カレン・フォン・イニエスタ ③

「それじゃあ、配信タグをきめていきましょ───ッ静かに。敵がいたわ」


〈このままタグ決め始めるんかい〉

〈斬新なタグ決め〉


VTuberは自分の活動への感想を調べるエゴサという行為を簡単にできるようにするために、またファン同士の連帯感を高めるためにファンの名称や様々なタグの名称を決める。


配信タグは、配信の感想を呟くときに使われることが多い。昔は個性を強めるために配信名に入れ込むことが多かったが、最近の配信名は初見の人のために誰にでもわかりやすい言葉が使われるようになった気がする。タグは千差万別の使われ方があるので色々な使われ方をするとまとめてもいいだろう。結局人よるし。


まあそんなVTuberの通過儀礼をカレンはFPSをやりながら行おうとしていた。


「─っし!いい感じね。普段はチームで戦えるFPSをしているのだけど、今日は流石にやることが多いから、1人で戦うことにしてみたの。連携の取り合いがない物足りなさもあるけど、自分1人で状況を判断しないといけないヒリつきは中々面白いわね」


〈ないすぅ!〉

〈楽しんでらっしゃる〉


「それで、配信タグの話だったわね。配信タグの候補は#カレンなる配信、#イニエスタ伝記の2つの候補があるけどどちらがいいかしら」


〈カレンなる配信は草〉

〈ダジャレ感強いなw〉

〈イニエスタ伝記に1票〉

〈カレンなる配信、一周まわって好き〉


「カレンなる配信の方が話題になってるわね、推してるのか避けてるのかわからないけれど」


そう言った受け答えをしながらも、カレンは荒野を駆け回り、建築物に寄っては武器を漁っていく。このゲームは広大な土地の好きな地点に降り立ち、武器を持っていない状態から武器を拾い、防具を拾い、回復アイテムを拾い最後までの生き残りを競うのだ。


良いアイテムが落ちている場所はやはり競争率が高いため、敵が集中しやすい。


カレンは一応配信のことを考えて、敵があまりいないことが多い郊外に降り立っていた。


〈堅実な立ち回りと狂った配信〉

〈どうして武器を漁りながらアートタグを決めているのか〉


配信タグを決めた後、次はアートタグの選定に入っていた。ファンが二次創作をした場合につけるタグの名称だ。イラストなんかは配信のサムネイルに使われることもある、ということをカレンはちゃんと説明しておいた。結構暗黙の了解的にサムネに使われてたりするのだが、明文化しておいて悪いことはない。問題が起きてからでは遅いのだ。


ガガッガガガガッ────!


そんな事を決めつつも、唐突に銃撃戦が始まった。ゲームは終盤に差し掛かり、戦いが頻発するようになっていた。


広大な土地に降り立ったプレイヤー達、もしもその土地に変化がないのであれば、それぞれの地点の有利な場所から動かず息を潜め、戦いは長期化してしまうだろう。世の中の人がこれだけ熱中しているゲームがそんなつまらないことになるわけが無い。


ゲーム上に表示されているマップ、そこには白い円状の範囲と、それを囲うようなオレンジ色の範囲、そしてまたそれを囲うように赤い範囲が設定されていた。


赤い範囲が危険地帯、いるだけで体力ゲージが落ちていき死に至る危険な場所だ。それに対し白の範囲を安全地帯、略して安地あんちと言う。オレンジの範囲は縮小範囲と言い、時間がくると危険地帯になるため、オレンジの縮小範囲にいるプレイヤー達が白い安全地帯へと集まっていく。


そうしてどんどん安全地帯が小さくなっていき、最後に生き残る者を決めるのだ───!


そして、


「くっそーッ!負けた!」


〈GG〉

〈おつかれー!〉

〈惜しかった!〉


カレンは優勝は出来なかった。それでも、確かな実力を感じさせる堅実なプレイ、物珍しい初配信、そして、FPSに興味がなくても楽しめるトークスキルで視聴者の心を掴んでいた。


───────────────────

書き溜めが苦しくなってきたので週一更新になります……!これからは毎週土曜18:00に更新します。よろしくお願いします!

追記:4/22

すみません、予約投稿ミスしてしまい、一度数話先の物を投稿してしまいました!申し訳ありません。反応をして頂いたおかげですぐ気づくことが出来ました。ありがとうございます。

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