第2章 五月雨のゴー・アラウンド
第29話 大敗を喫する場合
圧倒的。ただただ圧倒的だった。
薄白いボックスの中央に佇むのは、暗色の機影。
深紫のインガルスをまとうあいつ――――
否、正確には――――ゆっくりと静かに墜ちていく、白蒼の機影を。
バッテリー残量の危険域到達。それに伴う強制ソフトランディング。
それはつまり、明確な敗北を意味していて。
『……そん、な』
ファインから漏れるのは呆然とした声。
携帯端末からバッテリー残量を確認すれば、改めてその事実を理解させられる。
夕花の残バッテリーは約七割。自身の飛行によってしかメインバッテリーを消費していない。――――言い換えれば、被弾ゼロ。ノーダメージ。
『思った通り。それ以上も以下も無い』
疲れた様子など一切見せず、世間話のような口振りであいつは言う。
これ以上無い、強者の余裕だった。ファインはなにも言葉を返せない。
悔しげに黙り込むファインの様子に夕花は、短い溜め息を吐いて。
見下すでもなく、侮蔑するでもなく。
あくまで当然の事実を告げるように。
FASの頂点――――ランク一位、雨車夕花はその言葉を口にする。
『やっぱり、蒼姉さんには程遠い』
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます