悪役令嬢からニコニコ魔法使いへのバトン

「そろそろ時間ね。この後20時からはレンが初配信を行うわ。とっても可愛い子なの、是非見てちょうだいね」


〈もうそんな時間か〉

〈レン呼びなんだ〉

〈時間経つのはや〜〉


FPSで惜しくも優勝を逃したあと、カレンは通常のプロフィール画面に戻って雑談をしていた。それも良い時間になってきたので締めに入る。それに準じて初配信リレー企画の次のVTuber、レンブラント・アークライトの配信の告知を行った。彼は黒髪ローブの少年VTuberである。


〈レン君の見た目好き〉

〈ショタっ子楽しみ〉


期待を込めたコメントが散見される。やはり、ショタの需要は高いらしい。


「それでは皆さんご機嫌。また会えることを期待しているわ」


〈おつかれさま〜〉

〈面白かった!〉

〈配信追います!〉


こうして、カレン・フォン・イニエスタは初配信を無事、成功に終わらせた。


┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈


「やっほ〜」

「おつかれ〜」

「初配信を終えたテンションじゃない件について」


カレン・フォン・イニエスタの魂、飯田陽葵いいだ ひまりが何事も無かったかのように通話アプリに立てたヴァレフィセンスVTuberデビュー組の部屋に入ってきた。


「あはははは、終わったら気楽なものよ」

「陽葵は出る前から気楽だったでしょ」

「まあね」


陽葵は竹を割ったような性格で、鋼のメンタルをしている。初配信で奇想天外な進行をしたのもさもありなんと言った感じだ。


「それよりも、次は柚奈の番よ。心の準備は大丈夫?」

「だいじょばない」


一転、次に配信をやる予定の春川柚奈はるかわ ゆずなは緊張で胃を痛くしていた。


まあ、友人同士のじゃれ合いみたいなもので実際には腹は括っている。証拠に口ではそんな会話をしつつもSNSでは元気にカレンの配信終了報告へ、レンブラントとしてお疲れ様のリプライを送っていた。


「春川、頑張ろうな」

「あ、ヒデの死んだ声聞いたら元気出てきたわ」

「なんでだよぉおおお」


同士へと声をかけた男に対し、にべもない返答をする。男、ウィルベルト・フォン・ルードルの魂、羽山秀仁はやま ひでひとの腹は括れていないようだ。


そんな様子を見て、陽葵はコホンッと咳払いをひとつして声をあげる。


「いよいよね、レン、素晴らしい配信を期待しているわ」

「……!」


それは、初配信を終えたカレン・フォン・イニエスタからレンブラント・アークライトへと送る激励の言葉だった。


「はい、カレン様。期待に添えるよう精一杯努力します!」


そう言って、柚奈は、いや、レンブラント・アークライトは通話から出ていった。









「ふふ、やっぱりレンは可愛らしいわね。ウィルベルトは何も言わなくて良かったのかしら?」

「……。レンなら何も言わずとも、ちゃんと結果を出してくれるさ」


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る