呪いをかけられた町2
「だから術者を探すことも大事だけどこの場合は先に呪いの原因となっている魔法陣を探す方がいいと思うにゃ」
これがどんな呪いなのか全容は掴めていないけれど呪いを解いてしまえばどの道関係はなくなる。
それに小さいままでは制限が大きくて出来ることが限られてしまう。
しかしそうした魔法陣がどこにあるのか調べるためにも事件の調査も同時にしなきゃいけない。
リュードたちでは呪いに関して無知なのでどう探したらいいのかの予想すらつかない。
「目的が分からないけど良くなさそうな雰囲気がするにゃ。
早めに行動する必要があるにゃ」
「例えばこのまま町を離れたら呪いはどうなるんだ?」
「……分からないにゃ。
そのまま続くのか、解けるのかは術者がどんな呪いをかけたか次第にゃ」
「そうか……
俺たちじゃ少し移動するだけで日が暮れちまう。
ニャロとコユキが頼りだ」
「パパ、任せる!」
コユキが鼻息荒くやる気を見せる。
言葉の理解度に対してまだ話す方は上手くないが意思の疎通は取れている。
「……コユキ、ニャロ、隠れろ!」
ドタドタと騒がしい足音が聞こえてきて緊張が走る。
「えっ、えっ!?」
「ムギュ!」
慌てるニャロをよそにコユキの行動は早かった。
リュードたちを引っ掴んでコユキはサッとベッドの下に入って隠れる。
「オトナシク……シロ」
「にゃにゃ、にゃんにゃ!」
コユキが隠れた直後ドアが蹴破られて数人の男たちが入ってきた。
町の警備兵なのだろうか、武装してお揃いの腕章を付けている。
ニャロに剣を突きつけているが町の人と同じように目はうつろで覇気はない。
「何するにゃ!
私はケーフィス教の聖者の……
にゃー!
痛いにゃー!
もっと優しくするにゃー!」
ニャロは身分を明かして話し合いを模索するが男たちは聞く耳を持たない。
聖職者に手を出すのはどこでもご法度で特に聖者になんて手を出すと宗教と国の戦争になりかねない。
なのに全くそんなこと気にすることもなく男たちはニャロの腕を強く掴んだ。
そして引っ張って連れて行く。
「いっ……抵抗しないから優しくしてくれにゃー!」
女性の身で複数の男たちに囲まれてはニャロも逃げも抵抗もできない。
ニャロはそのまま男たちに誘拐されてしまった。
「イナイ……」
残った男が部屋の中を見回す。
呼吸も止めて気配を殺す。
心臓の音が大きく聞こえるような静寂の数秒を過ごして男は部屋を出ていった。
隠れているとか考えていないようで探しもしなくて助かった。
「どどど、どうする、リュード!」
人の気配が無くなったことを確認してコユキがベッドの下から出てくる。
動揺しまくりのラストだけど動揺しているのはリュードも同じであった。
正直な話呪いについて1番詳しいはずのニャロがいなくなってしまったらどうしたらいいのか。
体格的に1番戦力でもあったのに。
「……悩んでいてもしょうがない。
コユキ、お前が頼りだ!」
とりあえず移動だけでもコユキを頼るしかない。
今だってベッドから下りるのにコユキがいなきゃ命懸けになるぐらいだから。
「頑張る!」
とりあえず手に持っていてはコユキもやりにくかろう。
まずは警戒しながら泊まっていた部屋に行く。
幸い宿の中にもう男たちはいなかった。
部屋にはまだ荷物は残されていた。
それどころか男たちはこちらの部屋に入っていないようだった。
荷物を漁る。
コユキに武器を持たせても高が知れているのでそうしたものを探すのではない。
「これなら大丈夫そうかな」
取り出したのは肩がけのカバン。
軽い外出用に購入していたもので今はコユキが時折使っている。
リュードたちはこれに入ってコユキに運んでもらおうと思ったのである。
結構揺れるがしょうがない。
一応ナイフも持たせるがこれで戦う時は本当に最後の最後である。
「よし……コユキ、行くぞ」
「おー!」
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