呪いの容疑者を調査せよ4

「カイーダの野郎なぜか元領主の館にいやがった。


 辺りじゃ見かけない女がいたから追いかけてみたんだ。

 すると空き家になっているはずの元領主の館に明かりがついていてそこに入っていったんだ。


 ドアを開けて出迎えたのはなんと、カイーダだった!」


「本当にカイーダなのか?」


「小さくなったからって視力まで変わりゃしねえよ!


 あの陰湿が滲み出る顔、カイーダの野郎だって!」


「まあお前カイーダと前にトラブってたもんな……」


 以前酒に酔って妹のことを売女呼ばわりされても大げんかになった。

 そんな相手だからカイーダの顔を見間違うはずがないと鼻息が荒い。


 この町に領主はいるがだいぶ前に別の人に代わった。

 前の領主は比較的派手な生活をしていて大きな館に住んでいた。


 今の領主はそんなに派手な生活を好まず質素な生活をしているのでより小さい邸宅の方を住居としている。

 使われなくなった大きな屋敷は売りに出されているのだけどこんなところで領主よりも大きな館を買って住みたがる人もいない。


 傷まないように時々掃除される以外は特に使われることもない館であった。


「なんだってあんなところにアイツがいやがるんだよ!」


「それに女が入っていったってどういうことだ?」


「知るかよ!


 ただあの女見てニヤけた面!

 ぜってえ良くないことだ!」


「何にしても調べてみる必要がありそうだな」


「ホルドの方は今日は出勤していたぞ」


 別の人が他に挙がっていたホルドという人の報告をする。

 ホルドはまた特殊なタイプだった。


 失踪して戻ってくれば基本は同じ日常を繰り返している。

 あるいは失踪しなくても、気味が悪くても生活があるので大体の人はしょうがなくこれまで通りの日常を送る。


 こんな状況になったって生きていかなきゃいけない。

 帰ってきて虚な目をしていても生活に必要な日常の行動を取っているので仕事やなんかに支障はない。


 だから町は異様な雰囲気のまま入れ替わっていっていた。

 しかし中には生活のパターンが変わった人がいる。


 ホルドがその良い例である。

 冒険者ギルドの職員であるホルドは生活のパターンが変わった。


 どう変わったのかといえば明らかに仕事に来なくなったのだ。

 目に見えて出勤回数が減ったのである。


 これまで文句は言いながらもしっかりと出勤していたホルドはいつ頃からか出勤の回数が激減した。

 今では時々冒険者ギルドに顔を出す程度ぐらいにまでなっている。


 分かりやすく行動が変化しているけれど出勤してこないことに加えて家にもそんなにいないので足取りが掴めていない。


「今も何人か後をつけさせてる。


 もしかしたらどこに行ってるかも分かるかもしれない」


「もう何人か向かわせよう。


 どっちに向かった?」


 ホルドの追跡のために何人かを向かわせる。

 小さいので追いつくのか、合流できるかは分からないけれどやらないよりはいい。


「カイーダも怪しいがホルドってやつも怪しいな……」


「つか全員怪しくない?」


「怪しいね……」


 名前の挙がった人は数人いるがなぜか全員怪しい。

 謎の金を持っていたコーディーやデルも怪しく、まだ見たこともないけどカイーダもホルドも怪しい。


 それでいながら今のところ決定的な証拠もない。


「ホルドは焦って帰ってるのか楽しみなのかいっつも早足で最後まで追えないんだ。


 こっちもやり方を工夫したり見つけるたびに少しずつ追いついていったりするからそろそろ足取りが追えるといいんだけどな」


「じゃあまだもうちょっとかかりそうですか?」


「そうだな。


 ホルドの方は後回しにしてカイーダの方を調査してみよう」


 未だ情報は少ない。

 しかし空き家となっている館を勝手に使い女性を連れ込んでいるカイーダの行動は一際怪しい。


 リュードたちは一晩休んで次の日に元領主の館に向かうことになった。

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