第27話 ついにヒロインにバレた件
奏ちゃんを勝たせるための準備はつつがなく完了した。
が、恐れていた問題……二つの爆弾が遂に大爆発した!!!
「ちょっと面貸しなさいよ」
「少しお時間をば……」
現在、ミスコンの最有力候補二人が……新たに優勝候補に食い込まんとする奏ちゃんに対し、接触してきた。
爆発的に拡散された以上、隠すのも限界だろうか。
「ひぇえ……」
「まぁ、待とう、な? 諸君」
遅かれ早かれ、こうなる可能性は見越していた。
奏ちゃん一人に我が強い二人を相手させるのは残酷だろう。
「どうしてアンタが入ってくるのよ、怜音」
ここで見捨てるわけにはいかない。
優勝できても奏ちゃんが孤立してしまう……そんな結末は嫌だからな。
「わからないのか? 夜瞑さん、怯えている」
俺がそういうと、葵はハッとなる。
「……それはまぁ、ごめんなさい」
「い、いえ……」
とはいえ、限度はある。立候補した以上、この展開は予想できていた。
あくまで、尾を引かないように努めたい。
「ですが、驚きました。奏さんも立候補されるだなんて」
「それはもう海より深く山より高い理由があると言いますか……」
「別にいいわ……詰問したみたいになるのもやだし」
参加自体に反対はないようだ。
「……私と天音の一騎打ちだと考えてたけど、三つ巴の戦いになりそうね」
「ですわね。昨日の奏さんのお写真や動画は、予想しない勢いで拡散しておりますもの」
「あ、あはは、奏もびっくりですよ」
奏ちゃん、挙動不審だよ。頑張って。
「だけど、奏、あんなにティンスタグラムの使い方上手かったけ」
「えーっと……」
「もしかして怜音、アンタ手伝ってるとかいうんじゃないでしょうね?」
……妙に勘が鋭いな、超能力者か?
「違う、よく考えてほしい、俺はティンスタグラムをそもそも使ってないし、使ってたとしてもあんなに伸ばすことはできっこない」
「俺をお呼びかな?」
いいタイミングに鉄心が救いの船を出してくれた。
「……っぱアンタよね、うん」
「おいおい、心外だな。もっと歓迎してくれてもいいのではないか?」
「ということは……鉄心さんが奏さんのサポートを?」
「少し入れ知恵しているだけだ。ここまで結果を残せているのは正真正銘、夜瞑譲の実力の賜物だ」
やはり佐久間鉄心、空気が読めている。
「そ、何にせよ……」
葵はキリっとした表情で、奏ちゃんと目を合わせる。
「やるからには負けないからっ」
「それは無論、わたくしもそうですわ。一位になった方が、怜音様と並んで踊ることができるのですから」
「…………!」
三つの闘志が、同時に輝きを放つ。
一位以外はありえない――その確信を持っている。
実際に、凄まじい勢いで伸びる両者に追いつける人物は、奏ちゃんを除けば上級生にもそういない。
ところで……勝手に俺が商品になっているわけか。なるほどね。
だが、こうも考えられる。
一位になった人物に、自動的に俺の人権というか身柄が引き渡される。
葵と天音を下し、奏ちゃんを勝たせられれば……ダンスすることになっても二人は文句を言えないだろう。これは余計に燃えてきたぞ。
「わ、か、奏は――」
黙り込んでいた奏ちゃんが口を開く。
「賞品とか、朝来さんのこととかは、その、わかりませんが……出るからには、二人には負けません」
昨日の動画撮影が彼女を成長させたのだろうか?
ほんのわずかな違いなのだろうけれど……今回の件に関しては自信がついてきつつあるのかもしれない。
三者が、睨み合う形となった。
自然と、クラスメイトが集まりつつある。
野次馬……というわけではないが、優勝候補者が一同に会している。
そんなありえない瞬間を楽しんでいるのだろう。
だけど、険悪な空気になることは最後までなかった。
これなら、心置きなく全力を出せるだろう。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます