第2章 悪役達の華麗なるデビュー配信

告知動画

時は戻り、デビュー配信の7日前に遡る。その日、ヴァレフィセンスの公式アカウントから告知動画が動画が投稿された。


その告知動画は一言で言うと、お洒落だった。


現実ではありえない程大きな月の下、目を閉じて立つ、ご令嬢れいじょうぜんとした少女。


風に遊ばれる金色の髪が、白と黒を基調としたロリータドレスの上で踊っていた。


彼女がニヤリと口元を歪め、爛々らんらんとした赤い目を見開くと、同調するように月はあかく輝き、そのあかい光は彼女のドレスを染め上げていく。


カットが切り替わり、彼女は絹のように美しいその髪をツインテールに結び始める。その好戦的な表情は、先程までの完成された美しさを帳消しにしていたが、しかし、だからこそ、これからを予感させる人間臭い魅力を放っていた。


次に登場したのは大きなローブを身につけた黒髪の少年だ。


ニコニコと笑う少年の周りには鏡が複数浮かんでおり、そこに写った少年は鏡像であるはずなのに、様々な表情を浮かべていた。


最後に映った驚愕きょうがくに見開かれた墨色すみいろの瞳の先には一体何が写っていたのだろうか。


また場面が切り替わり、少年は豪華絢爛ごうかけんらんな部屋の中にいた。そして、忠誠を誓うように膝を着く。


その忠誠心の向かう先、ローブを身にまとう少年の前には、美しい青年が座っていた。


組んだ足は長く、頬を着いた手はスラリとしていながらも男性らしく骨ばっている。


こちらを覗く群青色の瞳は、何もかもを見透すように冴え渡っていた。


画面が遷移し、彼らの立ち絵と名前が明かされていく。


少女の名前はカレン・フォン・イニエスタ

少年の名前はレンブラント・アークライト

青年の名前はウィルベルト・フォン・ルードル


紹介が終わると同時に画面にcoming soonの文字が踊る。


そうして、ヴァレフィセンスValeficence、彼らの名はインターネットの海へと解き放たれた。

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