ドワーフと絆を深めて3
「真魔大戦頃は魔法剣を作れるような職人もいたそうだが今はそこまでのものはいない。
後天的に魔法剣となるものもほとんどないがその黒重鉄は重たいが魔力の定着率が良い。
使い続けていればそのうちに魔力が定着して魔法剣になるやもしれないな」
これまで黒重鉄をドワーフであるデルデも扱ったことがなかった。
よってミスリルと合わせてみようなどというのも思いつきによるものだ。
ミスリルは魔力の伝導率が高くて魔力を扱うことを容易くさせるが伝導率が高いが故かミスリルそのものに魔力を定着させることは難しい。
逆に黒重鉄は魔力の伝導率が悪いが染み込むようにその中に魔力を保持するような性質を持っている。
よくこれで戦ってきたものだと感心するが魔力の多い魔人族だからできたのだろうとデルデは考えた。
どのような相乗効果をもたらすかはデルデにも分からない。
少なくとも黒重鉄の魔力の伝導率の悪さをミスリルが補ってはくれる。
比べると魔力の消費や扱いやすさが段違いにはなったはずだ。
いつかはビューランデルデが打った魔法剣になれば良いなと期待はしておく。
「まあ、あとはそいつを使い続けてみてくれ。
直す前より悪いことはないだろうからな」
「……ありがとうございます」
「ふんっ、礼なら働いてしてくれ。
どれ、お嬢さん方は別の部屋か?
ナイフも出来てるし、弓も預かっておる」
宿丸々貸切の状態であるがリュードとルフォンたちの部屋は隣同士。
デルデを連れて隣の部屋に移動する。
「わっ!」
「その予定はなかったがリュードのものだけミスリルを使うのも悪いと思ってな」
魔力を込めるということはルフォンも行っている。
ただそんな魔力コントロールが苦手であるからこそルフォンにも分かるナイフの魔力伝導率。
ナイフが自分の体のようで、先端まで感覚が繋がっているようだ。
見た目は大きく変わらなく見えるのに美しさも増していて、ドワーフの職人としての技量の高さが分かる。
以前のナイフの品質が悪かったのではなく、やはり名工たるドワーフの作るナイフの質は1つ違うのである。
目をキラキラさせてナイフの具合を確かめるルフォン。
「そしてほれ、アリアから預かっとる弓だ」
デルデは布に包まれた弓をラストに手渡す。
「待ってました!
……おおっー!」
何が入っているのか分かりきっているのでサッと開いてラストも目を輝かす。
デュラハンと戦って特注の弓が壊れて以来武器屋に置いてあるものを調整して使っていたラスト。
ムチは普通の物だし、今練習中の剣も普通の物でリュードやラストに比べて特別感がないと思っていた。
だからラストも特別感が欲しいとアリアドヘンに相談していた。
2人が黒い武器を使うならラストも合わせて黒い武器がいい。
そう言って出来た漆黒の弓。
黒重鉄は使われていないけどリュードとルフォンとお揃いの黒い武器。
見た目だけでゾクゾクして、ラストはゆっくりと弓を構えた。
矢をつがえずに弦を引き、手を放す。
今なら大悪魔の頭だって射抜いてやってしまえそうなそんな気分にさせてくれる。
ただ思っていたよりも馴染みが良くてラストもとても驚いた。
「ふふふ、聞いて驚け。
アリアにミスリルを渡してやったからその弓にも、ミスリルが使われている」
「本当!?
デルデ大好き!」
「はっはっはっ!
喜んでもらえて何よりだ!」
2人にミスリルを使ってラストのには使わないなんで不平等はダメだろうとデルデはアリアドヘンにミスリルを渡していた。
どう使うかはアリアドヘン次第なのでどれほど使っているかは知らないが使わずにネコババすることはない。
感極まってラストはデルデに抱きついた。
武器を作った相手に喜んでもらえることほど嬉しいことはない。
若い子に抱きつかれて嬉しいのかデルデもにっこりと笑っていた。
「うぉっほん!
武器も直ったことだし約束は果たしてもらえるかな?」
「もちろんさ!
今ならなんだって倒せる気がするよ」
むしろ魔物の討伐に出て剣を確かめたいぐらいな気分。
「うむ、その心意気や良しだな。
しかし今すぐというわけにもいかない。
ワシも作業のし通しで疲れておる。
出発はそうだな、2日後でとうだ?」
「分かりました。
準備整えておきます。
本当にありがとうございます!」
「ふんっ、だから礼は働きで見せてくれればいい。
ワシは眠いから帰るぞ」
リュードたちのため、そして自分のためにデルデは急ピッチで作業を進めた。
睡眠不足では作業に影響出るので寝る時間を惜しんでとまではやらないが集中力がいる鍛冶仕事で体は疲れていた。
しかし宿を出たデルデは他のドワーフたちに捕まった。
すでに酔って出来上がっていたドワーフたちの波に飲み込まれてデルデも酒を飲んでしまった。
作業を終えて疲れているところに飲む酒もまた良い。
ベッドで寝るつもりが宿前の地面で寝ることになったデルデであった。
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