第5話 覚えていますか?

講習初日午前


 ギルド内の指定の教室のような部屋で待っていると時間ちょうどに見たことのある人と見たことのない人が入ってきた。


「私がここのギルド長の権藤だっ!!」


 気迫を込めて自己紹介するナイスシニア。その気迫にほとんどの受講者とナイスシニアの隣の人がビクッとなった。それを見たナイスシニアは目を鋭く細め


「ほう、今回は期待できそうなのがいるじゃないか」


 猛禽類を思わせるような顔に笑みを貼り付け受講者一同を見渡した。


「こちらが座学担当の講師の山代先生だ」


「初めまして、座学担当の山代です。よろしくお願いします。それでは最初に皆さんの適正確認を行いますので順番にこちらの装置の上に手を置いてください」


 そういって機械に設置された水晶を指し示した。これはダンジョン適応が可能かどうかを調べる装置だそうだ。


『ダンジョン適応』

 人が最初にモンスターを殺したときにおこる現象。それにより自分のステータスが確認できるようになったり、ダンジョンの恩恵であるレベルアップやスキルの取得を可能とするのである。詳細はダンジョンの恩恵を含めいまだ解明されていない。


 前のほうに座っていたので僕の順番はすぐだった。装置に手をかざすと水晶がひかり


「おや、すでに適応化されてますね。いつどこで適応化したか教えてもらえますか?」


「ああ、はい。『ダンジョン・スタンピード』の時です」


「それは……すみません、いやなことを思い出させてしまいましたね」


「いえ、大丈夫です」


「時々、勝手にダンジョンに入る違法行為をするかたがいらっしゃるので、確認は必要なのですよ」


 ほかにも未発見のダンジョンに迷い込んでしまったとか、企業勤めから独立してくる場合があったりすると説明していただけました。


 企業の場合は、企業として一括で登録することができ、全員が冒険者免許を取得するという手間を省けるなどのメリットがある反面、何かあれば企業が責任を持つなどのデメリットがある。


 今回の適正確認でのイレギュラーは僕だけだったようで、ほかの人たちはスムーズに終わらせていった。


 適正確認が終わるとさっそく講義が始まった。


 ダンジョンとはといった内容から始まり、ダンジョンフィールドについての説明が終わったところで午前の講義が終了した。どうやら山代担当官は最終試験に出そうなところをしっかり押さえつつ、ダンジョン探索に必要な知識もしっかり教えるといったかなり優秀な担当官のようです。


 いい担当官に当たったなぁ、お昼どうしようかなぁなどと考えていると


「あの、すみません」


「私ですか?はい、なんでしょう?」


 後ろの女の子から声をかけられた。振り返ると20くらいの女の子が立っており、顔を合わせた瞬間、驚いた顔をしたかと思えばすぐにほっとした顔になり、今は何か思い悩んだ顔している。

 おそらくさっきの講義で分からなかったところとか、聞き逃したところがあるので教えてほしいといったところかな?これをきっかけに一緒に勉強する同志となっていただけるとすごく助かるのだが、若そうな子だしこっちから声をかけたら事案になりそうだなぁ。同期の女の子の言葉を待ちながら、なんとか勉強仲間に引き込めないかと考えを巡らせていると同期の女の子は意を決したのか口を開いた。


「ボクのこと、覚えていますか?」

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