冒険者にお任せあれ1
ちなみに冒険者たちにダリルは帯同していない。
タイミング悪くやらなければいけないことがあって会うことができず教会に伝言を頼んでおいた。
「おっ、リュード!
帰ってきたか!」
「今度は負けないぞ。
また飲もうぜ!」
「次は俺と勝負すんだ!」
「なんだと、お前は引っ込んでろ!」
「なんだやるかぁ!」
「……ドワーフに大人気だね」
「ははっ……まあ色々ありまして」
正門が開いたものだからドワーフたちも集まってきていた。
見知らぬ人に嫌悪感を丸出しにする……よりも先にリュードが目に入った。
もちろん嫌そうな顔をしたドワーフはいたけれどそんなことよりもリュードに声をかけるドワーフの方が目立っていて多少の歓迎感は出たので良かった。
ついてそうそう悪いけれどドワガルを奥まで進んで中心にある少し大きめに作られた会館に行く。
そこにはドワーフのトップのデルデを除いた3人が集まっているので挨拶するためだ。
そこに向かう途中とリュードがやたらと声をかけられるのでリュード実はドワーフ説まで言い出す冒険者もいた。
じゃなきゃこんなに歓迎されるはずがないと考えたのだ。
まるで英雄が帰ってきたような迎え入れられ、リュードも苦笑いで手を振りかえしたりしていた。
中にはルフォンやラストに声をかけている女性ドワーフたちもいた。
「正直なところどうして君たちがドワーフの窓口なのかずっと疑問だったけれどこの様子を見れば愚問だったね」
ドワーフが他種族にどんな感情を抱いているかはリザーセツも知っている。
現に良くない顔をしているドワーフがいるのでこっちが本来のリアクションなのだろうと思う。
今はリュードがいるから歓迎の声の方が大きく感じられるのだ。
若い魔人族が前に立って冒険者と交渉を進める理由がリザーセツたちにも分からず、その関係に少し疑いを持っていたのだけれどドワーフたちの歓迎っぷりを見ればリュードに任せるのは当然だと思えた。
酒瓶片手にリュードにウインクしているドワーフもいて、それどころかリュードの帰還のお祝いを理由に酒を飲み始めたドワーフもいた。
ようやくお酒が抜けた気がしていたのにまたお酒漬けにされる未来が見えた気がした。
「ようこそいらっしゃいました」
サッテが3人を代表して前に出る。
他の2人よりもいくぶんか丁寧な態度を取るのが上手いからだ。
髭面のドワーフから女性の声が聞こえてきて皆驚いていた。
「この度ドワーフのご依頼受けさせていただきましたリザーセツと申します。
冒険者一同を代表してドワーフの首長にご挨拶させていただきます」
若干の動揺はあったもののリザーセツはすぐに持ち直して丁寧に返す。
ギルドからも品格良しと勧められた冒険者だけはある。
そしてそのまま鉱山奪還作戦についての説明と会議が始まる。
ドワーフがあまり使うこともない広い会議室に案内されてドワーフの方でまとめた資料が配られる。
取り戻すべき鉱山は5つ。
リュードたちが取り戻した鉱山はドワーフが管理していて、今は入り口を封鎖して魔物が新しく入れないようにしてある。
他の鉱山についてはドワーフだけでの奪還を試みた時の情報を元に、リュードが出発する前にできる範囲、危険でない範囲で調査や偵察するように勧めてさらに少し情報を加えていた。
想定される危険度はドワーフ側が独自につけたものだけど冒険者たちから見ても大きく危険度は変わらない。
特別優先する鉱山もないのでそうなるとやはり低危険度のところから行くのが正攻法となる。
冒険者たちからもいくつか質問が出て魔物の種類などを再確認して、順当に低い危険度の鉱山から攻略することになった。
会議は解散となり冒険者たちはドワガルに泊まることになった。
冒険者を2つに分けてドワガルが費用を持って宿に泊まることになった。
リュードたちは冒険者たちとは別枠なので冒険者たちと同じではなく、再びケルタの所に泊まることになった。
費用はドワガルが持ってくれるようだけど。
「いらっしゃい……やあやあ、ひさしぶりだね!」
暇を持て余していたケルタだったけどまたリュードたちが泊まることになって嬉しそう。
リュードがいなくてもドワーフたちが宿の前で酒盛りを始めるから困ったものだというマシンガントークを聞いて帰ってきたなと言う気持ちになったリュードであった。
ーーーーー
ここで低ランク冒険者の集まりだったのならすぐさま出発しようとでもなるところだった。
流石は高ランク冒険者は違う。
余裕と冷静さが段違いだ。
渡された情報だけを鵜呑みにして動かない。
ドワーフが見逃したところや気づかないところ、時間が空いて変化が起きたことはないかと自分たちでさらにチェックする
それだけでなく鉱山周辺の地形や逃げるルート、鉱山の出入り口や魔物の分析まで行ってリスクを極限まで減らそうとしている。
確実性を重視して、より細かな情報はドワーフにも共有されるので時間がかかっても納得のできる仕事をしていた。
魔物の様子を確認して分かったのは何故か魔物はあまり外に出たがらないようで日中は鉱山の中に引きこもっていることが多いと言うことだった。
鉱山周辺にも自然はあるがエサ場としてはやや不足気味なところもあるのでもっと積極的に外に出てエサ探ししてもおかしくないのに行動に異常が見られる。
そのせいで相手の魔物の規模が分からない。
ついでに外に出ないから誘き出して数を減らすことも難しい。
直接鉱山の中に乗り込んで魔物を倒していくしかない。
ということで乗り込んで魔物を討伐することになった。
鉱山にはいくつか出入り口があるので冒険者を2つに分けてそれぞれから進入していくことになった。
全員で乗り込んでも全員で戦える広さはないし、2パーティー大体10人前後で交代交代闘うのがいいと判断した。
冒険者に加えて鉱山の道案内兼活躍見届け人として何人かのドワーフもついていくことになった。
こうして1つ目の鉱山を取り戻す冒険者たちが出発した。
その冒険者たちにリュードたちは同行しなかった。
なぜならリュードたちは依頼を受けた冒険者ではなく依頼主側だからである。
5パーティーあるので2パーティーずつで突入することになり、1パーティーはドワガルで念のために待機。
リュードたちも一応待機組という扱いではあった。
ということでリュードはドワーフたちと腕相撲で戦った。
お酒は飲まんのかとドワーフに詰め寄られたりもしたけれど他の人が鉱山で戦っているのにお酒を飲んでいるのは気が引けた。
腕相撲大会なんて御大層な呼び方した競技が始まったけれど内容はいつもと変わらない。
ドワーフがリュードに献上品を持ってきてリュードが受け取って腕相撲勝負が始まる。
大会も何もリュード固定でドワーフが入れ替わっていくだけだ。
冒険者たちは1日かけて鉱山まで行き、2日かけて魔物を倒して、また1日かけて帰ってきた。
そろそろお酒勝負の圧力に負けそうになっていた。
ケルタの金床の前には腕相撲大会を肴に酔い潰れたドワーフが転がっており、リュードは1人毎夜プルップルになった腕の痛みで眠れぬ日々を過ごしていた。
鉱山奪還の報は瞬く間にドワガルを駆け巡った。
鉱山にいたのはケイブマンティスという巨大なカマキリみたいな魔物であった。
両手の鎌から繰り出される素早い攻撃は侮れるものではなく、鉱山の中では戦いにくかっただろうがケガ人もなく討伐してきた。
1日休んで次の鉱山の調査に取り掛かる冒険者たち。
なんの心配もなく攻略できそうだとリュードも期待を持てた。
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