カレン・フォン・イニエスタ ①

【デビュー配信】カレン・フォン・イニエスタ【ヴァレフィセンス/カレン】


「あ、あー。聞こえているかしら?」


凛としていながらも、可愛らしい声を出したのは、お淑やかな雰囲気をまとったモノクロのロリータドレスを着た少女だった。


〈きちゃ!〉

〈お〉

〈聞こえてます!〉


「ふふ、聞こえているようで安心したわ、それでは配信を始めていこうかしら」


コメント欄を確認した少女は安心したように微笑み配信の開始を宣言する。


「ご機嫌きげんよう、私はイニエスタ公爵家次期当主、カレン・フォン・イニエスタよ、よろしくね」


そう挨拶する姿は、誰から見ても可愛らしいお嬢様だった。しかし、大半の視聴者は予告動画を見て配信に来ているので、今はお淑やかでも、キッカケがあれば彼女の目が爛々と輝き出すことを知っている。ギャップが約束されたお淑やかさに胸をドキドキさせていた。


「3月1日に告知動画が出されてから1週間くらいでのデビュー、皆さんはどのタイミングで私たちのことを知ってくれた?Twitterアカウントを作ったのが2月中旬くらいでしょ?何人かは、Twitterでお話したこともあるわよね」


〈個人勢()の質問箱から〉

〈てっちゃんの引用リツイートから〉

〈新人VTuberを応援し隊:#新人VTuberはじめました巡回してる時〉

〈個人勢()からかな〜〉


「うん、うん、やっぱり個人勢じゃないだろそれ!ってバズったのをキッカケに来てくれた人が多いみたいね。知らない人に説明すると、ヴァレフィセンスはVTuberとしてデビューする人より裏方の方が多いグループなの」


雑談をしつつ、話題について来れない人が出ないように、軽く説明を入れていく。その姿は正しく貴族令嬢と言った感じで、配信初心者には全く見えなかった。


「あ、新人VTuber応援し隊さんだ!彼、初めてリプライを送ってくれた方なのよ」


《へー》

《そういうタグ巡回してる人ってマジで尊敬してる》


そうして、視聴者と戯れつつ、嵐の前の静けさのようにカレン・フォン・イニエスタの初配信は順調な滑り出しを見せた。

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VTuber用語

#新人VTuberはじめました……活動を開始したVTuberが使用するハッシュタグ。新しいVTuberの発掘のため巡回している人がいる。

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