第8話 待ち合わせ

 放課後、約束通りオレは、待ち合わせ場所である噴水に行くとすでに雨野は待っていた。


「待たせたか?」


「いえ、私も今来たところですよ。立ち話もあれですし、そこに座りましょうか」


 雨野は、噴水前にあったベンチに腰掛けた。その隣にオレは座った。


「雨野のチームは、もう6人いるのか?」


「入学式の時に、6人集まりましたよ。私が積極的に声をかけました」


「凄いな。オレには真似できそうにない」


「大山君、話すの苦手そうですもんね」


 そう言って彼女は微笑む。確かに話すのは苦手だが他人に言われると少し傷つくな……。


 話すのが苦手なのはおそらくオレが育ってきた場所が原因だ。これでもまだ頑張っている方なんだが。


「ところで大山君、一つ聞いてもいいですか?」


「ん? なんだ?」


「私は、入学してからずっと疑問に思っていることがあります。理事長が入学式の時にこの学校は、1位で卒業すれば卒業と共に有名企業といわれるところに就職できる権利が与えられると言っていましたが、果たして本当なんでしょうか?」


 雨野は、1位で卒業しても有名企業といわれるところに就職できる権利は与えられないとでも言いたいのだろうか。


「オレに聞かれても困る」


「そうですよね……」


 雨野が何を考えているのかオレには全くわからない。なぜオレに聞いてきたのかも。


「あのもし良ければ、連絡先を交換しません? 大山君と仲良くなれたらいいなと思いまして」


 雨野は、そう言ってスマホをポケットから取り出した。


「別に構わない……」


 オレもスマホを出し、雨野と連絡先を交換した。女子ばかり連絡先が増えていっているような気がするがまぁ、気のせいだろう。


「大山君、私にお手伝いできることがあればいつでも言ってくださいね」


 手伝い? 言っていることが急すぎてなんのことかわからないんだが。


「ふふっ、困らせるような発言をしてしまいすみません。では、今日は帰りますね。この後、チームメイトの皆さんと約束がありますので」


 雨野は、そう言って立ち去ろうとしたが、そのタイミングで誰かがこちらに向かって走ってきた。


「やっと見つけた。千佳、連絡なしで勝手に移動しないでよ」


「すみません、穂乃果さん。新しい友人の大山君と少しお話ししていました」


 雨野は、ニコッと笑いながら彼女にそう言うと穂乃果と呼ばれた彼女は、どうでもよさそうな表情をしていた。


「大山君、こちら、私と同じチームの笠音穂乃果かさねほのかさんです」


「よろしくな、笠音」


 オレが笠音にそう言うと、睨み付けられ、無視された。今の一瞬でオレは嫌われたのだろうか。

何だか近藤の時と同じような反応をされた気がする。


「では、またお話ししましょうね、大山君」


 そう言って雨野と笠音は、立ち去っていった。


──────────


 テスト当日、教室に着くと先に学校に来ていた近藤に話しかけられた。


「大山君、おはよう。今日は、テストね」


「あぁ、おはよう……。今日のテスト、自信はあるか?」


「えぇ、やれることはやったわ」


 さすが近藤、まったく緊張していない。さて、オレも出来る範囲チームのためにもテストでいい点をとっておこう。







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