第9話 友達と過ごす休日

 テストが返却されたその日、オレは、学校専用アプリを起動し中間考査の結果を見た。



      ~中間考査結果~

1    雨野千佳       498点

    2      近藤彩沙    495点

    3  三条幸人    494点

    4       笠音穂乃果   492点

    5       木之本翔大   490点

    6  宮瀬奈々    487点

    7  高月颯真    485点

    8 和田樹      483点

    9  木之本柚葉   481点

   10      大山一樹    480点



 自分の点数と近藤、北原、江川、椎名、山野の6人の合計点数を合わせると2470点。この点数がチームの得点となる。


 オレは、240人分の点数をさらっと見ていると部屋のインターホンが鳴った。玄関に向かいゆっくりとドアを開けるとそこには近藤の姿があった。


「お邪魔していいかしら? 聞きたいことがあるの」


「どうしたんだ?」


「入っていい?」


 近藤は、オレの質問を無視して入っていいかと聞いてくる。会話が成立しないのでとりあえず近藤を家にあげた。


「どうぞ、何もない部屋ですが……」


「お邪魔します。あなたが言う通り本当に何もない部屋ね。面白くないわ」


「面白くなくて悪かったな………」


 近藤は、部屋に入るなり、イスに座った。オレは、座るところがなくベッドの上へ座った。


「で、何しに来たんだ?」


「さっき、学校の掲示板を見に行ったのよ。テストの結果が貼られていると聞いたから」


 そうか、近藤はスマホに慣れてないんだった。だから、わざわざ学校の掲示板を見に行ったのか。


「大山君、10位だったみたいね。一瞬見間違いかと思ったわ」


「近藤に10位以内に入れと言われたからな……全力でやらせてもらった」


「なにそれ。あなた、入学試験では手を抜いてたってこと?」


 ここまでくると言い訳が出来ない。ここは適当な嘘でやりきろう。


「それは違う。今回のテストは前日まで一睡もせずに勉強していたから10位以内に入れたんだ」


「そう言うわりには眠そうに見えないわね。182位のあなたが急に10位まで上がるなんて納得できない。もしかして、ずるでもしたの?」


「カンニングしたとでもいいたいのか?」


「えぇ、そうよ。私だけじゃなく他の人もそう思うはずよ」


 このままじゃ、めんどくさい状況になるな。まぁ、こうなることは想定していたが。


「カンニングなんてしてない。疑うなら教室にあった防犯カメラで確認してみるといい」


 こう言えば近藤はオレがカンニングしていないと信じてくれるだろう。


「わかった。あなたはカンニングしていないと信じるわ」


 ひとまずカンニングしていないと信じてもらえたようだ。近藤は、一度聞くと相手がボロを出すまで問い詰めて面倒なことになるからな。


「ところでチーム順位は、見たのか?」


「見たわ。まぁ、予想していた通りって感じね」


 オレは、チーム順位をスマホで確認した。


「40チーム中12位。やっぱり1位は、雨野のチームか」


「1位になることは簡単じゃないわね」


「そうだな……」


「私、一人じゃどうしようもないってことがよくわかったわ。そう言えば、大山君。勉強会の時、一体江川君に何をしたの? 任せろって言ってたけど……」


 あのときのことか。別に大したことはしていないんだが。


「少し楽な勉強方法を教えただけだ。勉強が苦手な奴に無理やり勉強させるのはマイナスだからな」


「へぇ~、少し楽な勉強方法とやらを詳しく聞きたいけど、とりあえず江川君の順位が上がって良かったわ」

 近藤は、そう言ってイスから立ち上がった。


「帰るのか?」


「えぇ、聞きたいことは聞けたから」


「待て、近藤……少し付き合ってほしい」


「あなたから誘うなんて珍しいわね」


「たまにはチームメイトといる休日もいいなと思ってな」


「それなら、江川君を───」


「行くぞ、近藤」


 オレは、近藤を無視して、部屋を出た。


「ちょっと、待ちなさいよ!」


 近藤は、急いで部屋を出たのだった。


───────────


「どこに行くの?」


「ショッピングモールだ。高校生らしいだろ?」


「まぁ、そうね。こういう休日も悪くはないわ。

ところで大山君は、休日は何をして過ごしているのかしら?」


「読書か、たまに外に出るくらいだな。遊ぶとしても友達がいないから誘う相手もいない」


「可愛そうね」


 聞いといてその反応はないだろ……。それに誘う相手がいないのはお互い様だろ?


 オレと近藤は、ショッピングモールに入り、何をしようかと話し合っていると後ろから声をかけられた。


「大山、何してるんだ?」


「えっと……武内か?」


 後ろを振り向くとそこには武内と笠音がいた。

どういう組み合わせだろうか。笠音が不機嫌そうだったので武内に付き合わされているのだろうかと思った。


「今からデートか?」


「いや、友人と遊びにきただけだ」


「そうか、なら一緒に行動しないか? 人数が多い方がいいだろ?」


 武内の提案に近藤は嫌そうな顔をした。そうか、近藤はあまり大人数でいるのが好きじゃないのか。だが、オレは、このまま2人でいると何もせず解散になるだろうと思い近藤の気持ちはこの際無視した。


「それはいいな、近藤はどうだ?」


 答えはNOだろうと思ったが、近藤は思っていた返事と逆のことを言った。


「……別にいいわよ。けど、まずはその人達を紹介して」


 そうか、近藤はこの2人とは初対面だったな。


「オレは、武内康二だ。こっちはチームメイトの笠音穂乃果だ。じゃ、自己紹介も終わったことだし。どっか行くか」


 自己紹介をした後、どこに行くかと話し合うがこのメンツで行くところなんて全く思い付かない。すると近くから笑い声が聞こえてきた。


「私達の学校の制服……」


 近藤は声がした方にいた人の服装を見てそう小さく呟いた。


「三条幸人と豊田紗希だな。それと端にいるのがオレ達のチームメイトの松原楓と氷川芽衣。チーム違うのにまたこそこそとやり取りしやがって」


 武内は、隣で深いため息をついた。同じチームではないのにいるということは何かしらあるのだろう。近藤も疑問に思ったのか武内に尋ねた。


「どういうこと? あなたのチームメイトと違うチームである人がなぜ一緒にいるの?」


「氷川と松原は、スパイみたいなことをしているんだ」


「つまり、あの2人は、仲間のふりをしているってこと?」


「あぁ、そう思ってくれ。あの2人は、チームの順位を落としたら三条のチームに入れるという約束を三条としているらしい。まぁ、これは本人から聞いたことじゃないから本当かどうかわからないけど」


「それ大丈夫なのか? 氷川と松原はチーム順位を落とすため雨野のチームにいるんだろ? その2人をチームから追い出した方がいいんじゃか?」


 チームを裏切るような行為をする奴がいると知ってて知らないふりをするということは何かしら理由がありそうだ。


「2人をチームから追い出そうと雨野に言ったが、雨野はこのままでいいと言ったんだ」


 このままでいい? 雨野の考えていることはよくわからないな。それにしても武内って雨野のことを呼び捨てにしてたっけ……。


「大変なチームね」


 近藤は、話を聞いてそう呟いた。



─────────



 武内と笠音と別れた後、オレは、近藤と一緒に寮に帰った。


「今日は、いろいろ知れたわね」


「そうだな。だが、少し気になったことがあった」


「何かしら?」


「武内と笠音が何一つ隠さずオレらに自分のチームのことを話したことだ。普通ならマイナスな話しは、敵であるオレ達に話さないはずだろ?」


「確かにそうね……。もしかしたらさっき武内君が話していたことは全て嘘とか……」


「そうかもしれないな。実際、武内と笠音は、嘘と事実を混ぜて話していた」


 オレの発言に近藤はなぜそんなことがわかるの?と言いたげな表情をしつつ感心していた。


「あなたの観察力はすごいわね」


「そんなことはない。じゃ、また学校で」


「えぇ、また学校で……」

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