第5話 情報通な少女
「はぁ~、疲れた」
オレは、寮に戻るなり、ベッドにドサッと倒れた。
北原を入れてあと2人か……。
今のところ全員同じクラス。情報を集めるためにも他のクラスの人が必要だ。よし、ここは自分から誘ってみよう。オレは、寮の一階に行き、管理人に声をかけた。
「すみません、1年3組の大山です。1年5組の椎名巴さんに話したいことがあるんですが呼んでもらうことはできますか?」
「管理人室の電話からその人の部屋の電話に繋ぐことができますよ。それでいいですか?」
「あっ、はい。お願いします」
オレは、管理人室に入った。
「椎名さんですね……はい、どうぞ」
管理人は、オレに受話器を渡した。
「もしもし、大山です。えっと、椎名だよな?」
『大山君?』
たった一度しか話していないがどうやら声でオレだとわかったらしい。
「椎名、少し話したいことがある。今から会えるか?」
『別にいいけど』
「なら、寮のロビーで待ち合わせだ」
『わかった、今から行くわ』
「あぁ、待ってる」
電話を切りオレは、管理人にお礼を言い、ロビーへと向かった。
───────────
「お待たせ」
椎名は、制服を着て現れた。
「もしかしてわざわざ制服に着替えてきたのか?」
オレは、椎名の制服の着方に疑問を感じた。
「そうよ、私服なんてダサい服しかないから。そういう大山君も制服じゃない」
「オレは、私服もってないからな」
「そう。で、話したいことは?」
「椎名、オレらのチームに入る気はないか?」
「大山君の?なんで私が?」
自分が誘われる理由がわからないと椎名は言う。
「情報収集が得意そうだから。これがオレが椎名をチームに勧誘した理由だ」
「なるほどね。確かに私は、情報収集は得意よ。私もどこのチームに入ろうか困っていたから入ってあげる」
「ありがとう。ところで椎名」
「何?」
「この前会ったとき、なんでオレのことを待ち伏せしていたんだ?まるで最初からオレが大山一樹だと知っているかのように……会ったこともないのに」
オレの質問に椎名は、すぐに答えてくれた。
「待ち伏せしていた理由は、あなたに聞きたいことがあったから。君を知っていたのは、ここに入学した生徒書類に張ってある写真を見たから……だからあなたの顔と名前は覚えている」
「ちょっと待て、今、すごいことさらっと言わなかったか?」
「何が?」
「生徒書類は、個人情報だから先生以外は見れないはずだろ?」
「それが何? 私は、情報収集のためなら何でもするわ。この学校のこと、生徒のこと、知れることは知っておきたいの。お姉ちゃんのためにも」
いや、いくらお姉さんのためでもそれはダメだろ。
「そうか。で、さっき言ってたオレに聞きたいことがあったっていう話、あれは、理事長とオレのことか?」
「そうよ。あなたと理事長の名字が同じだったから気になってたの」
椎名は、そう言ってオレを見た。
「気になった理由は?」
「私、この学校で一番信用してないのは理事長なの。だから、あなたがもし息子であれば、あなたに理事長のこと聞こうとしてた。けど、あなたは関係ないって言うから」
「この前も言ったがオレは、理事長とは赤の他人。偶然同じ名字だっただけ」
「わかった。今はそういうことにしておく」
椎名は、そう言いつつ納得していない様子だった。
──────────
「あなたが椎名さんね。私は、近藤彩沙」
次の日の放課後、オレらのチームは、近藤の部屋に集まった。
「こちらこそ、よろしくね彩沙。あと、大山君と江川君、美波も」
椎名は、オレと江川、そしてなぜかいる北原にも言った。
「大山君、なぜ北原さんもいるの?」
近藤は、北原がいることが不満なのかオレに聞いてきた。
「北原が行きたいって」
「まぁ、いいわ。巴さん、あなたは情報収集が得意と言ったわね?頼りにしてもいいのかしら?」
「頼りにしてもらっていいわよ。私にはそれぐらいのことしかチームに貢献できることないしね」
「わかったわ」
「これで残り一人だね」
北原は、嬉しそうに言うと近藤が口を開いた。
「そう言えば北原さん、あなたは私はまだチームの加入を認めてないわ。けど、中間考査ではあなたのことはチームメイトとして認める。けど、中間考査で50位以内に入れなかったらあなたは、このチームから抜けてもらう。それでいいわよね?」
「うん、わかったよ」
中間考査までに6人そろっていなければ、このチームに順位がつけられることはない。だから6人必要なため中間考査では、北原が必要となる。
───────────
近藤の部屋から出て、自分の部屋へと向かうためロビーを通っていると女子二人の話し声が聞こえた。誰かいるのか?
「お願い、山野ちゃん」
「い、嫌です……」
「なんでよ~チームメイトじゃん」
「そうですけど……先生からテスト問題を盗むなんてできません」
そう言った背が小さい彼女は、声が震えていた。だが、そんな彼女に対して、先ほどから頼み事をする女子は、背の小さい彼女にしつこくお願いする。
「なによ、せっかく一人のあんたを入れてあげたのに。ほんとっ使えない奴ね」
「うっ………」
背の小さい彼女は、泣きだしそうになっていた。
これは、とめた方が……。いや、他のチームに関わるのも危険だ。ここは、無視して……。
オレは、スルーしようとしたそのとき、背の高い方の女子が背の小さい彼女の頬を叩こうとする動きが見えた。
「おい、いくら何でもそれはダメだろ」
オレは、振り上げていた女子の手を止め、背の小さい彼女の前に立った。
「な、なによ。あんた」
「オレは、この子の友人だ」
「はぁ? 山野ちゃんに友達なんか」
この生徒は、山野というのか……。
「山野、いくぞ」
オレは、山野の手を取りロビーを離れた。
「あの、私のこと助けてくださりありがとうございました」
前を歩くオレに山野は礼を言う。オレは、ロビーから少し離れたところで立ち止まった。
「チームメイトと仲が悪いのか?」
「仲が悪いといいますか……私と合わないんですよ。私はずるいことなんてしたくないのに……。
あっ、私は1年5組の
山野は、そう言ってペコリとお辞儀する。
「オレは、1年3組の大山一樹だ」
とお互い自己紹介を終えると山野は、あたふたしだしだ。
「ど、どうしましょう。高野さんにあとで何て言ったら……まずは謝って────」
「そのチーム抜けたらどうだ?」
オレが思ったことをそのまま言うと彼女は、驚いていた。
「え?」
「自分とは合わないチームと思ってるんだろ?
なら、抜ければいい」
「……でも、私は、また1人に……」
「あーそういえばオレらのチーム、あと1人足りなかった気がする……」
オレは、わざと独り言を山野に向かって言う。すると、山野は、パッと顔をあげた。
「あ、あの! そのチームに私をいれてください。足手まといなことはしないので」
「わかった。だが、オレらのチームにいる近藤からの許可が下りればな」
「わかりました」
近藤が山野を認めてくれれば6人揃ったことになるな。
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