第43話 チーム対抗戦テスト

10月半ば、ホームルームの時間に2学期の期末考査についての説明が行われた。

先生の話によれば今度の期末考査は、『1対1チーム対抗戦テスト』という少し変わったやり方で実施するらしい。


『1対1チーム対抗戦テスト』は、名前の通り、チーム同士の戦いだ。

戦うチームは指名制。

お互いのチームが頷けばそこで決定だ。

チーム全員のテストの点数を合計したもので競う。

今回のテスト、勝ったチームには、そのチームの得点が+1000入ることになっている。

負けた場合には、特に何もないらしい。


─────────────


放課後、カフェで集まったオレらのチームは、テストについて話し合っていた。


「で、近藤はどのチームを指名するべきだと思う?」


「そりゃもちろん、私達と順位が近い11位のチームと戦うべきよ」


近藤は、そう言って頼んだカフェオレの入ったコップを手に取る。


「彩沙の意見には賛成だけどさ、私達、11位のチームのことなんも知らないし誰がいるのかさえわらないのに挑むのはちょっと無理があると思うんだけど……」


椎名は、近藤の意見に賛成しつつ自分の意見を言う。


「確かに。それなら知り合いのいるところの方がいいよね~。知らない人だったら裏でなにされるかわかんないもん」


北原、お前が言うと違和感しかない。

それにしてもさっきから江川と山野が黙ったままだ。

話が難しくてついていけてないとかないよな?


「江川と山野は、近藤の意見はどう思った?」


オレは、話し合いに混ざれるようにに人に問いかけた。


「私は、みんなの意見に任せます」


山野がそう言うと、江川もオレもと続けて言う。


「近藤、オレも近藤の意見は何も間違ってないし最適だと思う。だが、椎名の言う通り何も情報がないチームに挑むのはかなり危険だ」


「なら、あなたはどこのチームと対決するべきだと思うの?」


そうだな……。

知り合いは、ほとんど上位者のやつらばかりだ。


「オレは、濱野のチームがいいと思う」


「あなたそれ本気で言ってるの?私達のチームは、12位。濱野さんのチームは、6位。勝てるわけないでしょ」


「そんなのわからないだろ?近藤、お前はチーム得点にしか目がいってないからそうやって負けることを先に考えてしまうんだ。チーム得点が高いからといって頭がいいと言うことには繋がらない。チーム得点には、テストの点数以外が含まれていることを忘れるな」


オレの言葉を聞いた近藤は、ハッとしたような顔をした。


「ありがとう大山君。忘れていたわ。確かにそれなら上位者のチームに挑んでも勝てる可能性はある。じゃあ、さっそく濱野さんのチームに交渉しに行きましょ。早くしないと他のチームに先を越されるかもしれないから」


近藤がイスから立ちあがると、遅れて北原もイスから立ち上がる。


「あっ、私も行くよ。大山君も行くよね?」


北原がそう言ってオレの方を見た。


「まぁ、付いていくだけなら………」


「さっ、行きましょ。残りの三人は、しばらくここで待っていて」


近藤は、江川と椎名、山野にそう伝えてこの場を立ち去る。

そんな近藤を北原とオレは、後を追った。


───────────


「ごめんね。今さっき、私達のチームは木之本君のチームとやることが決まっちゃったんだ」


濱野は全く悪くないのだが、彼女は両手を合わせて謝る。

遅かったか……。


「そう、こちらこそ引き留めてしまってごめんなさい」


「いいよいいよ。お互い頑張ろうね」


笑顔で言ってきた濱野に近藤は、えぇ、と頷き北原と先にカフェへと戻っていく。

一人なったオレは、濱野に聞きたいことがあり、残ることにした。


「濱野、木之本のチームには、小野寺がいるみたいだが大丈夫か?」


「あっ、心配ありがとね。私なら大丈夫………私にはチームメイトがいるから」


そう言った濱野からは、前の濱野とは何か違うものを感じた。


「なら安心だ」


濱野と別れた後、近藤と北原は、先に行ってしまったのでオレは、一人でカフェに戻ることにする。

すると、オレが進む方向に1人の男子生徒が待ち伏せしていた。


「よう、大山。元気してるか?」


「まぁ……待ち伏せしていたのか?」


「あぁ、お前に伝言があってな」


「伝言……となると相手は、雨野か。で、松原は、何を伝えに来たんだ?」


なぜ直接、雨野が来ないのか気になったがそれはひとまずおいといて伝言内容を聞くことにした。


「オレらのリーダーが大山のチームと戦いたいと言っている」


「それが雨野からの伝言か?」


オレの質問に松原は、頷いた。


これは予想してなかった。

まさか個人で勝負するのと同時でチームでも戦いたいとは……。

どんだけ勝負好きなんだよ。

それに成績優秀な奴ばかり集まる雨野のチームがオレらみたいなチームに勝負を申し込むというのは実質、得点をもらいにきているようなものだ。

雨野は、オレらのチームに得点を貰わないようにさせたいのか?

いろいろ思うことはあるが、とりあえずオレは思ったことを松原に言うことにした。


「この勝負、実質やらなくても勝敗は、決まってないか?どうみても雨野のチームが勝つに決まってる」


「確かにそうだな。オレもそう思う……。だが、雨野が戦いたいと言い出したんだ……お前らと戦うことで何か面白いものが見られると期待している」


松原が雨野のことをどういう風に見ているが知らないがよくわかってる。


「オレらが雨野のチームに勝つという奇跡が起こるとでもいいたいのか?」


「あぁ、そうだ。あの雨野にあんなこと言われたら面白いことが起こるに決まってるだろ」


「そうか……。ところで勝負の持ちかけを雨野が直接オレに言わないのはなんでだ?わざわざ伝言なんか使う必要はないと思うが」


「いろいろあるんだよ。あっ、ついでにさきに聞かれそうだから答えとくけど、この勝負を大山に持ちかけた理由は、雨野がお前に一番に話せと言ったからだ。理由は、知らんけどな」


「一度、チームで話し合ってもいいか?」


オレは、自分一人で答えを出すわけにもいかないのでここは話を持ち帰ることにする。


「もちろん。返事は、雨野にメッセージで伝えろ。いい返事を待ってるぜ」


用が済んだのか松原は、立ち去っていく。


オレは、どちらかと言うと正直雨野のチームとは戦いたくない。

なぜなら絶対に勝てないからだ。

あちらは、100位以内の奴が全員。

それに比べてオレらのチームは、100位以下が2人もいる。

学力の差は、比べ物にならないくらいだ。

負ける確率の方が高い戦いにわざわざ挑む理由が見当たらない。


さて、ここはまずチームメイトに勝負の話をする前にオレなりに雨野のチームと戦うメリットを考えることにしよう。

そして、雨野がどうしてオレらのチームに勝負を持ちかけてきたのかも……。




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