悪役ガチ勢登場
「なってない」
「は?」
「なってなーい!!!」
会議アプリに映る男は、なよっとした外見とは裏腹に熱く拳を握りしめ語気を荒くした。
彼、
「キミは悪役が何たるかをわかってないよ!ヒデ君!!キミならこの僕の悪役への憧憬を理解してくれると思ってたのに!!!」
何となく予想している方もいるかもしれないが、このグループの方針が悪に決定した約8割の理由はこいつの熱意だろう。
シナリオライターである蒼司に自身の悪役像を伝え、では実際にVTuberを意識して喋ってみてくれと言われたのでその通りにしたらこれだ。
「キミとは趣味が合うと思っていたのにどうしてこんなに熱意が乖離してしまっているんだ」
「そう言われたってなあ」
「何か不安でもあるのか?」
「いや、キャラがフワフワしててさ、それでお前に相談したんだよ」
蒼司が驚きに目を見開く。そしてニマニマと笑いだした。
「そうだよな!そうだとも!キミはキャラの違和感の解消のために声楽部を兼部していたようなキャラクターガチ勢だものな、キャラが定まっていないのに熱意も何もないという訳か!」
シナリオライター冥利に尽きるよ、と呟きつつノートにメモをとり始めた。ポツポツと俺のVTuber像について意見を交わしていく。
「ときにヒデ君、えっと……その……」
彼にしては珍しい事に視線が泳いでいる。何となく蒼司が言わんとしていることがわかっていた。先程のやり取りは嘘ではないが、打ち明けていないこともあった。
「どうした?」
俺は、促すように聞き返す。
「僕は、キミが何かVTuberに対して罪悪感のようなものを持っているように感じている」
そう、俺は罪悪感をいだいている。俺は、高校生の時、VTuberとして活動していたのだ。
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VTuber用語
転生……配信者やクリエイターが今までの名前での活動を停止し、新しいVTuberとして活動すること
前世……上記でいう転生前の活動歴。
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