41才の春だから・・・ダンジョンへ

江戸門

プロローグ あの時の夢

 あの映画が好きだった、大好きだった。

 幼いころから大好きだったあの映画を何度となく繰り返し見ていた。


 トラップにはまってしまった時のハラハラ感。

 そのトラップを回避できた時の爽快感。

 トラップを潜り抜けたその先、遺跡の最奥で宝物を見つけ手に入れた時の達成感。

 手に入れた宝物を横からかっさらわれた時の絶望感。

 そのあとも命からがら逃げだしたり、新たな謎に挑戦したり…


 未知の対する探究心、謎に対する好奇心、ピンチを覆す強靭なハート、そして発見した時の喜び、何度も何度も見ているうちに、僕ならこの時はこうする、あの時ならああしていたのにと考えるようになり、やがて秘境や遺跡を探索する冒険家は僕の夢になっていた。


 体力をつけ、どんなピンチも逃げ出せるようにマラソンをしてみたり、水中で行動することもあるかもしれないと考え水泳をしてみたり、機敏に動けるようにと体操をしてみたり、強くなるため近所のじいさんに鍛えてもらったり、理数系科目のほうが得意だったが考古学を学ぶため歴史を勉強したりといろいろなことをがむしゃらにがんばった。


 だが残念なことにあれだけ冒険家になるためにがんばったが、僕は冒険家になる方法を知らなかった。

 漠然と考古学の教授になればあんな大冒険が待っていると思っていたがそんなわけがなかった。


 普通に就職し、普通に働き、平凡に暮らしていた。

 それでも胸にくすぶるものがあるためか鍛える頻度は少なくなったが、休みの日には体を動かすようにしていた。ジムの水泳に行ってみたり、近所のじいさんの様子を見に行ったり、パルクールの真似事をしてみたり…


 そうした普通の日常を過ごしていたある日それは起こった。


 のちに『ダンジョン・スタンピード』と呼ばれる人類の約3分の1が減少することになった未曽有の大災害だ。

 地球上のいろんな場所に現れたダンジョンはただの穴であったり、謎の建造物であったり、密林であったり、険しい山であったり形は様々だが共通してあの日に突然出現し、そして大量にモンスターを吐き出した。

 近代兵器を駆使し、なんとかモンスター駆逐したがその時にはだいぶ被害は拡大していた。


 それから5年、世界は被災地の復興を優先しつつも、ダンジョンの調査を迅速に行った。その結果、ダンジョンは危険はあるが資源の宝庫であるということがわかった。ダンジョン資源により復興は進み、また、新たなビジネスとして民間でのダンジョン探索が行われるようになった。


 僕はもう一度夢を見る、幼き頃からずっと思い描いてきた未知を探索する冒険家の夢を…


 そうだ、あの帽子を準備しなくては…

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