第4話 クラスメイト

「すごいわね。チームが違うのに仲良くなれるなんて」


 近藤は、自分の席の前で話す女子2人を見て呟いた。


「近藤も混ざってきたらどうだ?」


「無理なこと言わないでくれる?」


「そっか……ならオレが」


「ちょっとなんで大山君が───」


 オレは、席を立ち、そのクラスメイトの女子二人のところへ行った。


「栗山と浦井だったよな? 仲良くしたいから話しに混ぜてもらってもいいか?」


 オレがそう言うと栗山と浦井は、驚いていた。


 まぁそりゃそうだよな……その反応が普通……


「私の名前、覚えてくれたんだ。昨日、クラスで自己紹介しただけなのに」


 栗山は、嬉しそうに言った。


「えっとごめんね? 名前なんだったっけ?」


 浦井は、オレに聞いてきた。


「大山一樹だ」


「大山君ね。よろしく~あっ、よかったらチームに……」


 栗山と薄井は、満面の笑みでオレに言いかけたその時、オレの目の前に北原が立った。


「大山君は、私のだよ。栗山ちゃん、薄井ちゃん」


「美波ちゃん、もしかして、2人は付き合ってるの?」


「そんなわけないよ。私と大山君は、チームメイトだよ」


 北原、紛らわしい言い方するなぁ。誤解されるからやめてほしい……。それに北原、まだチームメイトとして認められてないぞ。それより、北原は栗山と浦井と仲がいいんだな。さすが、誰とでも仲良くなれる系女子。


「あなた、いつの間に北原さんの彼氏になったの?」


 後ろから近藤がオレに小声で聞いてくる。


「付き合ってない。北原が誤解されるような言い方しただけだ」


「へぇ~まぁ、どうでもいいけど。それより、あなたは何がしたいの? 急にクラスメイトに声をかけるなんて……」


「クラスメイトと仲良くする。それは1位になるためには必要なことだ。近藤、必要なものは補え」


「必要なものは補う……わかったわ。あなたの言うことは、納得できるものが多いもの。あなたのアドバイスは素直に受け取るわ」


 この1年間、オレからのアドバイスだけで過ごす人間にならなければいいが……。


「近藤の未来が心配になってきた……」


オレは、そう呟くと近藤は顔を真っ赤にした。


「な、なんであなたが私の心配を……」


「どうした?顔真っ赤にして」


「あなたが変なこと言うからよ」


 近藤は、睨み付けながらオレに言った。


「2人とも何話してるの?」


 北原は、オレと近藤の間に入ってきた。


「世間話だ。そうだよな?近藤」


「えぇ、どうでもいい話よ」


 オレと近藤がそう答えると北原は、ムスッとした顔でこちらを見てきた。


「ホントかなぁ~。私は、2人だけの秘密の話をしているようにみえたけど」


「気のせいよ。仮にしていたとしてあなたは、困るの?」


「怖いよ、彩沙ちゃん。ちょっと、羨ましかっただけだよ」


「羨ましい? 何が?」


「仲いいなぁ~って思って。私、彩沙ちゃんと

大山君と仲良くなりたいから。2人が仲良くなってるところ見てると羨ましくて……」


「そう。でも、残念ね。私はあなたと仲良くするつもりはないわ」


 近藤は、冷たく北原に言う。


「そっか。でも、私は彩沙ちゃんと仲良くなれるように頑張るね」


 北原は、どうしてここまで言われてるのに仲良くしようとするのだろうか。


「勝手にしたらいいわ」


「うん、そうするね。あれ? 大山君、どこか行くの?」


 北原は、教室を出ようとするオレに尋ねてきた。


「ちょっとな……」


「そっか。いってらっしゃい」


 北原は、どこに行くかは追及せず、手を振った。廊下に出て少し歩いていると後ろから声がした。


「おい、待てよ」


「ん?」


 突然、後ろから男子生徒から声をかけられオレは、後ろを振り向く。


「話がある」


「えっーと……誰ですか?」


「誰って、クラスメイトの江川響えがわきょうだ。昨日、自己紹介してただろ?」


「あーそうだったか? ごめん、覚えてない。けど、自己紹介の時、意味不明なことを言ってすべっていた男子がいたのは覚えている」


「それだよ、その自己紹介したのオレ!」


 いちいち声が大きいな……そして反応も……。

しかも自分で自己紹介の時、すべったこと自覚してるし。


「で、江川は、オレになんのようだ?」


「あーそうだった。オレ、まだチーム組んでなくて……で」


「で?」


「大山、確か、近藤と組んでるだろ? そのチームにオレをいれてほしいんだ」


「理由は?」


「組む人がいないからだ」


「他にいるだろ……オレらのチーム以外にも他にチームメイトを探しているチームはあるはずだ」


「そ、それはそうだな……」


 さっきまでの勢いがなくなってる。これは、何か言えないことがあるということか?


「オレに言えないことか?」


「ま、まぁ……。あのさ、大山……今から言うことは他の人には黙っていてほしいんだけどさ」


「オレ実は、近藤に一目惚れしたんだ!」 


「へーそうなんだ」


「おい、その反応はないだろ?」


 オレは、間違った反応をしたのだろうか。


「で、その話と江川がチームに入りたいことは関係があるのか?」


「ある」


「もしかして、好きな人がいるからこのチーム入りたいのか?」


オレは、江川に聞くと江川は頷いた。


「オレがいいと言ってもその理由じゃ近藤は、江川のチーム加入を認めないだろうな」


「そ、そうだよな……」


 落ち込んだ様子をみて、オレは、口を開いた。


「だが、江川。お前が何かチームの役にたてるような特技があれば、話は違うかもしれないな」


「役にたてる何か……それなら、オレ、スポーツ全般得意だぜ」


「そうか。なら、今から近藤にチームに入りたいと言いにいこう。オレもついていくから」


「ありがとな、大山」


 オレは、何もしてないんだが……。


─────────────


「イヤよ」


 わかっていたがまさか即答とは……。教室に戻り、近藤の元へオレと江川は、行ったがすぐに断られた。


「近藤、少しは考えても───」


「嫌なものはイヤ。なに考えてるかわからない男子は一人で十分よ」


 なに考えてるかわからないって……オレのことかよ。


「近藤、江川はスポーツが得意だそうだ……。

もし、今後何かあったとき有利になるかもしれないぞ」


「今後……そうね。江川君、あなたのチーム加入を許可するわ」


 近藤は、江川にそう言うと江川は、とても喜んでガッツポーズをした。


 さっきまでイヤって言ってたのに、返事を変えるのが早いな。


「ところで、江川君」


 近藤は、江川に言う。


「何だ?」


「あなたの入試試験の順位を教えてもらってもいいかしら?」


「順位? それなら201位だが」


「まぁ、予想していた通りね。大山君よりひどいわ」


「それは、自分でも自覚してます」


 江川は、下を向き呟いた。


 こんなにもズバッとひどいと言われるとさすがに可愛そうだ。


「大山君と江川君はテスト2週間前は、私と勉強よ。わかった?」


「わかった」


「いい返事ね。大山君は?」


「オレは、この前答えただろ」


「まさかオレは、大丈夫だから勉強しないとでも言うの?」


 近藤は、今すぐに怒りそうな顔でオレを見た。


「あぁ、そうだ」


 オレは、そう言って自分の席に座り次の授業の準備をした。


「わかったわ、テスト前に私に泣きつかないようにね」


「はいはい」


 入学試験も大して難しくなかったし大丈夫だろう。



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