさみんなどんな話題を与えられたんだ? ちなみにオレのお題は食べる場所だ」
松原がそう言うと皆、全員が驚いた。
驚いた理由は、そんな具体的なことを最初から言っていいのかと思ったからだ。
もしかしたら松原以外の話題が「服屋」なんてものだったら松原の発言は、大きな失敗となる。
よく、食べる場所なんて言えたものだ。
松原には、何か戦略でもあるのだろうか
「私が与えられた話題も食べる場所よ」
豊田は、そう言ったが、それが松原にあわせてわざと言ったものかどうかがわからなかった。
だが、豊田がこう言ったせいでオレも黙っているわけには、いかないな。
後に言うほど疑われる。
「オレも松原と豊田と同じだ。食べれるところでパフェが食べたりできる」
オレは、少し賭けのようなものに出てみた。
「食べれるところ、パフェか……オレの話題も似たようなものだ。1人で来るものもいれば大勢で訪れる場所でもある」
そう言ったのは平坂だ。
今のところ皆オレと一緒で『カフェ』という話題を話しているように見えるな。
だが、カフェじゃなくてもこの条件は、当てはまる。
「今のところ食べれるところであること、パフェがあること、1人で訪れる人もいれば大勢で訪れるひともいる場所であること……という意見が出たが花咲や豊田は、何か言えることはないか? 言いたくなければ無言でも構わないが疑われることを覚悟しろ」
と松原は、2人にアドバイスする。
「私のお題は、ガッツリした食べ物を食べるところというより軽めのものを食べるところよ」
花咲がそう言うとオレは、一つのことを確信した。
そして一度全員の表情を観察した。
「私も食べるところよ。そこには、私の場合あんまりいかないけど」
豊田がそう言うとみなは、うすうす気付きだした。
さて、もう話し合いは、必要ないな……。
オレは、席を立ち上がり後藤田先生のところへ向かった。
「おいおい大山……もうわかったのかよ」
松原は、オレの行動を見て言った。
「まぁ、当たっているかどうかわからないけどな……」
後藤田先生のところへ行くと口でいうわけにもいかず小さな紙に話題が違うと思った人の名前を書けと言われた。
オレは、一人の名前を書き、後藤田先生から正解の合図をもらった。
正解したがゲームが終わるまでは部屋からでられない決まりだそうでオレは、先ほどいた席へ座った。
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