第1話 僕は○○をやめるぞ
「私、馬場主水は本日を持って退職することになりました。長い間、お世話になりました」
ホント長い間扱きつ……んっんっ、お世話になった職場でした。
引継ぎも問題なく終わったし、あとは荷物もって帰るだけだな。
「馬場係長、ホントにやめるんですね?」
「ああ、少し挑戦したいことができたんでね、急で申し訳ないが退職することにしたんだ」
元部下の真田さんが恨みがましい目をしながら話しかけてきた。
「係長のあの仕事量、なんなんですか?っていうか、うちの雑用全部係長がやってたんですか?仕事引継ぐ身にもなって下さいよぉぉぉ」
「いや、ゴミ捨てや掃除なんかの雑用は気が付いた人がするのがうちのルールだよ。あと、私はもう係長ではないよ」
一応ルール上は気が付いた人がするとなってるが、みんな気づいていないふりをするからなぁ、僕はやってましたよアピールのつもりで引継ぎ内容にいれたのはよろしくなかったかな?
「雑用がなかったとしてもあの量はかなりのものですよ、馬場さん辞めるのやめましょうよぉ」
「大丈夫、私ができてたのだからなんとかなるよ」
「出た、できる人理論」
元部下からのクレームを聞きながら次々と荷物をまとめていく。
「せっかく今日は定時で上がれるのに私に付き合っていたら、帰る時間が遅くなってしまうよ」
「そうですね、最終日なのにすごい勢いで仕事をされていた優秀な上司のおかげで残業もなく帰ることができますよ。引継ぎも完璧すぎて質問すら出てこないし、引き留めるのもこれ以上は無理かな…」
後半はよく聞き取れなかったが、今日の仕事を頑張ったかいはあったかな。
「それはそうと退職されたあとはどうされるんですか?」
「ああ、冒険者ですよ」
「へ、冒険者………ああ、冒険者を雇って何か新規事業でも始めるんですね。確かに未開拓の事業なんで一発当てたらリターンは大きそうですもんね」
「いえ、私が冒険者になるんですよ」
冒険者……国からも職業と認められ、ダンジョンを探索するものの総称である。
ダンジョン資源にもさまざまあり、特に注目されているのがモンスターからとれる素材や魔石である。例えば、火蜥蜴の皮は耐火、防火素材として使え建材や防護服、冒険者の装備といった多用途に使え、魔石は新たなクリーンエネルギー資源として活用されている。
「いやいや、係長、確かお年は41でしたよね。年齢より若々しく見えますし、体格もがっしりされてますけど、その年で冒険者は厳しいのでは?」
「確か年齢制限は下限はあったが、上限はなかったはずだよ」
冒険者免許は18才以上から取得可能となっており、極論100才で取得を目指すのも可能だ。
「それに夢だったんだよ」
「冒険者がですか?」
「いや、探検家さ」
「違いはよく分かりませんが、意思は固そうなのでこれ以上は言わないことにします」
一応は納得してくれたのかな。荷物もまとめ終わり、いざ帰ろうとすると
「今までお世話になりました、お疲れさまでした、主水さん」
「ありがとう」
少し涙声で最後が聞き取りづらかったし、こちらも少し鼻声になってしまいしまらない挨拶となってしまった。
さあ、家に荷物を置いたら冒険者協会に登録に行かなくては。
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