第13話 明日行われるゲームのための作戦会議
体育館裏には二人の生徒がいた。
「山野、オレと付き合ってくれない?」
「えっと……どなたでしょうか」
山野は、松原に告白されていた。
「オレは、1年1組の松原楓だ」
「えっと、松原君。私はあなたと初対面ですよね? それなのに急に告白なんて……」
「一目惚れってやつだよ」
そう言って松原は、ふっと笑った。
「一目惚れですか……。ですが、私なんか可愛くもないですし……それに私は松原君のことを何も知りません」
「そういうのは、今から知ればいいんだよ。お試し付き合いでいいからさ」
「あの、少し考えさせてください」
「おう、返事待ってるぜ」
そう言って松原は、去って行った。
──────────
放課後の空き教室でオレと近藤と椎名は、山野からの相談を受けていた。
「やめといた方がいいと思う」
椎名は、はっきりと山野に言った。
「そうね。松原君は、学校で評判悪いし、やめといた方がいいわ」
近藤も反対した。
「松原と仲がいいならいいが山野は、松原とは初対面だろ? オレも反対だ。けど、山野が松原のこと好きなら反対しない」
松原がどんな生徒知らないが、嫌な気しかしない。理由は特にないが松原は、雨野のチームだ。
ただの告白だと思えない。
「みゆは、松原のことどう思ってるの?」
椎名は、優しく尋ねた。
「どうって言われましても……私は、松原君のこと何も知らないのでまずは知りたいです」
「そう。なら、私は松原君とどうしたいのかは、みゆが決めるべきだと思う」
最終的な決断は、本人に任せるのが一番だろうと思ったのか椎名は、山野に言う。
「巴さん……わかりましたっ。私、一人で考えてみます」
そう言って山野は、教室を出た。その後、オレ達は解散しオレは、寮へと帰ること にした。この学校は、本当に広いな。一体、いくつ教室があるのだろうか。
「ん?」
オレは、ふとある教室が気になり中を覗いた。
その日の夜、山野から一件のメッセージが送られてきた。メールの内容は、松原と付き合うことになったという報告メールだった。山野と松原が……本当に大丈夫なんだろうか。
─────────
「山野さんに告白したんですね」
雨野は、中庭の木陰でチームメイトである松原に電話していた。
『これで山野がオッケーしたら、このまま計画通りに作戦を進めるとするよ』
「わかりました。あともう一つ、芽衣さんの監視もお願いします。動きがあれば私も何か考えますので」
『わかった。オレは、引き続き雨野のために動くとするよ』
「はい、お願いしますね松原楓君」
雨野は、そう言って電話を切った。
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ある日の朝、1年生は、体育館に集まり、少し遅めの『オリエンテーション』について生徒会長が舞台の上で説明していた。
「皆さん、おはようございます。生徒会長の中村美桜です。本日は、新入生オリエンテーションとして生徒会で企画したチームで行うゲームについて私から説明したいと思います」
オリエンテーションか。一体、何をするのだろうか。
「では、ゲームの説明をします。ゲーム内容は、チームで協力してこの学校内にあるヒントを集め、一つの答えにたどり着くというゲームです。もちろん、制限時間までに答えにたどり着いたチームには、得点が与えられます。ゲームの詳しい詳細は、学校からのメールで確認してください。では、以上で私からの説明を終わります」
───────────
放課後、カフェでオレ達は、チーム全員で明日行われるオリエンテーションのゲームについて話し合っていた。
「みんな、一通りゲームの内容は、見たかしら?」
近藤は、チームメイト全員に尋ねる。
「見たよ。早く正解にたどり着いたら高い得点が貰えるんだよね?頑張らないとね」
北原は、笑顔で近藤に言うと、近藤は、そうねと一言返した。オレは、スマホをポケットから取り出し、学校から来たメールをもう一度黙読する。
『新入生オリエンテーション』
日時:6月2日
時間:放課後の4時から6時の2時間
目的:チームでの団結力を高める
〈ゲーム内容〉
①校内にあるヒントを集め、一つの問題に取り組む。
②制限時間までに問題を正解したらチーム得点を獲得できる。
〈チーム得点〉
1位ー50点 6位ー15点
2位ー40点 7位ー10点
3位ー30点 8位ー8点
4位ー25点 9位ー4点
5位ー20点 10位ー2点
※以下の順位は、獲得得点なし
※早く正解するほど得点は、大きい。
「私は、効率良くこのゲームをクリアするために一つの作戦を立てたわ。大山君?聞くつもりある?」
スマホを見ていたオレに近藤は、尋ねてきた。
「まぁ、あるかな」
聞かなくてもだいたい何を考えているかわかるが、まぁ聞いておくか。
「じゃあ、言うわね。私は、このゲームチーム内で2つのチームに分けてやった方がいいと思うの。ヒントを集めるチームと頭を使って答えを導くチーム。どうかしら?」
作戦を言った近藤は、なぜかオレを見る。なんだ? オレが近藤の作戦に対して何か言えと。
「いいんじゃないか。ヒントを探している間に集中して答えを探す……効率は、いいと思う。チーム分けは、どうするんだ?」
オレが何か発言しないと話が進まない気がしてオレは、近藤が提案した作戦について言う。
「そうね。私と北原さんと大山君が問題を解くチーム、後の3人がヒントを集めるチームよ」
「おい、待て。何でオレなんだ?」
まさか自分が問題を解くチームになるとは、予想してなかったのでオレは、近藤に聞く。
「あなた頭の回転率良さそうだもの」
「偏見だな……」
「まぁ、大山君は、ほっといてとりあえずそのチームでいきましょ」
近藤がそう言って解散となった。
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ショッピングモールのフードコート、そこで二人の生徒は、話し合っていた。
「チームを二つに分ける?」
足を組み、ジュースを片手に持つ豊田紗希は、目の前に座る三条幸人に聞く。
「あぁ、オレと瀬川の二人は、問題を解く。だから後の4人は、出来るだけ散らばってヒントを探してほしい」
「なるほどね。ところで、あんたなに考えてんの?」
「ん? なんのことだ?」
「はぁ~もういい。あんたが他のチームの奴と協力していることは、知ってる。けど、あんたにも考えがあるからそうしてるんでしょ? なら、私は、黙って見とく」
「あぁ、そうしとけ。噂をしていれば来たな」
三条は、笑ってこの場に来たチームメイトでもない一人の女子生徒を手招きし、座らせた。
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同時刻、屋上では、濱野と平坂と所谷うららの三人で明日のオリエンテーションについて話していた。
「私達のチームは、全員でヒントを探してメールでやり取りしていこう」
リーダーである濱野は、平坂と所谷に提案する。
「全員の方が多くヒントが見つかりそうだな」
平坂は、濱野の提案に賛成する。
「いいと思うよ。じゃ、明日は、頑張ろうね」
所谷がそう言って濱野は、頷いた。
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「ヒントは、多いほど正解に近づきます。なので、私以外は、ヒントを探してほしいです。私は、皆さんが集めたヒントを元に問題を解きます」
そう言ったのは、チームのリーダーである雨野だった。
「一人で大丈夫なの?」
笠音は、雨野一人でなんとかなるのかと心配になる。
「大丈夫ですよ。私一人の知識でなんとかします」
雨野の自信満々な言葉に笠音は、ため息をついた。
「はぁ~わかったわよ。あなたに任せるわ」
「はい、穂乃果さんも明日は、頑張ってくださいね」
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