何の神様だろうね1
この城にはナガーシャがいた場所のような水を生み出す部屋が4つある。
そして中枢となる大きな場所が1つが大きな構造である。
4つの部屋それぞれにウンディーネが1人ずつ配置されていて水を生み出して外に流している。
ナガーシャによると他3か所は占領されてしまっているようだ。
水が出ていないことからもウンディーネたちが囚われている可能性があるらしい。
どうにも他の部屋には別の魔物が向かっていたようでここに来ていたリザードマンは中でも弱い魔物の部類だったので助かった。
けれど他の部屋の正確な状況はナガーシャにも分からなかった。
ちなみにこんな不思議な城どうやって建てたのか聞いてみたら元々ここはダンジョンだったらしい。
今よりももっと弱く水を噴き出す城であって長年放置されていつの間にか小さい湖ができていた。
それに目をつけたウォークアが神の力と人の協力で持ってダンジョンだった城を水を生み出す機関とした。
当時は世界も魔力に満ちていて平和で神の力も強くてそんなことが出来た。
しかし力を使ってしまって聖域することは出来なかったのだ。
元々迷路のようなダンジョンであった城を構造に大きく手を加えずに利用している。
だから中の構造が入り組んだようになっている。
川が出来たりその川沿いに人が集まって町ができたのはもっとずっと後のこと。
ウンディーネも代替わりしているので当時のことは話でしか知らない。
「近くに魔物はいませんしここの中なら外よりも安全なので少しお休みください」
ナガーシャが扉に手をかざして魔力を込めると扉が閉まる。
そしてさらに魔力を込めていくとボロボロで歪んでいた扉がゆっくりと直っていく。
これは神の力よりもダンジョンとしての機能の方が近い。
「それで俺たちはどうしたら良い?」
やることはなんとなく想像つく。
他にやるべきことや効率がいい方法があるなら知りたい。
「部屋を開放して私の仲間たちを助けていくしかありません。
そもそもこんな風に襲われるなんて想定していないので特別に防衛機能とかもないのです……」
「そう都合良くはいかないか」
「それと順番としては4つの部屋を開放してから真ん中ですね」
「なんでだ?
別に行けるんなら……」
「行けないんです」
「なんでだ?」
「中枢となっている真ん中の部屋は大事なので隔離する事ができるようになっているのですが勢いよく敵に入り込まれて占領されてしまいました。
今はその隔離のシステムを利用されて外から入れないようにされてしまっています」
「それじゃあ解放出来ないのか?」
「いえ、4つの部屋全てを取り戻せば外からでも開けられるんです」
「なるほどな。
だから先に他の部屋を解放しなきゃいけないと」
「その通りです。
全くもって情けない話ですが……」
方針は固まった。
面倒ではあるけれど分かりやすいし残り3つの部屋を解放してウンディーネたちを救い出すことから始める。
「ウンディーネは戦えないのか?」
精霊は魔法が使えるはず。
ウンディーネは上級精霊でそれなりに強いはずだ。
「私たちも戦えるのですが先日の大きな嵐の時に城の機能をコントロールするのに力を使い果たしてしまいまして……
それでも相手の数が多かったので押し返せたかはちょっと分かりません」
「それじゃあ仕方ないか」
「うぅ……私も闘うか迷ったのですが倒しきれそうもないので扉を閉ざして籠城していたのです。
リュード様方が来てくださらなければどうなっていたか……」
「過ぎたことをクヨクヨしてもしょうがない。
ここから反撃だ」
「よろしくお願いします!」
部屋の扉を固く閉ざして出発する。
離れるのは不安であるがなかなか複雑な城を道案内する必要があるし、もし仮に他のウンディーネたちが動けない状態にされていたら機能の回復はナガーシャがやるしかない。
水を生み出す部屋は大体城の角に位置している。
時計回りにそれぞれ順番に攻略していくことになった。
「お役に立てずすいません」
「しょうがないさ」
ウンディーネたちが負けたのは力を使い果たしただけではなかった。
相手は水系の神の配下であって水を得意とする魔物たちである。
水に対する抵抗力が高くて水魔法を主体として闘うウンディーネたちでは相性が悪かった。
マーマンぐらいならナガーシャでも全く問題はないけどやはり力は完全ではないようなので案内に徹してもらう。
複雑な道をナガーシャの案内で歩いていくと中の様子が少し変わってきた。
通路の幅が広くなり岩だった壁が透明なガラスのようなものになった。
ガラスの向こうには水が満ちていて魚が泳いでいるのが見える。
平時なら綺麗な場所に思えるだろうが今はそんなこと楽しんでいられない。
コユキは楽しそうだけど。
「カニ……?」
「イナデニカですね。
外骨格が硬く両の爪は人の体ぐらい簡単に切断してしまいますので気をつけてください。
結構素早いので油断なさらないように」
現れた魔物はカニだった。
リュードの腰ぐらいまでの高さがあり胴体も容易く挟んでしまえそうな爪のハサミを持っている。
「前に走んのかよ!」
カニだし横向きに、と思っていたら普通に前に走ってきた。
そのまま前にいたリュードを爪で挟み込もうとする。
リュードは後ろに下がって爪をかわして剣を振り下ろす。
魔力を込めない剣では表面に軽く傷をつける程度で通らない。
今度は爪で殴りつけてくるのを飛んで回避する。
「うりゃ!」
こちらもと剣に魔力を込めて突き出す。
剣先がカニの甲羅を突き破る。
刺した場所が悪くて大きなダメージにもならなかったが一定以上の強さがあれば攻撃は通りそうである。
「終わりだ!」
両側から挟み込もうと迫る両手の爪。
リュードはあえてさらに一歩踏み込んでカニの懐に入り込んだ。
剣先に魔力を集中させてカニの口をめがけて思い切り剣を突き出す。
反対側の甲羅から剣が突き出てきてカニの体がビクンビクンと震える。
カニに足を当てて押すようにしながら剣を抜く。
そのまま後ろに倒れてカニは動かなくなってしまった。
爪での攻撃がメイン。
挟んだり叩きつけてきたりする接近物理攻撃。
試しちゃいないが切断力は高いだろうから要注意。
あとはやや硬いこととやや速いことが特徴で今のところ苦労する要素は少ない。
「なあ、これってもしかして……美味い?」
「あら、よくご存知ですね?
ステュルス川だとあまり見かけませんがずっと下流域ではこのイナデニカが現れるそうです。
味はとても美味しいですよ。
私も食べたことがあります」
ジッとカニを見つめるリュードにケガでもしたのかとミルトが近づいてきた。
ケガをしたのではなくどう見てもこれカニだよなとリュードは考えていたのだ。
カニなら美味しくいただけるはず。
マーマンですら食べられたのだ、見た目に巨大なカニであるだけならなんの抵抗もない。
「もらってもいいか?」
リュードはナガーシャに視線を向ける。
一応城の中でのことなので尋ねてみる。
「私たちは食事を必要としませんし全て片付いたら外に捨てるだけなのでお好きにどうぞ」
デカいのでどうするか悩んだけど足を紐で縛って小さく丸めて魔法で凍らせてマジックボックスの袋に突っ込んでおいた。
今日のお昼にでもしようと思う。
その後もマーマンの姿は見なくなり、イナデニカがちょいちょい出てきた。
そんなに数がいっぺんに出てこないので冒険者数人でしっかりと相手すれば危険はなかった。
倒したカニも何杯かはリュードが持ち帰ることになったが流石に全部は無理であった。
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