1. 黄昏-5
「なんか部活入ってたっけ」
どさっとカバンを地面において、寺田さんはさっきまで彼女が座っていた場所に座った。健康的に焼けた肌に、かすかに汗をにじませた寺田さんは、ポニーテールが印象的な女子だ。クラスの中心的な存在で、キャッチコピーをつけるとしたら『才色兼備な快活女子』で満場一致だろう。
一度立ち上がったものの、空気を読んで僕もなんとなく元通りに座る。
「入ってないよ」
「だよね。バイト?」
「まあ、そんな感じ」
さすがに彼女の名前を寺田さんの前で口に出すことはためらわれた。
「私はもうくたくた。こんな暑い日に外で走ってたら倒れそうで」
「僕もここで座ってるだけでも汗すごいし、本当にお疲れ様」
寺田さんはのどを鳴らして水筒の中の液体を飲み、小さな扇風機を取り出して涼みだした。
「……あのさ、盆の前って予定空いてる?」
寺田さんはこの気温とそぐわない、しおらしい態度で僕の予定を聞いてきた。
「盆の前……バイトもほとんどないし、今のところはお祭りぐらいかな。」
「それ! お祭りさ、クラスで何人か集めて一緒に回ろうと思ってるんだけど、よかったら来る? 誰か仲いい人連れてきてもいいからさ」
「……だったら、予定空けとく」
「ありがとう!」
僕のスケジュールの空きを確認するや否やまくしたてるように遊びの約束を取り付けようとする寺田さんの剣幕に圧倒されたまま、その後に到着した急行電車に乗り込んだ寺田さんを見送ることとなった。
刹那、冷たい風が吹き、僕は我に返った。
明日も来るべきなのだろうか。定期区間内だからお金の心配はないけど、そんなに家から近いわけではないから、疲れる。あと暑い。
でも、明日また行ってから考えるか。
結局昨日と同じ結論になった。
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