第3話 初めての連絡先交換
「大山君、今日は勧誘は、やめましょ。ほとんどの生徒が寮に帰っているみたいだし……」
窓から校庭を見た近藤は、そう言って立ち去ろうとしたのでオレは、呼び止めた。
「近藤、連絡先を教えてくれないか?」
「なぜ?」
「連絡先を知らなかったらいろいろ不便だろ?」
「まぁ、確かにそうね」
納得したのか近藤は、スカートのポケットからスマホを取り出し、オレと連絡先を交換した。
女子と連絡先の交換なんて初めてだ……。
連絡先が交換し終え、スマホをズボンのポケットへと入れようとした時、近藤は、オレに先ほどのことを尋ねてきた。
「大山君、一つ聞きたいことがあるの。あなたは、なぜ北原さんをチームに入れてもいいと言ったの?」
「北原が足を引っ張りそうな奴じゃないと思ったからだ。それに北原は、オレと近藤にはないものを持っている」
「私と大山君が持ってないもの?」
近藤は、そう言い首をかしげた。
「人と話す能力だ。北原は、オレ達のチームに必要だと思わないか?」
「確かに必要ね。で、それだけ?」
近藤は、まだ理由があると思っているのだろうか。まぁ、オレが北原をチームに入れたのにはもう一つ理由があるのは本当だ。その理由は、あの北原美波という生徒には、何かしらあると思ったからだ。
「理由は、それだけだ。オレは、適当に判断するような奴じゃない」
もう一つの理由は、近藤には伝える必要性がないと判断したので言わないでおく。
「そう。まぁ、聞きたいことは聞けたし私は寮に帰るわ。大山君は?」
「オレは、少し校舎を見てから帰る。じゃあ、また明日な」
「えぇ、また明日」
─────────────
近藤と別れた後、1組から6組と並んだ教室の前をオレは通っていく。すると、前から1人の女子生徒が歩いてきた。見たことない生徒ということは違うクラスか。他学年ではないだろう。なぜなら、他の学年の階には行ってはならないという決まりがこの学校にはあるからだ。
オレは、その女子生徒とすれ違う……そう思っていた。だが、その女子生徒は、オレが通れないよう仁王立ちし、立ち止まった。
「通してくれないか?」
オレは、彼女にそう言うが彼女は、まったく動かない。
「名前を教えてくれたら通すわ」
「却下だ。よくわからない奴に名前は教えられない。知りたければ、自分から名乗れ」
「1年5組の
せかすように椎名はオレに言う。
「1年3組の大山一樹だ」
「やっぱり。あなた理事長の……っ!!なにするのよ!」
オレは、椎名の頬をつねった。
「何を言おうとしていたか知らないがオレは、理事長とは赤の他人だ」
まさか今日1日で2度もこの質問がくるとは思わなかった。
「そんなこと言っても私は信じないから」
椎名は、オレの何を知っているんだ?
「じゃあ、オレはここで……」
今すぐに椎名から離れたいオレは、歩きだす。
すると、椎名は口を開いた。
「私には、姉がいるの。3つ上の姉が……
姉もこの学校に通ってた。でも……あなたならわかるでしょ?」
オレは、椎名の言葉の意味が理解できたが何も言わなかった。
椎名巴……お前は、オレが仲間だと思って声をかけたのかも知れないがオレは、この学校が秘密にしていることを知るために来たわけじゃない。
─────────────
「ここが今日から過ごす部屋か……」
寮に行ったオレは、自分の部屋を見て驚いた。机やイス、キッチンなど必要な物は置いてある。これじゃあ不便とは絶対に言えないな。何も文句はない。
オレは、ポケットに入っていたスマホを取り出しす。スマホの電源をつけると、近藤からのメッセージが100件以上来ていた。
怖すぎるだろ。何があったらこうなるんだよ。オレは、近藤からのメッセージを見ることにした。
1つ目は、『大山君、少し話したいことがあるの』とあった。2つ目は、『まさか無視?』それ以降のメッセージは、怒りのスタンプが連打されていた。
「ヤバい……明日、近藤に会いたくなくなってきた」
オレは、とりあえず返事を送ることにした。
『どうした近藤。何かあったか?』
送るとすぐに返事が返ってきた。
『返事遅い。明日話すわ』
『ごめん、近藤』
既読はついたが、多分怒ってるな……。明日、もう一度謝ろう。
─────────────
「おはよう、大山君」
教室に着くと満面の笑みを浮かべた近藤が待っていた。
「おはよう、近藤。昨日はその……悪かった」
「別に怒ってないわ。それより、中間考査のことを話したいのだけれど」
「中間考査?」
「えぇ、中間考査が始まると同時にチームの順位付けが始まる。それまでに私達はメンバーを集めないといけないで、私は、一応知っておきたいの」
「何を?」
「あなたの成績を。もし、悪かったら私が勉強を教えてあげようと思って」
「そうか……」
近藤から勉強を教えてもらう……嫌な予感しかしないな。
「で、あなたは入学試験は何位だったの?」
「この学校の専用アプリで見ればいいだろ?」
「確かにそうね。でも、私、スマホを使いなれてないの。だから、見れないわ」
「182位だ」
「それ本当?」
「嘘で下の順位を言う奴がいると思うか?」
「いないわね。その順位じゃ、テスト前は、毎日勉強ね。北原さんは、多分一人でもやれそうだからいいとして問題はあなたね」
「オレは、勉強する気ないぞ」
「何言ってるの?あなた、1位になる気はないの?」
近藤は、イスに座り足を組んだ。
「全くない。卒業と共に有名な企業へ……ってやつには興味ない。それにオレは、勉強しなくても大丈夫だ」
「何その自信……じゃあ、10位以内に入れって言われたらあなたはいけるの?」
「やる気さえあればいける」
「へぇ~。じゃあ、そうしてもらえる?このチームのためにも」
「わかった。でも、あんまり期待するなよ」
「なんでそこは自信ないのよ」
近藤のツッコミにオレは、心の中で思わず笑ってしまう。そんなやり取りをしていると授業開始のチャイムがなり、高校生初めての授業が始まった。
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