第8話 正義を騙る
舞台は切り替わって、対ジェミニ家・ラブライ家戦線。
ジェミニ家・ラブライ家。Xの敵対国家であるY国を支配する家の二つである。Y国は十二の権力を持つ家の支配下にあるのだが——それはまた別の機会に。
また、一つの家が国同等の力を持っているため、本来ならば大戦にまで発展しかねない。
だが、これまでにそんな事例は存在しなかった。
「スタちゃん、片付いた? こっちはもう終わったけど」
「だからその呼び方は止めろと……ひとまず敵部隊は全壊させたが、敵の大将さんは隠れて出てこないようだ」
神や皇帝と呼ばれる者が、Xには君臨しているからだ。
蒼髪ショートに青いスーツのよく似合うクールビューティー——〝水神〟桑水流麗奈と、紅の短髪に和服を着た長身の戦士——〝炎帝〟スタチウム。今回はこの二人が返り討ちにしてしまった。
「幸い、こっち側の犠牲者はゼロ。堕落と戦後の渦中にある皇帝隊にしては上出来さ。いずれ、変えなきゃならないんだけど」
腕に巻かれたリストバンドから、低く落ち着いた声が響く。
「わかっているつもりだ。このままでは、いずれ終わりが来る」
戦火が草木を焼き払い、灰色の煙が空を覆う。
その時、桑水流が何かを感じ取った。
「……このヤな感じ。ぶつかったね」
三つの殺気が、肌をピリつかせる。
桑水流は顔を顰めた。本来誰もが認めるほどに美麗な顔立ちも、戦場に立てば徐々に陰っていく。
「あの人の守った世界、無駄じゃないと信じたいんだけどさ」
舞台は戻り、戦と皇帝隊の戦場。
ラーヴァの父であり、アイリスと奇怪な友好関係を築く人物——守時冬樹が戦っていたのは、特徴的な見た目の二人組。
シフォンショートの緑髪に和風メイド服、引き締まった顔立ち——〝風神〟の異名を持つ戦の幹部、辻風。そして、淡いグリーンショートに黒いメガネ、四肢にお洒落な装甲を身に纏う人物——同じく〝雷神〟の異名を持つ戦の幹部、迅雷。
その周りには少し前まで化け物が並んでいたのだが、もはや動かぬ肉塊に変貌していた。
「このコ一体作るにも手間がかかるんだけど。これ以上損失を産んでも仕方ないし、私が出るか」
「あんな醜悪な肉の塊に愛着とは、センスを疑うな」
「んだとインテリメガネ野郎」
その言葉に顔を顰める迅雷を、爽やかな笑みで静止する辻風。
「まぁまぁ、落ち着きなさい。……さて、守時冬樹」
守時は顔色一つ変えず、涼しい顔で辻風に目をやる。顔の前で日本刀を掲げると、少しだけ鞘から引き抜いてみせた。
幾千もの血を吸い、ぎらりと輝く歴戦の得物。
「私たちとて、訳ありでこちらについている身。不毛な争いは望まないのですが……アイリスさんと一戦交えて気付きました。何が狙いだか知りませんけど、あの人が知ったらどう思うんでしょうねぇ」
「あの人の——だからだよ」
気怠そうに頭を掻き、守時はぐっと伸びをする。明らかにふざけているような、戦う気がないような振る舞い。だが、言葉は間違いなく真剣だった。
「それに、
迅雷の耳が揺れ動く。それを皮切りに、迅雷の体から猛烈な殺気が爆発した。右手の甲冑に、空を切り裂いて雷が落ちてくる。
「……私が化け物にするのは、生前外道だった奴らだけ。副官を実験体にする外道とは違うつもりさ」
「たった一人の正義が笑わせてくれる」
「歩むための一人とたった一人は違う。目的のために内側まで壊す、お前がたった一人だろ」
とどのつまり、迅雷はこう言っている。
元々戦という組織自体に興味はなく、ゆえに構成員の外道は外側の人間だと。
「さぁ、正義を語ろうか」
その言葉が、戦闘の合図だった。
迅雷は守時の目の前まで瞬時に加速し現れる。
だが、それが守時に当たることはない。一瞬のうちに姿を消した。
「残念、大はず——おっと」
それを読み、迅雷が金属の装着型アームから電気球を放つ。合図を受け取り、辻風は無数の斬撃で牽制を仕掛けた。
「飛翔閃」
あの時よりも濃い密度の連撃だが、守時には当たらない。それを音で察知すると、迅雷は辻風の横まで戻ってくる。
「迅雷、メガネが汚れていますよ」
「ほんとじゃん。後で拭いとく」
姉妹らしき会話を繰り広げながら、抜群のコンビネーションが守時を襲う。だが、人には認識できない方法で姿を消し、全てを掻い潜ってみせた。
「今というのは、無限に続く線の中から一部分を無限に切り取ったもの。切り取ったフィルムから己を消し去れば、その一瞬だけ時が止められる——この情報はオマケだよ」
〝機神〟守時冬樹——アダム・イブの誕生に大きく関わっていた天才。改造人間9071、プロジェクトXなど、生み出してきた存在は数知れず。この国を大きく成長させた賢者の一人だった。
今というほんの一瞬だけ、世界の時を止める兵器。その中で行動できるのは僅かな時間だが、強化細胞と併せれば絶対の防御を誇る。
しかし、二人の勝ち筋は皆無ではない。
辻風はそれに気づき、不敵な笑みを浮かべていた。
「つまり、フィルムから消え去る前にそれごと切り裂いてしまえば問題ないと」
「やれるものなら、ね」
余裕綽々な態度を見せる守時。その刹那、両サイドから稲妻と旋風が迫り来る。回避の手は同じ——獲物を狩る獅子の如く、凄まじい速度で辻風は追尾した。
緑の立髪を靡かせ、強烈な一撃を放つ。下方から縦に振られた斬撃が、守時の体を掠める。
そのまま後退し、守時は追撃を絶対の防御で回避する。
「速度が格段に跳ね上がった。一瞬、奥の手を使ったんだろう?」
「さぁ、それは知りませんが……獅子搏兎。どんな相手でも、手を抜かないのが私のポリシーです」
会話を終えると、二人は再び横に立ち並んだ。
ただ前を見据えたまま、迅雷は問う。無駄のない動きの中に、コンビネーションの真髄が見てとれた。
「
「七割の殺意……かしらねぇ。誇りの欠片もないくせに父親を演じ、友人すらも自分のために利用する男は嫌よ」
辻風が前に、迅雷が後ろに立つ。
見えない視線が交差する。素早い踏み込みの刹那、鋭い颯がその男目掛けて襲い掛かった。
「……!」
その攻撃を、守時は右腕で受け止めた。袖が破けると、中から黒い甲冑が姿を現す。
金属と金属を通じ、二人の視界を真っ赤な扉が切り分けた。
——傷跡。
屍が踊る古戦場。焼けるように赤い空。無数の折れた剣や銃が大地に突き刺さり、空の真紅を反射していた。
その中心に佇むのは、血に塗れたメイド——その鼻にまだ傷はないが、所々に細かな切り傷が刻まれている。
刀を右手に持って、虚空を見つめていた。
「……おや、まだ一人残っていらしたのですね」
流れ込んできた記憶に過ぎない。それにもかかわらず、記憶の者は鷹のように鋭い視線でこちらを睨みつけてきた。
溢れ出る殺気は、解き放たれた以上満たさなければ尽きることはない。
「私は私を名乗るため、私自身を完成させる」
歪んだ視界が元に戻り、空中で静止する辻風が目に入る。辻風の視界にも、守時の姿が写っていることだろう。
「貴様……!」
辻風は、侮蔑と厭悪で表情を満たしていた。
怒れる風神に相応しい、空気が震えるほどの殺気。その姿は、人を斬っていたあの者とはどこか違っているようだった。
「前々から貴方の残虐性は小耳に挟んでいましたが、実の娘にあれほどの事を……! 愛する者を失った怒りを、護るべき幼子にぶつけるというのですか⁉︎」
いつも落ち着いている辻風とは一変、らしくない感情的な糾弾。また違う暗闇なのか、心の底から純粋に湧き上がる怒りなのか——だが、その程度のことで守時は動かない。
「君も面白いことを言う……この〝機神〟に、情などがあると思っているんだからね」
光のない笑みを宿すその神目掛け、激しい雷を纏った神が突っ込んでくる。耳をつん裂くような轟音と共に、大地が吹っ飛んでいく。
「うるさいよ、メガネ野郎」
迅雷が割って入り、力一杯守時を殴り飛ばした。間髪を容れず、電流を纏った装甲をフル稼働させて追撃を叩き込む。規格外の速さに、時間線を切り取る暇がない。
「メガネは君も同じだろうよ」
繰り返される超連打を守時は受け止めた。凄まじい力に金属が悲鳴を上げたかと思いきや、迅雷の腹に強烈な蹴りが叩き込まれる。
「うッ……⁉︎」
装甲が抑えられており、吹き飛べずに元の体勢へと戻る。だが、この程度の事態は想定内——迅雷は装甲を捨て去り、守時の顔面に蹴りを放って退避した。
瞬時にアイコンタクト。
二人の位置が入れ替わり、宙空で辻風が前に出る。
「飛翔閃——時を止める暇は、与えませんよ」
怒りからか、辻風が放つ刃風は常軌を逸した破壊力を誇っていた。
形だけの戦いだったはずが、地形が変わるほどに激しい攻防へと変貌する。
「……やれやれ、面倒なことを」
回避不能の攻撃を前に、守時は懐からサイバーパンク風の道具を取り出した。バラバラに分かれている二本を重ね合わせると、力のままに勢いよく一振りを放つ。
空飛ぶ斬撃を全て消滅させると、剣は再びただの道具に戻る。
「あんたの首、もらってくよ」
装甲を新たに付け直すと、瞬く間に迅雷は目の前まで躍り出た。だが、それすら読みの内——道具の組み方を変えて銃を作り、守時は一瞬のうちに銃弾をかます。
「君たちがあまりにも疾いから、手を抜けないんだよ!」
舌打ちと共に、迅雷は銃弾を回避する。咄嗟のことに躱しきれず、頬に血が滲む。
本来、あらゆる攻撃を通さない強化細胞——それを貫く最新鋭の技術を前にしても、迅雷は止まらない。
「私もアンタが大嫌い。ここまで来たら、消えてもらうよ」
「正義を掲げる割に、更生の余地は与えてくれないんだな。脅威を排除する堕落組織か、正義を掲げる悪の組織か……君はどっちだ」
「私は私が正義で、その邪魔をする全てが悪。この戦いに善悪なんて存在しない——あるのは、正義という建前に飾り付けられた各々のエゴだけ」
かつての功績に甘んじ、年々弱体化を続ける皇帝隊。
それらを変えるべく結成されたものの、その多くが欲望の心に従って動く〝戦〟。
——この戦いに、正義はいない。
答えなど存在せず、そこにあるのは各々のエゴのぶつけ合いに違いなかった。
「それが激化した以上、私たちが止めることは許されない。終了のゴングは、心臓が止まる音以外に許されません」
刀で真っ直ぐに狙いを定め、辻風は空から刺突を叩き落とす。
すぐそこまで迫った瞬間に迅雷が離れ、雷の如き颯が大地に降り注いだ。命の鳴動と共に爆風が戦場を包み、大地が勢いよく捲れ上がる。
「悪いが、僕はまだ死ねないんだよ」
時から自分を切り離す暇もない、視覚の限界を超えた一撃だった。
だが、その男は入念。
「…………かかったな」
刹那、辻風と守時を包む空間にバリアが張られた。音を聞き、辻風はその正体を理解する。
「ただの人間に、人間の時は止められない。なるほど、戦場の一部と境界線のみを時間軸に固定して、逃げ場を消し去ったと」
「いやはや、驚いた。流石の戦闘センスだ」
守時の持つ機械は、連続する時の頁に操作を加えることで時空を歪めることができるもの。
人間など、操作者以外の生命には対応できない。ゆえに、空間の境界——言うなれば、そこにその瞬間存在する大気——それを停止して永続的に固定することで、空間と空間の間に透明な壁を作ったということだ。
「刀を扱う君にとって、閉所での戦闘は不利だろう?」
守時が笑みを浮かべると、無数の銃口が出現、辻風を狙っていた。
人間の理解を超えた兵器を作り出し、己が実験の成果のためならば他人を顧みない——皇帝隊第二隊隊長〝機神〟守時冬樹。
「それがわかろうと、貴方にできることはない」
対するは、父の誇りを受け継ぎ、人斬りとして邪悪を切り裂いてきた——皇帝隊第七隊隊長〝風神〟辻風。
迫り来る無数の銃弾を前にしても、避ける素振りを一切見せない。刀を抜き、再び刺し直した。
「この体勢に閉所、そちらの移動も困難でしょう」
刀を刺した直後、辻風は上半身を僅かに稼働させていた。銃弾を避けることはできなくとも、急所を外せるように。
剣の名手の元に生まれ、その誇りを背負って戦ってきた——強い信念と長年の戦闘センスが合わさり、完璧な実力を生み出していた。もはやそこに、組織内の実力序列など関係ないだろう。
「だが、僕の体力はまだ尽きちゃいない。気が済むまで同じことをしてみるかい?」
「そんな面倒なこと、するまでもないね」
言葉を遮って、迅雷が空間の障壁に手を置いた。
腕の装甲に電気が走り、迅雷の髪がふわりと上がる。
「電気のチャージに時間を要するのは改善点。けど、大気は電気を通す——!」
そう言うと、迅雷は全身から凄まじい電圧の電流を流し込んだ。大気が黄金に光り、境界の内側で大爆発が巻き起こる。機械によって作り出された空間は、瞬間の力に耐えきれず消滅した。
「……ケホッ。迅雷、もう少し加減してほしかったわ」
「あれくらいじゃないと、ショートさせたりできないでしょ」
辻風が耐えられる電圧で、守時は倒せない。真の狙いは、変幻自在の武器をショートさせること。
狙いを成功させ、二人は再び横に並ぶ。
煙が晴れた先に広がっていたのは、埃を払う守時の姿。
「いい加減、倒れてくださいません?」
「……悪いが、僕も好きでこうなっているんじゃないんだよ。かつての実験の産物ってやつは、無駄にタフらしい」
メガネの奥にある瞳には、やはり訳があるように見えた。
ショートして動かなくなった機械を投げ捨てると、守時は両手をスッと構え出した。
「素手ねぇ……それ、本気で言ってる?」
「想像の何倍も奥の奥があると思っていた方が身のためだよ、風神雷神さん」
明らかに不利に見える状況だが、守時の奥には何か底知れぬ力が隠されているようだった。どんな手にも対処できる——そう言わんばかり、まるで本気がわからないその実力。
そもそも、皇帝隊はアダムに対抗するために組まれたような組織。各隊の隊長が争うなど、例外を除けばこれまでに起こるはずのない出来事だった。お互いの実力は知らないことの方が多い。
「AI戦争の時から、貴方だけは心の奥が読めなかった。まるでボロボロなのに、表情の一つも変えない。戦力として残すよりも、今ここで消すメリットの方が大きい」
辻風は再び刀を握り締め、迅雷は四肢の装甲に電気を纏わせる。
先ほどよりも勢いを増した殺気のぶつかり合い——神や皇と讃えられる者が拳を交えるということは、Xが変わっているに等しい出来事とも言えるだろう。
「行くよ、
言葉のない同意。奇抜な見た目からは想像もつかないほどに殺伐とした空気感。
神と呼ばれる者たちが、本気で命を削り合う——。
「いいや、終わりだ」
それを止めたのは、死を司る神だった。
数日前に対峙した時よりも濃厚なオーラを奥に秘め、戦いにアイリスが介入した。その後を追いかけて、ルディアも現れる。
「死神アイリス。もしかして、その髪飾り……解けたの?」
戦いの間は一日もない。それにもかかわらず、秘めたる力の急激な上昇——死神アイリスを知る者の立場から表現するならば、全盛期により近づいた状態。
その変化を示すように、アイリスの髪飾りの紐が解けていた。
「半分正解。だが、そんなことどうでもいい」
「アイリスさん、説明が雑です」
「呼び方の改善に免じて許してやるから、それ以上喋るな」
その場にいる誰よりも無表情で、ルディアが言う。殺伐とした空気はどこへやら、命の削り合いは自然消滅した。
「待井のやつ、案外早い終わり……いや、無理もないか。まだ生きているんでしょ?」
装甲に溜まった電気を放出させながら、迅雷は問う。そこに戦いの意志がないことは十分に見てとれた。
「あぁ。どこぞの男が救ったんだがな」
迅雷は、改めてルディアを見る。
——死神を庇った変な隊員だと思ってたけど、悪くない。
一連の会話を終えると、辻風が口を開いた。
「それはそうと、黒金定国という男……AI戦争よりも前に国から姿を消したので、アイリスさんは知らないでしょう。もはや右腕など要らぬほどの強さだと、それだけ申し上げておきます」
警告を終えると、辻風と迅雷は空気に溶け込んでいった。
二人がいなくなった後、守時の胸ぐらをアイリスは勢いよく掴み引っ張り上げた。
「どういうつもりだ?」
「そう怒らないでくれ。詳しい話は戦いの後でするし、高額の詫び料も支払う。君には手を出せないんだ……わかってくれよ」
困り顔で、守時はアイリスに提案した。戦いの際の振る舞いと、一体どちらが本性なのか——?
守時の胸ぐらを離すと、アイリスはルディアに呼びかけた。
「例の右腕はラーヴァが止めている。よって、私たちが狩るべきは後一人だ。聞きたいことは色々あるが、ラーヴァが稼いでくれている時間も鑑み、そちらを優先するべきと判断した。異論は?」
「ありません。……アイリスさん」
普段ならば、それ以上の言葉なくルディアは後をついてきただろう。だが、今回は違った。
言葉にアイリスは立ち止まる。こちらも、いつになく普通の表情をしていた。
「正直、人間のサポートマシンとして盗み聞きはあまりしたくなかったのですが」
戦場を駆けながら、ルディアは言う。
待井・
「少しだけ解った気がします。ヒトが掲げる〝正義〟の在り方が」
正面から、透明の風が向かってくる。
真っ直ぐを見たまま、アイリスは言葉を返した。
「これからは、お前自身で正義を掲げて戦えばいい。所詮正義なんて己のエゴ……生きる意味や守りたいものがあれば、自然と生まれてくる」
生きる意味や、守りたいもの——その言葉を聞いた瞬間、ルディアはアイリスの〝正義〟を知りたくなった。
「アイリスさん」
ルディアは、再びアイリスを呼び止める。
今度は、面倒臭そうな表情で振り向いた。
「貴方の、正義は?」
辻風の正義は、誇りのために。
自分を確立するために、戦っていた。
迅雷の正義は、内側を守るために。
アイリスに説教されて反駁したのは、アイリス自身もかつて仲間を守って外側を壊した〝同類〟だったから。
ならば、貴方の正義は?
「…………正直、お前を信用している訳じゃない。というか、お前がどう在ろうと私に興味はない」
アイリスは全身をルディアの方に向ける。死神が宿る紫の瞳が、その口元が、ゆっくりと拍動する。
「だが、これだけ聞いておいて今更隠す意味もない。せっかくだ、話してやる」
潤った唇が動き、奥から透き通った声が出てくる。
「私の正義は——」
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