第6話 だいぶやばい従姉妹

「ジンナム様、改まってお話とはいったいなんでしょう?」


しなを作りながら上目遣いを忘れずに、ぷっくりとした唇と大きな胸を強調してシュナはジンナムに問いかけた。



シュナが婚約者になってから数ヶ月、ジンナムは苛立っていた。



「ここ最近、私の評判が落ちているように感じる。いったいお前は何をしているのだ?」


「そ、それは……」


「婚約する前は、我が公爵領を繁栄させたり、便利な魔道具を作ったり、災害を予測し事前に対策をすることで我が家の功績としてきたではないか。だというのに最近のお前はなんだ? 何もしていないではないか。」



シュナは、自分があなたを支えていろいろしていました、とそう言った。しかし、婚約後はせいぜい、今までの案の劣化版を出したくらいで、それは何も役に立っていなかったし新しいことは何もしていなかった。


出来ないのだから当然だ。



「今までので、出尽くしてしまったのかしら……。いい案が思いつかなくて……でも、公爵家は十分繁栄しておりますわ。」


「それは当たり前だ! 公爵家なのだからな! しかし新しいことを起こさないからか、今までの功績は婚約破棄したイエリの手柄なのではと疑われているのだ! 私の婚約者はお前だろうシュナ。もっと努力しろ!」


「……わかり、ましたわ。それよりジンナム様、今夜はこちらにいらっしゃるの? しばらくかまっていただけていないから……シュナは寂しいですわぁ。」


「……気分が乗らん。私は出かける。」



こうなったら得意の色仕掛けで仕切り直そうと誘うシュナだったが、ジンナムはそれに興味を持たずさっさと出ていってしまった。


そしてその足で娼館に向かったジンナム。彼は苛立っていた。


今までは何らかの問題が起きれば、この国の何処へでも技術者なりを派遣するなど、率先して対処していた。王家からも期待され、次期公爵は安泰だ、と評判は上がっていたというのにシュナとの婚約後は散々だった。



「イエリの時はこんなことなかったが……しかし実際はシュナがやっていたことなんだよな? どうなっているんだ。魔道具も魔力不足が続いているし……。」



そう咳きながら、ジンナムは婚約破棄した時のことを思い返していた。



『どちらの言うことが正しいかなんて、少し考えればわかるはず』



イエリは、そう言っていた。



いつもシュナが言うのは、どこどこに災害が起きるので対策をしたほうがいいと思う、しておきます。

対してイエリは、起きるのでしておきました。

実際シュナの方が早くジンナムに助言していたが、その後対策をしたと言ってくるイエリとの差が、あまりにも近くなかったか? と思い返す。


シュナが助言してから、実際対策が取られるまでの期間が短い。実はイエリは、シュナが言う前から動いていて、その隙にシュナがジンナムに助言し、最後にイエリが報告に来たと考えるとどうだろう。


すべてが上手く繋がる感覚があった。



「そうだとしたらシュナは……。いや、イエリはそれを知っていて婚約破棄を受け入れたのか?!」



わけが分からなかったが、このまま自身の評判が地に落ちる前に何か手を打つ必要がある。


しかしせっかく出てきたからと、ジンナムは娼館の扉を叩いた。



「まあまあ公爵さまじゃないですか。ようこそお越しを。」


「うむ。今日は、ダーナはいるか?」


「ええええいますよ。どうぞ可愛がっておくんなまし。」


「ああ。楽しませてもらおう。」



性に目覚めたのはシュナがきっかけだったが、その後それだけでは満足出来なくなり娼館へと足を運んだジンナムは、そこで繰り広げられるありとあらゆる技に翻弄され、のめり込んでいった。


しかしそんな享楽に耽るジンナムをよそに、この国に、新たな危機が迫っていた。





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