第11話 チーム対抗戦

「皆さん、今日は高校入学して初めての行事について話したいと思います」

 

 6月に入り学校にはなれてきて皆余裕な感じが出てきたといえるある日のホームルーム、3組担任の浅間先生は、そう言ってホワイトボードに何かを書いていく。


「この行事は、生徒会が提案したものです。詳細は、今から配る紙に書いてあるから見てくださいね」


 先生は、生徒に紙を配っていく。



       『チーム対抗戦』

〈開催日時〉6月2日~6月5日

〈目的〉  チームの団結

〈ルール〉

①チームのリーダーを決める。

※決めたら、先生の誰かに伝える。

※一度決めたらリーダーは変えないこと。

②他チームのリーダーを3日以内に当てる

※リーダーを当てるのは、何回でも可。

※だか、リーダーを外した場合マイナスの得点が入る。

③期間最終日、チームのリーダーがわかったら配布されるプリントに書き提出すること。

④期間終了後、得点はチーム順位に影響する

当てた場合ー +5点

外した場合ー   -10点



「書いてあることをよく読み、明日から皆さん、それぞれチームで頑張ってくださいね」


 ホームルームが終わり近藤がすぐにオレに話しかけてきた。


「大山君、放課後集まりましょう」


「あぁ、わかった」


───────────


 放課後、オレらのチームは、近藤の部屋に集まった。

 図書館や教室は他のチームに話を聞かれる可能性があるためここに集まった。


「まず、リーダーを決めましょうか」


 近藤は、進行役になり、話し合いを進める。


「オレは、近藤を推薦する!」


 江川がそう言うと近藤は、江川を睨んだ。


「そんな簡単に決めないで。私は、2位で目立っている。そんな私をリーダーにするのはよくないわ」


 確かに近藤の言う通りだ。

 しっかりした人ほど、リーダーにする可能性が高い。

 だとしたら影が薄い奴とかがなるほうがいあだろう。


「あの、私は大山君がいいと思うんだけど」


 北原は、近藤に提案すると近藤本人も同じことを思っていたのかコクりと頷く。


「私も賛成。大山君、絶対にリーダーって思われなさそうだし」


 椎名の言葉にオレは、なぜそう思うんだと聞こうと思ったが、聞かない方が自分のためだと思い聞くのをやめた。


「私も賛成です」


 椎名に続き山野も賛成する。


「じゃあ、大山君で決まりね。けど、バレないようにいくつか対策しておきましょ。何か案がある人はいる?」


 近藤は、こうして全員から一つずつ意見を聞いていった。


──────────


 チーム対抗戦1日目。


 どの人がどのチームに所属しているかは、学校専用アプリで見ることができるらしい。

 だが、まだ2カ月しかたってない中、どの人がどういう人であるかわからないため、難しい。

 まずは、顔見知りがいるチームを当てるとするか。

 オレは、とりあえず雨野のいるチームのリーダーを当てることにした。

 チームの中心人物である雨野は、確実にないだろう。

 ならば、いつも近くにいる武内か?

 考えていても時間の無駄だし、直接聞いてみるか。


「近藤、オレは今から雨野に会いに行こうと思う。一緒に来てくれないか?」


 放課後、帰る準備をしていた近藤に話しかけた。


「雨野さん? いいけど、まさか、直接リーダーが誰か聞くつもり?」


「あぁ、そうだ。直接聞いて相手の反応を見た方が効率がいい」


「わかったわ、一緒に行く」


「ありがとう、1人じゃ気付けないことが多いからな」


 オレは、近藤と話ながらメールで雨野がどこにいるか尋ねた。

 返事はすぐに返ってきた。

 どうやら今は寮のロビーにいるらしい。

 オレと近藤は、学校から寮のロビーへと移動する。

 寮のロビー着くと雨野がオレと近藤に向かって手招きしているのを見つけた。

 雨野だけかと思ったが、チームメイトもいた。

 どうやら、何か話し合っている最中だったらしい。


「急にごめん、雨野のチームと話がしたくて」


 オレは、そう言って近藤と空いているイスに座った。


「もしかして情報集めかな~?」


 初対面の氷川は、オレに向かってニヤニヤしながら尋ねる。


「まぁそんなのところだ」


「大山君って、千佳ちゃんが言っていた通り面白い子だね。あっ、私の名前は、氷川芽衣だよ。よろしくねっ!」


「あぁ、よろしく」


 名前は、武内に前に聞いたから知っているけどな。

 それよりもオレは、ここに来てから全く面白いことは一言も言ってないんだが。


「雨野さん達は、ここで集まって何をしていたの?」


 あたりを見渡し近藤は、雨野に尋ねる。


「三条君のチームのリーダーがわかったのでそれが本当かどうかを話していました」


 もう、わかったのかとオレと近藤は互いに顔を見合わせた。


「教えてやろうか?」


 萩原は、オレ達に冗談を言う。


「その必要はないわ。それが本当かわからないもの」


 近藤の反応が面白かったのか萩原は、笑う。


「誰がリーダーを特定したんだ?」


 オレは、聞くと笠音が口を開く。


「私よ。どうやって特定したのかって聞かれても答えないけどね」


 笠音穂乃果という生徒がどういう生徒か知らないが、実力ある生徒であることは間違いないな。


「大山のチームは、どこかのチームリーダー見つけたか?」


 萩原は、オレに聞く。


「まだだ」


「そりゃそうだよな。まだ1日目だし」


 武内は、そう言った後、このチームが早すぎるんだよと付け足す。


「これは、独り言ですけど、あなた達のチームのリーダーは、近藤さんでしょうか」


 突然、雨野は、ポツリと呟いた。

 なんだ、この独り言は……。

 何か意味があるのかとオレは、雨野の様子を観察する。

 すると、隣にいる近藤も雨野と同じような行動を取り出した。


「私も独り言を今から言うわ。あなた達のチームのリーダーは、武内君かしら?」


 なんなんだこの状況は……。

 それに、何で近藤は武内だと思ったんだ?

 しばらく沈黙が続き、誰も話さなくなったところ、笠音が口を開いた。


「ねぇ、千佳。この二人にあの提案してみない?」


 笠音は、小声で雨野に尋ねた。


「そうですね、いいかもしれません。あの、大山君と近藤さんに提案があります」


「提案?」


 近藤は、雨野の言葉に首をかしげる。


「はい、あなた達に私達のリーダーを教えるのであなた達のチームのリーダーを教えてください」


 なるほど、そうきたか。

 お互いリーダーを教えあうことで得点が入る。

 どちらも得点が貰えるといういい取引だ。


「いい提案ね。けど、あなた達がリーダーを言うとしてそれが本当かなんてわからないわ。もしかしたら嘘を言うかもしれないし」


 確かに、近藤がいう通りその可能性は高い。

 嘘をつかれてオレらが正直にリーダーを言ってしまった場合、オレらはマイナス点となってしまう。


「では、こうしましょう。もし、私が嘘をついていた場合、私達が今回獲得したチームの得点をすべて無効にするのはどうですか?」


 雨野は、近藤に提案した。


「それならいいわ。大山君は、どう思う?」


「いいと思う」


 この方法は、確実に得点が取れる。

 マイナスになることは絶対にない。


「決まりみたいですね。それじゃあ、他の人にバレないためにもメールでお互いにリーダーを教えましょう。近藤さん、連絡先の交換よろしいでしょうか?」


「えぇ、いいわよ」


 雨野と近藤は、連絡先を交換し、雨野は近藤とオレに1件のメールを送った。  

 雨野から送られてきたのメールには『リーダーは、笠音穂乃果です』とあった。

 さて、こちらもメールを。

 オレは、『リーダーは大山一樹』と書いて雨野に送った。


「やはりあなたがリーダーでしたか。ありがとうございます。これでお互い得点を獲得出来ましたね」


「リーダーは誰かにばらすなよ。バラした瞬間、大山のチームのリーダーを他のチームにばらすからな」


 武内は、オレと近藤に向かってに警告した。


「あなた達もね。大山君、そろそろ私達は席を外しましょ」


 近藤は、イスから立ち上がりオレに声をかけた。


「そうだな、じゃあ、またな雨野」


「はい、また」


 オレと近藤は、この場を離れることにした。


「大山君、雨野さんと仲いいのね」


 近藤は、少し不満そうにオレに言う。


「嫉妬か?」


「な、なんでそうなんのよ! 私は、あなたのことなんて……」


 顔が真っ赤になっているぞなんて言ったら怒るだろうなぁ。


「そう言えば、近藤。さっきの独り言は何のためにやったんだ?」


 オレは、さっきのことを思い出した。


「さっきいた寮のロビーは、生徒がたくさん通る場所。偶然、私の独り言を聞いた者は嘘を信じる。私は、雨野さんのマネをしただけよ」


「なるほどな」


 雨野もよくそんな方法を思い付いたな。

 つまり、偶然ロビーを通った人は、雨野のチームのリーダーが武内でオレらのチームのリーダーは、近藤という嘘の情報を手に入れる。


──────────


 チーム対抗戦2日目。


「二つチームのリーダーがわかったわ」


 椎名は、放課後オレと近藤、江川のいる3組の教室へと来た。


「ありがとう、巴さん。」


 さすが、椎名。

 情報を手に入れるのが早い。


「みんな~! いい情報をゲットしたよっ」


 教室に遅れて入ってきた北原は、嬉しそうにこちらに駆け寄ってきた。


「美波、何の情報?」


 椎名は、北原に尋ねる。


「えっとね、私の友達のチームのリーダーがわかったの。今、彩沙ちゃんにメールで送るね」


 北原はスマホを出しメールを近藤に送った。

 そして、近藤は、届いたメールを開いた。


「どうやってわかったの?」


 近藤は、北原に尋ねる。


「その子と同じチーム人がリーダーの話をしているのを聞いたんだ」


「そう。嘘じゃないわよね?」


 北原が嘘をついてるのではないかと思った近藤は、確認した。


「うん、嘘じゃないよ。言葉だけじゃ信じてくれないかな?」


 しばらく沈黙が続き近藤は、口を開く。


「わかったわ。北原さんのことを信じる」


「ありがとう、彩沙ちゃん」



──────────



 チーム対抗戦の最終日である3日目。


 放課後には、わかったリーダーの名前をプリントに書いて提出することになっている。わかったのは、5人だけ。他のチームは、どれくらいの人数、わかったのだろうか。


 放課後、代表として近藤がプリントにリーダーだと思う人の名前を書き、先生に提出した。


 翌日の朝、オレは、掲示板に貼られている紙を見にいくと自分達のチームが10位であることを確認した。





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