首長会議

「やあやあ、久しぶりだな」


「久しぶりじゃねえよ!


 テメェ何してやがった!」


「手持ちのミスリルがなくなってな、探していたんだよ」


「探していただと?


 おい、まさか……」


「ファブラン鉱山はもうダメだ。


 魔物の巣窟になっておるわ」


「あそこに行ったのか!?


 何をやっているんだ、危険なことは分かっているだろう!」


「……言っただろう、手持ちが足りんから取りに行っただけだ」


 4人のドワーフが集まっている。

 1人は大きなリュックを背負った老年のドワーフであるビューランデルデ。


 ビューランデルデに食ってかかっていったのは髭をいくつかの細かい三つ編みにしているドワーフであった。


「待て待て、ここで三鎚が喧嘩しても良いことなどないだろう。


 話し合いをしようではないか」


「前にも言ったがこの話し合いとやらになんの意味がある?


 ワシの意見を聞き入れもしないでただイタズラに時間を浪費して、この状態がバレないようにと門を閉ざして封鎖してなんになるというのだ!」


 ここに集まったのはドワーフの首長である4人であった。

 デルデを始めとした三鎚と呼ばれる3人と長老と呼ばれる最年長のドワーフが1人。


 普段はバラバラに活動する4人が集まったのは他でもないドワーフの国に起きている問題について協議するためであった。

 しかしドワーフの国のトップである4人だけれど政治的な能力を買われてトップになった人は1人もいない。


 そもそもそうした能力があまり高くないドワーフであるし、そうした政治的なことも必要とせずにきた種族であったのだ。

 4人寄っても良い考えが浮かぶはずもなく、またこれまでの話し合いでも同様だった。


 とりあえず他の人が巻き込まれないよう、そして外部に問題がバレないようにとドワガルは封鎖されているのであった。

 しかしそれ以上の発展もなく、デルデは無駄な話し合いとやらに辟易していた。


「ワシの考えは前にも言った。


 外に助けを求めるべきだとな」


「まさか他の種族をこの町に入れろというのか!」


「ふん、この期に及んでまだそんなことを言うのか!


 ワシらには知識もなく、武力も劣っておる。

 せめて知識のあるものに相談ぐらいはするべきだろう」


「忘れたのか、我々ドワーフがどんな目にあったかを!」


「お前はよくそういうが、そんなものお前の爺さんの時の話だろうが!


 それに何も周り全てが敵なわけじゃなかっただろう。

 今でも血人族とは交流はあるし、行き来する商人もいる。


 どこかに助けを求めることのどこがダメだというのだ!」


「ぬっ……いや、血人族といえど信用はできない!」


「ええい、よくそんな頭が固くて生きていられるな!」


「お前こそドワーフの誇りを捨てたのか!」


 ドワーフの他種族嫌いといえば筋金入りである。

 血人族との関係も短くなく、ある程度信用してもよいはずなのに頑ななドワーフはいまだに存在している。


 真人族よりも長生きなドワーフは世代交代が遅く、他種族を信用していないので外との交流もないせいで価値観が凝り固まりやすい。

 長いこと上の世代の恨みつらみを聞かされてきたので上の世代に近いものほど他種族に対するアレルギーを持っている。


 デルデは比較的価値観が柔軟でこれまでにも色々と考えを出しているのだけれどどの考えもプライドと固まった価値観が邪魔をして受け入れられなかった。

 もう自分たちだけで片付けられる問題ではないとデルデは思っているのに自分たちだけでどうにかしようと堂々巡りの話し合いを続けている。


 くだらないとデルデは思う。

 このまま話し合いに終始しても緩やかにドワーフは滅亡の道を進んでいくだけである。


 今より未来は力を失い、どうしようもなくなってから助けを求めてはそれことつけ入る隙を与えてしまう。

 このままでは危うくなる。


 今よりもっと、昔よりずっと。

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