第24話 ダンジョン探索の課題

 4週目の講習から本格的なダンジョン探索となる。座学の講義はなくなり、午前からダンジョンに入り、日帰りでダンジョンへ行く冒険者とほぼ同じ状態となる。


 筆記試験が終わったあとギルドに寄ると運良くすぐにナイスシニアに会うことができ、スキルのことを話すと感謝されました。ギルドに立ち寄ったのは僕達だけではなく受講者のほぼ全員が揃っていたので、いつものメンバーで集まり答え合わせをしていると山代担当官が通りかかり簡易採点をしてくださいました。その結果いつものメンバーは全員が8割以上取れているだろうとのことです。これで心置きなく4週目のダンジョン探索に集中できそうです。


「それではダンジョンに入る前に準備運動から始めるであります!」


 先週も来た森ダンジョン併設のギルド施設前にてしっかりと柔軟を行い、前回付き添っていただいた担当官の元へパーティごとに集合します。


「前回はダンジョンに慣れることが目的だったので何も言わなかったが、今回は課題がある。それは魔石、モンスタードロップ、採取物を合計30個提出することだ。内訳は自由だ、魔石を30個持ってきてもいいし、採取物で30個でもいい。30個提出できればそれ以上に手に入れたものはお前達が自由にしていい」


 課題の内容から考察すると、森ダンジョンは採取物の入手が比較的容易なのだと推測します。


「よーし、さっさとモンスター30匹狩るとするか!レベル上げもできて一石二鳥だぜ!」


 赤メッシュ君はモンスター討伐のことしか考えていないようです。


「準備ができ次第出発する。今回も付き添うがよほどの危険かギブアップしない限り俺は何もしないからそのつもりで行動しろ」


 担当官の言葉に促されて準備を始めます。いつもギルドから借りている手甲や足甲、胸甲などの防具にメイスとバックラーを装備し、事前に通達されていた採取物を入れるための動きを阻害しない範囲の大きめのリュック、そしてリュックの中には山登りの準備物を参考に非常食、水などを大荷物にならない程度に入れています。あとはギルドの受付前に設置されているフリーペーパースペースにある採取ポイントの簡易地図などの役立ちそうな資料を持っていきますかね。


 準備を終え全員が集まると担当官が出発前にアドバイスしてくださいました。


「前回のこのパーティの様子を見ていると、索敵や周囲の観察を前衛の一人に頼りすぎている。講習後もこのパーティでいくのなら問題ないがそうでないなら他のポジションを経験しておいた方がいいぞ」


 担当官に言われるまで、他のポジションを経験するという発想が出てきませんでした。他の皆さんもそうなのかと周りを見てみると、赤メッシュ君が得意げな顔でうんうんと頷いており、そんな赤メッシュ君を2名ほど白い目で見ていました。


「あと、もう一つ。先頭を歩く者は鉈くらい持っていた方がいいぞ」


 その言葉を聞き慌ててギルドへ鉈を2本借りに行きました。


「あとは編成と探索方針が決まり次第出発していいぞ」


「それじゃあ、俺と壁のおっさんを前衛にしてさっさとモンスターを狩りに行くぞ!」


「いや、前衛と後衛を入れ替えて、前回に通った採取ポイントを目指すべきです」


 赤メッシュ君のモンスター狩りに反論すると睨まれました。


「モンスターを狩りまくってレベルを上げた方が効率いいだろうが!!」


「まずは採取物優先で行動しつつモンスターを狩り、課題達成に余裕が出てきてからモンスター狙いにした方が効率がいいです」


「ハンッ、じゃあチームを2つに分けようぜ。俺のモンスター討伐組とおっさんの採取組によ。で、あとのやつは行きたい方についていく。まあ、採取なんて地味なことしたがるのはおっさんだけだろうがな!」


「いや、それは認められない。付いていくのは俺だけだからな」


 探索方針で口論していると担当官に止められました。


「はぁ、なら多数決だ!それならモンクないだろ!」


 モンスター討伐が赤メッシュ君とプリン2号、採取優先が僕とマコト、アキラ、それにプリン1号でした。


「リーダー、まずは課題をこなしましょうぜ。そうすりゃ、あとは全部俺達のものだからモンスターを倒せば倒すほど丸儲けですぜ」


 怒りで顔を真っ赤にしていた赤メッシュ君ですがプリン1号の説得に漸く落ち着きを取り戻しました。

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