実は君のこと4
「じゃあ私に冷たくなったのも、ベキーオたちと行動を共にすることがあったのも全部……」
「君のため、なんだ」
「どうして……そんなこと1人で抱えて……」
「お、俺が勝手にやったことだ!
だから……そんな顔をしないでほしい」
今にも泣き出しそうなレスト。
何一つ知らなかった自分とそんな自分のために悩んで1人で大きな悩みを抱えたバロワのことで感情がぐちゃぐちゃになっている。
「…………もう一度言って」
「な、何を?」
「私のことをどう思っているか」
「す、好きだ……」
「その後も言ってくれたでしょう?」
「あ……あ、愛してる……」
もう何かを考えるのは止めた。
今はバロワの思いに応えたいと思った。
「愛してるってことは……男女の関係になりたいって、こと…………よね?」
「まあ、そう言うことにはなるけど」
バロワとレストは兄妹。
男女の仲になるのは許されないこと。
「私、実は知ってたの」
「……何を?」
この期に及んでバロワの気持ちを知っていたなんてことはないはずだ。
なら何を知っていたと言うのか。
「バロワ君は私の兄ではないんでしょ?」
「な……」
レストもバカじゃない。
いきなり現れた兄が本当の兄でないことは分かっていた。
上手く理由を付けていたので他の人は気づかなかった。
でも疑っていたレストはバロワとも仲がよかったので聞き出そうと色々聞いていた。
厳しく言い付けられていたので兄妹ではないとは言いはしなかったバロワだが所詮は子供。
ポロリと以前の生活について漏らすことや王様ではない父親に対する思いがこぼれることがあった。
だからレストは分かっていたのだ。
バロワは実の兄妹ではないことを。
兄妹だけど兄妹じゃない男の子。
バロワに同じような境遇を感じて、そして同じような思いをバロワに抱いていたのであった。
同じく母のいないバロワとレスト。
大切な者を亡くす痛みを知っていた。
嫌われたと思って、落ち込んでレストは気づいた。
バロワの存在の大きさに。
レストもバロワのことが好きだったのであった。
「兄妹かどうかなんていいの。
私は……私もあなたが好き……」
子供の頃の思いとはもう違っているかもしれない。
だけどバロワが助けてくれた時やベキーオの凶刃から身を挺して守ってくれた時のことを思い出すと胸が高鳴る。
「レスト……でも」
「もう私もあなたも大人よ?
どうしていつまでも身分に縛られている必要があるのよ。
あなたは私が好きで、私はあなたが好き。
そのこと以外に何を考える必要があるというの?」
「レスト……」
もう言葉は要らなかった。
見つめ合う2人の顔がゆっくりと近づき、そして重なった。
ーーーーー
「それでぇ〜そのまま告白されちゃって」
女性陣がキャアキャアと声を上げる。
ワイワイとステキな話だと盛り上がっていて、リュードとヴィッツは大人しく気配を消して話を聞いていた。
ともあれ、レストとバロワの結婚の話は政略結婚などではなかった。
バロワは本気でレストと結婚することを決めて、全てを捨てる覚悟をした。
つまりバロワは王様の実の子でないことを公表して、大領主の座を辞して身を綺麗にしてからレストと結婚しようというのだ。
今ごろバロワは身辺整理をして、王様に事の次第を報告していることだろう。
ヴァンがどうするのかは分からないけれど真剣にレストのことを考えて決めた覚悟なら最後には受け入れるだろう。
「ラスト……歓迎してくれないの?」
ラストは1人複雑そうな顔をしていた。
裏で助けてくれていたことやバロワが実の兄妹でなかったことを初めて知った。
反対する理由なんてないのだけどこれまで敵かもしれないと思っていたバロワがレストと結婚するという事実を受け入れ難くあった。
「ううん、そうじゃなくて。
なんていうかちょっとまだ理解できてないっていうのかな。
あとは……」
「あとは?」
「お姉ちゃんのことこんなに待たせたバロワのこと1回ぐらい殴らないと気が済まないかな」
この感情はなんだろうとラストは思った。
それは話を幸せそうな顔をして話すレストを見て、バロワに姉を取られることに対しての嫉妬であった。
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