悪役令息VTuberに転生したので原作再現しようと思います!

【デビュー配信】ウィルベルト・フォン・ルードル【ヴァレフィセンス/ウィルベルト】


「はじめまして。私はウィルベルト・フォン・ルードル。グリードリー王国、ルードル公爵家の長男だ。以後お見知り置きを」


ディスプレイの中に彼は居た。貴族らしい服装の神々しさすら感じさせる美しい青年。小さく、だが印象的な顔を乗せた細長い首が、男性らしい骨格の彼にどこか華奢な印象を与えている。片目にかかるサラサラとした銀髪が群青色の瞳をチラつかせていた。


〈がんばれー!〉

〈きた!〉

〈髪の毛サラサラだ〉

〈綺麗〉


ウィルベルトは、企業勢が行っているデビュー配信を参考に配信を進行した。その様子は2章でまた描写するので今回は割愛する。


テキパキとした進行や、会話の中で垣間見える世界観など、ここまでの流れは仕事のできる貴族令息そのもののようだった。しかし、視聴者はヴァレフィセンスというグループが一筋縄ではいかないことを知っている。現在はおとなしく見えるが、ウィルベルトの演技は堂に入っており、視聴者はこれからどんな面が垣間かいま見えるのかとワクワクしていた。


「ふむ。これで一定の通過儀礼はこなせたか。では、手短に要件を伝えよう」


〈要件???〉

〈wktk〉

〈ついにきた〉


先程までとは違い、流れるコメントを一瞥すらせずに、ウィルベルトは淡々と言葉を続ける。


「私は転生者と言うやつらしい。前世の記憶なのに私の未来がわかるというのは面白いものだ」


彼は明瞭な声で突飛なことを言い出した。


「私が属するグリードリー王国を舞台にしたゲームがあった」


画面が切り替わり、月に照らされた中世ヨーロッパ風の街並みが映し出される。


「そのゲームで私は、悪役として討たれる運命にある」


コツコツという足音と共に視点が移動し始める。美麗なイラストのように見えたその街並みは、3Dモデルとして作られたものだった。


「未来がわかった今、そんな運命、避けるのは容易い、だが、それだけでは不十分だ」


道の先、3人の人影が見える。夜霧に紛れているが、それが誰だかわからない視聴者はいないだろう。


「私はこの世界の魔法と前世の彼の記憶を元にそちらの世界へアクセスする事に成功した。それも、原作のゲームが完成する前の世界に」


そして、霧が晴れ、3人の姿が鮮明に映し出される。


「ゲームが原作の世界?巫山戯ふざけた事を言う。私達が本物だ。この世界を、原作を、私達がゲームに再現してやろう。ここに、ヴァレフィセンスプロジェクトの発足を宣言する」


「私たちが創った遊戯ゲームで遊べる日を楽しみにするといい」


それはルードル・フォン・ウィルベルトの魂からの挑戦状だった。


───────────────────

あとがき

ということで、第1章完結です!

物語全体のプロローグ的な章でしたが如何だったでしょうか??ヴァレフィセンス、その実態は「悪」に拘るVTuber兼、異世界を再現するゲームクリエイター集団でした。

2章は3話ほど助走を付けてからデビュー配信を中心に描写していく予定です。やっと本腰を入れて配信活動が更新できる。引き続きお楽しみ頂ければ幸いです。

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