第32話 迷宮ダンジョンの穴

 3層目への入り口の前には大型の野犬のようなモンスターが中型の野犬のようなモンスターを6頭引き連れて待ち構えています。


 1層目のエリアボスと同様に魔法で先制攻撃をしたところへ突撃し中型野犬モンスターを倒していきます。4匹倒したところで、大型野犬モンスターが遠吠えをあげるとどこからともなく中型野犬モンスターが集まってきました。


 それを確認した赤メッシュ君は大型野犬モンスターに狙いを定め突撃します。プリン1号が投擲で援護し、残りのメンバーで中型野犬モンスターを相手します。


 赤メッシュ君が大型野犬モンスターに牽制の攻撃をしかけ動きを制限し、プリン1号が石や手斧を投擲、目の前以外の敵からの攻撃に気を取られ動きが鈍った大型野犬モンスターの隙を見逃さずバックステップで助走距離を作り、得意の回転切りで大型野犬モンスターの首を落としました。


 中型野犬モンスターの方もマコトとアキラの燃費を押さえた魔法で牽制し1匹ずつ倒していき、それほど時間もかからず全て討伐することができました。


 ドロップ品を集めていると戦闘音を聞きつけたのか、何かが近づいてくる気配がします。モンスターだとしたら連戦することになるかもしれない、他のパーティだったら邪魔になるかもしれないということでさっさと3層目へ行くことにしました。


 3層目に入ると和風な城の廊下のようなところに出ました。講習で何度か行ったことがある遺跡ダンジョンによく似ています。さっきの戦闘の疲れをとるため入り口傍にて小休止をとることにしました。


 迷宮ダンジョンでは、同じダンジョン内であれば一度通った穴どうしを繋げることができます。例えば今の僕達ならば、目の前にある3層入口の穴から2層出口の穴へ行き来することができるだけでなく、2層目入口の穴や1層目出口の穴、ダンジョンの入口の穴にも繋ぐことができ、今すぐダンジョンを出ることが可能なのです。使い方も簡単で出たい場所をイメージして穴をくぐるだけです。


「ああ、そうだ、ちょっとゴミを捨ててきますね。皆さんのゴミもお預かりしますよ」


 そう言って立ち上がると、ハァ、何言ってんだこいつ、みたいな顔で見られたので穴を指さしてみました。


「えっ、それっていいんですか?」


「駄目とは言われていませんよ」


「あ…ああ……ん?」


 プリン2号が聞いてきたので正直に思ったことを即答すると言葉詰まらせていました。


「行って駄目だったらすぐ戻ってきます」


 皆さんの分のゴミも持って一度ダンジョンを出ます。ゴミを捨てにギルド施設に入ると周りがざわざわし始めます。するといつも一緒だった担当官が必死の形相で走りよってきます。


「どうした!何かトラブルか!!」


「いえ、ゴミを捨てに来ただけです」


「へ……」


「あ、あとお手洗いをお借りしますね」


「あ……ああ……」


 用を足して戻ってくると担当官が待っていました。


「えーと、本当に何もないんだな」


「はい、問題ありません」


「戻って来た理由は?」


「ゴミ捨てと……用足しです」


「えっ、それだけのために戻って来た?」


「はい」


 何やら困惑している担当官。


「えーと、試験中なのにそんなことで戻って来たと」


「ゴミを捨てに戻っては駄目だとは言われていません」


「あー…、確かに…。でも戻ってきたことによって不合格になるとは思わなかったのか?」


「お言葉ですが、試験中だから、いえ、冒険者だからこそ常に万全の状態でいなければなりません。余計なものをもって立ち回ることは万全であると言えるか、断じて否である。ならば、ありとあるゆるものを利用して万全の状態にしようとすることは冒険者として正しい行いではないでしょうか」


「あー、そうだな。うん、わかった。もう行っていいぞ」


 担当官のお許しが出たのでダンジョンへと戻ります。


「だいぶ遅かったけど、何かあったのか?途中で戻ったから俺達不合格とかじゃないよな?」


「いえ、大丈夫かを聞かれたのでそれに答えていただけですよ。あー、それと、すみません、ちょっとお手洗いに行ってました」


 プリン1号が問い詰めてきたのでそれに答えると、女性陣がそろってちょっと外の空気を吸ってくるといって穴をくぐっていきました。


 休憩を終えダンジョンを進んでいると棍棒を持った3体の餓鬼を見つけました。複数で武装した相手でしたが、いつも通り魔法で先制、突撃で問題なく倒せました。


 その後も何度か戦闘がありながら、しばらく進んでいると入口が一つしかない大きめの部屋がありました。部屋をくまなく調べ、モンスターが隠れている様子も、罠が仕掛けられている様子もないため、ここで一泊することにしました。


 ここまでくると自分の【幸運】から強化されていったスキルのすごさがわかってきました。何か気になるものがあればそこにモンスターにしろ、罠にしろ、アイテムにしろ何かが絶対あり、僕の知覚範囲において索敵、罠感知、アイテム感知がほぼ一人で出来てしまいます。マコトやアキラの魔法やプリン2号のスキルほど範囲は広くないですが、それでもそれらを一人でこなせるというのは大分有利です。


 スキルオーブは必要な人の元に必要なタイミングで現れると言う噂があります。もしそれが本当なら、僕の運はこれくらい補正しないとやばかったということでしょうか?

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