第2話 はじめてのギルド

 冒険者協会、通称『ギルド』

 冒険者の統括・管理をメインに行う組織で国のダンジョン省の管轄となる。営業時間は緊急時でなければ 9:00~21:00 である。


 荷物を家に置いてすぐにギルドに向かったのだが、到着したのは20時過ぎであった。ギルド内に入ってみると、終了近い時間であったがそれなりに人はいるようだった。案内板に従い冒険者登録受付へ行ってみたが、メイン営業は終わってしまっていたらしく総合受付へと書かれていた。


 総合受付へ行き、整理券を受け取り、備え付けの冒険者規約を読みながら待合所で待っていると受付カウンターのほうから男の怒鳴り声が聞こえてきた。


「だぁかぁらぁ、早く金を出せっつってんだろぉ」


 ギルドに強盗?などと考えながらカウンターのほうを見てみると


「こんだけ素材を持ってきたんだからさぁ、結構な金になんだろぉ、ぁあ」


「申し訳ありません、本日のメイン営業は終了しました。素材の買取査定は明日改めてとなります」


 金髪を逆立てた20代くらいの冒険者らしい男が怒鳴り散らすのに対し、メガネをかけた受付の女の子は怯えに声を震わせながらも対応している。受付の奥を見てみるが助けが来る気配もなく、金髪君の仲間らしい姿も見えないのでなだめてくれる人もいなさそうだ。不穏な気配を感じたからか、または受付の対応が長引きそうだと感じたからかまだ待合所にいた人たちの大半が席を立ち出口へと向かっていく。そんな中でカウンターを眺めていたからだろう、助けを求めるような眼をした受付の女の子と目が合ってしまった。


 まずは一度上司に相談しないと報連相って大事ですよとか、対応の拙さから新人かなとか、金髪君は何でお金が必要なのかなとか、そういえば規約にお金に関することが書いていたなとかいろいろ考えながら僕はカウンターへと歩み寄った。


 パンッ!!


 一つ大きく拍子を打つと、ゆっくりした口調で金髪君に話しかける。


「まあまあ、お兄さん落ち着いて。そんなに大きい声をだしちゃぁ、受付のお姉さんもびっくりするよ」


「うるさい、俺は急いでんだ、関係ない奴はすっこんでろ!」


 意表を突かれたのと、第三者が現れたことで少しクールダウンしたのか幾分か声のトーンが下がったがそれでもまだ何かあせりのようなものが見て取れる。


「まあまあ、落ち着いて。話を聞いてる限りだと、お兄さんは急ぎでお金が必要なのかな?それなら買取査定ではなく、冒険者融資で受付してみてはどうだい?」


「「冒険者融資?」」


 と若い男女の声がそろう。おーい、受付のお嬢さん、君が疑問形で聞き返しちゃまずいでしょ。


 ゴチンッ!!


 なかなか痛そうな音が響くとともに受付のお嬢さんは頭を押さえながら突っ伏してしまった。その後ろには白髪と白髭を蓄えた、少し強面なナイスシニアが立っていた。


「冒険者融資の件のお客様、こちらで応対いたしますので、窓口の移動をお願いいたします。おい新人、残りの受付業務さっさとこなさんかい!!」


「「はいっ!!」」


 前半はジェントルな声で、後半は地獄の鬼のような声で話しかけるナイスシニアに対し若い男女の声がそろうのであった。

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