第31話 最終試験
「私がギルド長の権藤だ!!」
4週目4日目、迷宮ダンジョン併設のギルド施設に集合し荷物を確認しながら待機していると、ナイスシニアが受講者達の前に立ち気迫を込めて自己紹介をします。講習初日とは違い気迫に飲まれる受講者はいませんでした。
「大変結構!1ヶ月足らずでよくここまで成長した!これから最終試験を行う。合格したければこの儂を倒し」ガオンッ!!
獰猛な笑みを浮かべ何やら叫んでいたナイスシニアの後ろにいつの間にか現れた細身にスーツ姿で眼鏡をかけ七三分けにした男性が中華鍋を振り下ろしました。
「えーー、コホンッ。副ギルド長の鈴木です。急な頭痛のため退席されたギルド長に代わりまして説明します」
鈴木副ギルド長が眼鏡をクイッと押し上げると他のスタッフがナイスシニアを引きずっていきました。
「これから皆さんには迷宮ダンジョンに入っていただきます。目標は第2層踏破です。それ以上に進めるようであれば進んでもらって構いません。進んだ分だけ評価します。今のところ最高記録は4層の半ばまでといったところです。それから必ずダンジョンの中で一晩過ごしてください。長期ダンジョン攻略の予行演習も兼ねています」
鈴木副ギルド長が滔々と説明します。
「注意点は今回担当官は同行しません。緊急時用の冒険者は待機させていますがリスク管理は基本自分達で行うことになります。これまで我々が教えてきたことを生かして無事生還してください。それでは最終試験開始します」
鈴木副ギルド長の開始の宣言と同時に受講者達はダンジョンの入り口に殺到します。
「おい、何をしてる!早くいかないと他のやつらに先を越されちまうぜ!」
「まだ入り口は混んでる、急いでもあそこで待たされるだけだ。それよりもう一度荷物を確認しとけ、今ならまだそこで買えるだろ」
プリン1号が焦って皆を急かそうとすると、赤メッシュ君が落ち着いて答えます。それにしても赤メッシュ君、ちょっと変わりましたね。昨日も講習後にギルドに残って武器の手入れの方法を聞いていたみたいです。
「それに入り口付近の雑魚を狩っといてくれた方が体力温存できて奥の方まで進めんだろ」
プリン1号とプリン2号が保存食などを買い足しているうちに入り口の混雑が収まってきました。
「それじゃあ、行くぞ!前衛は俺とおっさん、中衛は魔法が使える二人、ケンとユウは後衛だ」
1層目に入るとそこは洞窟のようなところでまさにダンジョンという感じです。
「洞窟の中なのに明るいのは不思議ですね」
「そうだな、でもおかげで荷物が1つ減らせる」
思わず出た独り言に返事が返ってきました。
「何か悪いものでも食べましたか?」
「チッ、うるせーな……はぁ、これでも悪かったと思ってんだ」
いつもの赤メッシュ君らしくありませんね。そう思っているとアキラに後ろから肩を叩かれました。
「油断しない」
そうでした、ここはもうダンジョンの中です。
「ありがとうございます」
お礼を言い、前に向き直ると慎重にダンジョンを進んでいきます。
先行したパーティが大暴れしたのかモンスターに出会うことなく、次の階層前のエリアボスのところまで来ることがでしました。
4匹の武装したゴブリンが待ち構えていましたが、魔法で先制攻撃をしかけ、怯んだところへ突撃しあっさりと倒しました。
2層目は草原になっていました。空間に空いた穴を抜けるだけで全く違う場所に変わるなんて不思議なものです。
2層目の入り口前で少し早い昼休憩を3人ずつに分かれ交代して休憩を取ります。僕は今日もシリアルなバーとソイラテ(っぽいもの)で休憩をします。
ダンジョン内に放置されたものは何日か経つと気が付けばなくなってしまいます。ダンジョンが吸収しているのではと言われており、一時期ダンジョンをゴミ処理に利用しようという案が出ていましたが、その結果がどうなるかがわからないということで却下されました。そのためダンジョン内でのゴミは各自で持ち帰るようになっています。
休憩を終え、草原を進んでいると戦闘音が聞こえてきました。先行していた他のパーティに追い付いたようです。
「追い付いたみたいだな。こっからは更に気を引き締めて行くぞ!」
草原の階層ではマコトの【地図】スキルが大活躍です。進行方向がずれるとすぐに分かるので
この階層では中型の野犬のようなモンスターや小型の兎のようなモンスターが襲いかかってきました。野犬のようなモンスターは草むらの揺れで察知しやすいのですが、兎のようなモンスターは察知するのが難しく一度不意打ちをくらってしまいました。それからはマコトとアキラの魔法による周囲探知も使い周囲を警戒するようにすると不意打ちをくらうことはなくなりました。
草原の中なので、次の階層への入り口を探すのは時間がかかり、この階層で一泊することになるだろうと思っていましたが、運良くそれほど時間をかけずエリアボスを見つけることができました。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます