第21話 名前で呼び合う仲

 講習3週目ではパーティでの立ち回りや連携をを学ぶことが主目的なため、今日決まったパーティはそのまま今週末までは継続となる、だけでなく、4週目での講習はある程度の連携がとれたパーティであることが前提のため最終試験まで同じパーティなのである。


 帰り支度をしていると赤メッシュ君が隣を通り過ぎ後ろの2人に話しかけます。


「おい、今日の打ち上げするから、早く準備しろよ」


「「???」」


 唐突な誘いに動きが止まるマコトと傾国さん。


「俺がよく行く豚奉行なんだけどさ、店長と仲いいからけっこう裏メニューとか出してくれんだよね」


「いえ、ボク達勉強会するので、行かないです!」


 再起動したマコトが即座に断っています。


「勉強会なら俺達と打ち上げしながらでいいじゃん!俺達これからずっと同じパーティなんだからさ、親睦深めといた方が良くない?今日の立ち回りの反省会とかするしさぁ」


「いえ、ボク達勉強会するので、行きません!」


「あぁ、待って待って待って待って、絶っっっ対楽しいから!騙されたと思って1回だけ、1回だけでいいからさぁ!これで楽しくなかったら次からはいいからさぁ、ね、1回だけ」


「いえ、ボク達勉強会するので、行く気がないです!」


「はぁ、もういいよ。おっさん趣味のクソ女は…。お前は来るだろ?」


 どうやらマコトから傾国さんにターゲットが移ったようです。これ以上の強引なお誘いは流石に止めるべきでしょう。赤メッシュ君から更に嫌われてしまいそうですが仕方がないですね。そう思いながら赤メッシュ君を止めようとした時、傾国さんがこちらを指差し口を開きました。


「あの人が来るなら行ってもいい」


「いやいやいやいや、あんなおっさんがいたら絶対楽しめないって!!あんなおっさんいない方が絶対楽しいって!!」


 赤メッシュ君はおっさん拒否症なのでしょうか?いえ、飲み会に自分の親と同じくらいの人がいたら羽目を外して楽しむなんてできないですからね。


「ならいい、勉強会があるから帰る」


 そう言ってマコトの手をとると行ってしまいました。


「あまり強引なのは良くないですよ。どこかで引かないと」


「あぁ、女は強引にされるのを待ってるんだよ!そんなことも知らねぇのか!?」


 一応年長者として忠告してみましたが、聞く耳を持っていないようです。


 帰り支度は済んでいたので僕も移動しようとした時、


「おっさんが調子に乗るなよ!!」


 赤メッシュ君に睨まれてしまいました。


「それでは、お疲れ様です」


 笑顔で会釈をしてそそくさと立ち去ります。三十六計逃げるが勝ちです。


「%#&¥$*+-=@」


 いつものファミレスへ行くといつものメンバーより4人増えていました。その内の1人は傾国さんです。話を聞いてみると、僕達と同じように強引な飲み会の誘いがあり、それを断る口実として参加してみたそうです。


「それにしてもあのリーダー(笑)、どうにかならないんですか」


 勉強会も一段落したところでマコトが愚痴をこぼしました。よほど鬱憤が溜まっていたのか口を挟む隙がありません。


「どれだけモンドさんを蔑ろにすれば気が済むんですか!?自分がどれだけモンドさんからフォローしてもらっているかわかってないんですよ!!」


「まぁまぁ、モンスターを見つけられたのは【幸運】スキルのおかげですし、探索では気を抜いてたようだけれど戦闘ではしっかりやってましたよ」


「それもモンドのおかげ」


「それにあのリーダー(笑)、モンスターの止め全部とっちゃって。折角モンドさんがボク達にも倒せるようにとしてくれてたのに」


 あれ?今、傾国さん、名前で呼びましたかね?そう思い傾国さんの方を見てみると視線の意味に気が付いたのか


「駄目?」


 と小首を傾げて訊いてきました。


「いえ、大丈夫です」


「ウチもアキラでいい」


 いつの間にか名前で呼び合う仲になっていました。

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