決戦! 亡者の騎士デュラハン4

 しっかりと鎧を着ていて錆び付いてもいない綺麗な剣や槍を持ったスケルトンナイトと厚めの生地で作られたローブに身を包み魔法補助具として作られた杖を持っているスケルトンメイジ。

 錆びてボロボロの鎧を着て、切れ味の悪そうな剣を持ったスケルトンナイトや薄い破れかけのローブを着たスケルトンメイジとは異なっていた。


「お気をつけください。


 なんだかこれまでのスケルトンとは違うようです」


 スケルトンナイト同士の装備はどこか似ていて、スケルトンメイジの装備も互いに似ている。

 そして4体1まとまりになっていることが見てとれる。


 ルフォン達を見てすぐに襲い掛かってもこない。


 何か他のスケルトンとは異なっている。


「私が前に出ますのでサポートをお願いします」


 相手は4体。

 数も多いしこうした違和感を感じた時はその正体を見極めなければ痛い目を見ることがある。


「行きますよ!」


 ヴィッツが槍のスケルトンナイトに切りかかる。


 普通のスケルトンなら防ぐこともしない。

 スケルトンナイトであっても大体防御も間に合わないものなのだけどこの槍のスケルトンナイトはヴィッツの剣を受け止めた。


 受け止めるだけの速さと力がある。

 すぐさま剣のスケルトンナイトとスケルトンメイジの攻撃を警戒したヴィッツは驚いた。


 剣のスケルトンナイトはヴィッツを無視してルフォンの方に向かった。

 そしてさらにヴィッツの横を魔法が飛んでいく。


 スケルトンメイジもルフォンの方を狙っているのだ。


 ヴィッツとルフォンがどちらが弱そうか。

 老人と女性であり、なかなか判断が難しいところではあるが剣を持った老人とナイフを持った女性なら女性の方が弱そうだとみるものももちろんいるだろう。


 前に出ているヴィッツではなくルフォンを集中的に狙った。

 多少戦略を考えるだけの知恵がある。


 ただし見た目ほどルフォンもか弱くはない。

 飛んでくる黒い魔力の矢をルフォンは回避する。


 避けられないものはナイフで叩き落として、服にすら魔法が掠ることもさせない。

 それでいながら迫り来る剣のスケルトンナイトのこともちゃんと見ている。


 突き出された剣のスケルトンナイトの剣をルフォンは体を回転させながらナイフを当てて逸らす。

 そのまま回転の勢いを利用して剣のスケルトンナイトの頭に目がけてナイフを振る。


 剣のスケルトンナイトはすぐさま体を逸らしてルフォンのナイフを回避すると後ろに飛び退いた。


「これは驚きですね」


 やはりただのスケルトンたちではなかった。

 戦い方に知性がある。


 魔法を使うタイミングといい連携も取っていて、戦い方を知っている戦いをしている。


「……私のことなめてるのかな?」


 弱いと思われた。

 スケルトンたちが優先してルフォンを狙った理由はそれしかない。


 リュードといるなら仕方ないけどヴィッツと一緒にいて見比べた時にサッと倒せる相手にでも見えたのだろうか。

 ちょっとだけルフォンがムッとする。


「いいよ、じゃあ少しだけ本気、見せたげる」


「これは……」


 人狼族だと聞いてはいたが目の前で魔人化した姿は見たことがなかった。

 ルフォンが魔人化して人狼の姿になる。


 真っ黒な毛に覆われた猛き姿。


「ヴィッツさんサポートお願いね」


 あの姿でも声は同じということに不思議さを感じずにはいられない。


「速い……!」


 ルフォンは地面を蹴るとルフォンに切りかかってきた剣のスケルトンナイトと距離を詰める。

 体ごと叩きつけるようにナイフを振り下ろすと剣のスケルトンナイトはギリギリ反応してナイフに剣を当てた。


 しかしルフォンの力が強くて剣のスケルトンナイトは押し切られて地面に転がる。


 スケルトンメイジが魔法を使ってルフォンを拘束しようと試みる。

 地面から黒い触手が何本もルフォンの体に伸びていく。


「させません!」


 それをヴィッツが炎をまとった剣で切り裂く。


「流石ヴィッツさん!」


 魔法を使った直後で動けないスケルトンメイジにルフォンが飛びかかる。

 ルフォンの魔力と聖水による神聖力がこもったナイフが額に当たり、そのまま頭蓋骨を2つに叩き割る。


 スケルトンメイジの体が魔力を失ってバラバラと崩れる。

 1体倒した。


 すぐさま槍のスケルトンナイトがルフォンに襲いかかる。

 分かっていたかのようにルフォンは飛び上がり、槍のスケルトンナイトの上を飛び越えながら体を反転させる。


 着地してすぐさま反撃。

 ナイフが鎧を切り裂くが槍のスケルトンナイトに変化はない。


 中に体が詰まっているのではないので鎧が傷付けられただけに終わったからだ。


「私に背を向けるとはいい度胸ですね」


 槍のスケルトンナイトがスケルトンメイジを助けようとしたのかは分からない。

 もしかしたらまだルフォンの方が弱そうで先に攻撃しにきたのかもしれない。


 槍のスケルトンナイトはヴィッツに背を向けてルフォンの方に向かっていった。

 当然ヴィッツがその隙を見逃すはずがない。


 後ろからヴィッツが槍のスケルトンナイトを斜めに両断する。


 炎をまとった剣は鎧ごと槍のスケルトンナイトを真っ二つに切った。


「残るは2体ですね」


「ヴィッツさんはメイジをお願い」


 ルフォンは剣のスケルトンナイトに向かう。

 立ち上がった剣のスケルトンナイトはルフォンのナイフを防ぎ、段々と後退していく。


 悪くはないと思った。


 剣のスケルトンナイトは剣を操り、押されながらも何とかルフォンの猛攻に耐えている。

 スケルトンナイトにしては相当できる方。


 ルフォンが片手しか使っていないとしても相当なスピードなので対応できるのは純粋にすごいと思った。

 もしこのスケルトンナイトにゼムトやガイデンのような自我があったならもっと強かったかもしれない。


 もしかしたらこのスケルトンナイトはそんな感じの強い人のスケルトンナイトだったのかもしれない。


 防ぐことも限界に達した時を見計らってルフォンは使っていなかった左手のナイフも使った。

 もうギリギリのところで防いでいた剣のスケルトンナイトはルフォンの左手に反応することができなくて、首を切り落とされた。


 頭蓋骨が地面を転がっていてもまだ動く気配があったが、ルフォンがナイフを投げて頭蓋骨にトドメを刺すとスケルトンナイトの体が倒れて動かなくなった。


「危ない戦いでございました」


 危なげなんてなかった。

 前衛がいなきゃスケルトンメイジなんて相手ではないのでヴィッツはもうすでにスケルトンメイジを片付けていた。


「どちらに向かいますか?」


 どちらというのはデュラハンと戦うリュードの方か、スケルトンたちと戦うモノランの方かである。


「……モノランの方に行こう」


「分かりました」


 リュードたちなら心配ない。

 きっとデュラハンも倒してくれるはず。


 今は余裕がなさそうなモノランの方を助けてあげることにした。

 もうモノランはあまり魔力がなくてスケルトンたちにチクチクと攻撃されながら少しずつ前足を振り回して倒していっていた。


 そちらの方が助けが必要そう。

 ルフォンはまずモノランを助けに行くことに決めた。


 ーーーーー


「最初から本気で行くぞ!」


 デュラハンを相手に余裕をかましている暇はない。

 リュードはクロークを脱ぎ捨てて魔人化する。


 こんなこともあろうかと魔人化することを見越した緩めの服を着てきていた。

 中には戦闘衣も身につけているし、魔人化する準備も万端だった。


 尻尾がある以上ズボンのお尻の部分だけはどうにもならないので破けてしまうけど必要な破損だからしょうがない。


 (……美しい)


 戦闘の最中だというのにラストはそう思ってしまった。

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