第64話 この後、よければ4人でお茶しませんか?

 学年別の一騎打ち試験2日目の12月11日。放課後の体育館。


「今日は、よろしくね紗希ちゃん!」


 そう言って手を差し出した北原の手を豊田は、優しく握った。


「うん……よろしく」


「巴ちゃんと藤村さんも監督者としてよろしくね!」


 北原は、椎名と藤村にも手を差し出し握手を交わした。


「中田先生、これっていつでも始めていいんですか?」


 北原は、バドミントンのラケットを持ち、立会人の1年5組の担任ー中田歩夢先生に尋ねる。


「えぇ、監督者含め4人が準備が出来たらいつでもいいわよ」


「わかりました。紗希ちゃん、準備はいい?」


「うん、大丈夫」


「なら、巴ちゃんか藤村さん、開始の合図と時間を図ってくれる?」


「わかりました。今からバドミントンの試合を始めます。先に15点取った方が勝ちです。では、試合スタート!」


 藤村の合図で試合は、始まった。


「じゃ、いくよ!」


 北原は、シャトルを持ち、試合を始めた。




──────────────




「ゲーム終了!勝者、豊田紗希さん!」 


 椎名の終了の合図で試合は、終わった。


「あ~負けちゃった。紗希ちゃん強いね」


 北原は、そう言ってタオルで汗をふく。


「あなたもね。お陰でいい試合が出来たわ」

 

 2人がそう言っていたところを藤村は、ニコニコしながら見ていた。

 

「あ、あの!」


「どうしたのかな? 藤村さん」


 北原は、急に大きな声を出した藤村さんに尋ねた。


「この後、よければ4人でお茶しませんか?」


「4人って私と藤村さん、紗希ちゃん、巴ちゃんとってこと?」


「はい、こうして皆さんと出会えましたので仲良くしたいと思いまして」


「いいね!私もみんなと仲良くしたい」


 北原は、提案した藤村の手を取った。


「豊田さんと椎名さんは、どうですか?」


「別にいいよ」


 豊田は、めんどくさいが藤村の頼みに断りきれず頷く。


「私も賛成。4人でお茶しよ。場所は、やっぱりあそこよね?」


 椎名がそう言うと、北原は大きく頷くが、豊田と藤村は、お互い顔を見合わせた。





──────────────





「じゃ、一曲目いくよ~」


 椎名は、そう言ってマイクをバッと持った。


「いえ~い!! 盛り上げていこう!」


 北原は、椎名のノリに合わせて置いているタンバリンを鳴らした。


「な、なにこれ……もしかしてあなた達のチームは、いつもこうやって遊んでるの?」


 豊田は、カラオケ来てから驚くことばかりで大きなため息をついた。


「楽しそうでいいじゃないですか」


 この状況に慣れ始めた藤村は、そう言って北原からタンバリンを受けとる。


「はぁ~。私、こういうとこ苦手なんだけど」


 入ってから10分もたっていないのに豊田は、カラオケから出たいと思っていた。


「ねぇ、美波。一緒にこの前やったデュエットやろっ!」


 椎名は、そう言って北原を誘う。


「うんっ! やろう!」


「豊田さん、私達も後でデュエットをやりません?」


 北原と椎名が歌っているのを見て藤村は、自分もやってみたいと思った。


「私と? やりたいなら美波か椎名さんとやればいいじゃない」


「いえ、豊田さん……紗希ちゃんとやりたいんです!!」


 藤村は、ガシッと豊田の手を取った。


「えっ、どうしたのよ、藤村さん。いつものおっとりした雰囲気のあなたは、どこへいったの?」


 豊田は、藤村の手を振り払おうとしたが出来ずにいた。


「やりましょ!! ねっ!?」


「わ、わかったから離して!」


 藤村からの謎の圧に負けた豊田は、頷くしかなかった。





────────────────





「ねぇ、この4人のグループチャット作ってもいいかな?」


 歌いきった4人は、一度休憩し食べ物を食べている中、北原は、全員に聞く。


「いいよ~。てか、私、美波以外の連絡先知らないんだけど」


 スマホを触りながら椎名は、ふと思う。


「連絡先交換しましょ! ねっ、紗希ちゃん」


 藤村は、スマホを手に隣でオレンジジュースを飲む豊田に言う。


「うん、いいよ」


 断るのもめんどうなので豊田は、連絡先を教える。


「よしっ、グループチャット作ったよ!」


「ありがとうございます、北原さん」


「美波でいいよ、雅ちゃん」


 北原は、そう言ってニコッと笑った。


「はい、では美波ちゃん。えっと、巴ちゃんとお呼びしても……」


「いいよ。じゃあ、私も二人のこと雅、紗希って呼ぶね」


「なっ、勝手に……まぁ、いいけど」


 豊田は、嫌とは言えず許した。


「紗希ちゃんも私のこと名前で呼んでくれますよね?」


 藤村がそう言うと北原と椎名も豊田に注目した。


「えっ……なにこの状況。あ~もう! わかったわよ、み……雅」


 豊田が少し照れながら名前を呼ぶと藤村は、満面の笑みを浮かべた。


「はい、雅です」


 この時、豊田は、藤村のことをめんどくさいと少し思うのだった。



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