決戦! 亡者の騎士デュラハン3
リュードたちはモノランと一緒に遊撃部隊として戦う。
モノランが大雑把に敵の数を減らしていき、リュードたちが討ち漏らしたスケルトンを倒す。
「ルフォン、ラスト、道を切り開いてくれ」
「任せて!」
「退きなさい!」
ルフォンとラストで攻勢を強めてスケルトンを一気に倒す。
そうして空いた所を通ってリュードがスケルトンメイジを切り倒した。
モノランが敵の数を減らしてくれると戦場の様子が見えるようになってきた。
スケルトンの上位種であるスケルトンナイトやスケルトンメイジといった存在も見えていた。
これからの戦闘の時に上位種が残っていると厄介であるので見つけたら先に倒してしまっていた。
特にスケルトンメイジのような遠距離から攻撃してくる敵は優先して倒す。
冒険者たちは防御魔法の中に出入りを繰り返してスケルトンと戦い続け、モノランはそんな冒険者たちに力を見せつけるようにスケルトンを殲滅していった。
前足の一振りでも何体ものスケルトンが吹き飛んでいき、逆にスケルトンの攻撃ごときではモノランは傷付けられなかった。
早めの撤退とは相成ったがそれまででもそれなりにスケルトンは減らしてきていた。
みんなの戦いによって目に見えてスケルトンの数は減ってきていた。
変わらないように見えても諦めずに戦い続けて着実に減らしてきた結果が出てきていた。
まだ軍勢と言ってもいいほどの数は残っているのだけれど一面隙間なくいたスケルトンたちの補充が遅れてきて空白ができ始めていた。
冒険者とモノランが前に出て戦ってくれたので防御魔法にかかってくるスケルトンの圧力も減っていた。
神聖力の消費も多少は抑えられて想定していたよりも長く防御魔法を展開していられそうだった。
「昼飯にポーションか……」
「でもいつものマズイ店よりは確実に高いぞ」
「そうだな」
日が昇り、昼時。
炊き出しの設備も外に出しっぱなし。
酒場が併設されているので料理ができないこともないが今はみんな疲労していた。
ギルドが貯めている非常用の高級ポーションをみんなに配る。
ケガや体力を回復させるポーションと魔力を回復させるポーション。
美味しいものじゃない。
けど最後の晩餐にはふさわしいぐらい高価なものではあった。
リュードたちはリュード手製のポーションを飲む。
効果としては大きく変わらず、なのに普通のポーションのような不味さはない。
多少作り方は込み入っているけれど作って売れば欲しい人はいるだろう。
だってポーションって基本的にクソ不味いから。
「ジグーズさん、俺たちそろそろ行こうと思っています」
「分かりました。
……ご武運をお祈りしてます」
「勝って帰ってきますよ」
もう安心とまで言えないがデュラハンと戦うなら今を置いて他にない。
アンデッド系の魔物は昼になると能力が落ちる。
日が高い今が1番デュラハンも弱いタイミングなのである。
「モノラン、背中に乗せてくれないか?」
「どうぞ」
だいぶ魔法を使ってスケルトンを殲滅していたモノランも魔力節約モードになって薙ぎ払いで戦っていた。
序盤にスケルトンナイトやスケルトンメイジを片付けて脅威を取り除いておいたのでモノランは気兼ねなく魔法なしでも戦えていた。
「みんなも乗せていいか?」
「う?
……それはリュードのお願いですか?」
「うん、頼むよ」
「しょうがないですね、リュード以外は乗せないのですが特別です」
「みんな、乗るんだ!」
「しっかり掴まっていてくださいね。
リュード以外は落ちても知りませんから」
モノランが跳び上がる。
建物の上に着地する。
次々と建物の上をジャンプして町中を移動していき、北門のある城壁の上を飛び越える。
町の外にいるスケルトンはまばらであった。
多くのスケルトンが町中に入り、ダンジョンから向かってくるスケルトンもそれほど多くはない。
いくらなんでも工場のようにスケルトンが生み出され続けているのではなかった。
もうそんなにスケルトンもいないのかもしれない。
少しだけ希望を持ったリュードたちを乗せてモノランは走る。
勢いのあるモノランにぶつかるだけでもスケルトンは砕けていく。
北門からまっすぐ北上していけばそこにダンジョンがある。
ダンジョン手前にある小高い丘の上、そこにデュラハンがいた。
「まだあんなにスケルトンが……」
「その上スケルトンナイトとスケルトンメイジか……」
チッパの町に来ていたスケルトンが全てではなかった。
2体のスケルトンナイトと2体のスケルトンメイジがデュラハンの前に待機している。
そしてその周りを囲むようにスケルトンがいた。
他のスケルトンは生み出されたそばから送り出していたようだけどデュラハンの護衛なのか、このスケルトンナイトとスケルトンメイジ、一部のスケルトンはそばに留めおいたみたいだった。
「いいか、ルフォンとヴィッツはモノランと周りにいるスケルトンとスケルトンナイト、スケルトンメイジを相手してくれ。
俺とラストはデュラハンを倒すぞ」
「まさか……リュード」
「ここはダンジョンの外だからな、ボス以外をルフォンたちが相手しても大丈夫だろ。
ただここでデュラハンを倒してダンジョン攻略となるのかも分からないけど」
ラストはイタズラっぽく笑うリュードを見て驚いていた。
リュードはなんとこの期に及んでラストの大人の試練のことまで考えてデュラハンと戦おうとしていたのであった。
今大人の試練なんて考えている場合ではないのだけど、ここにきてこの先で難癖付けられることも絶対に嫌だった。
コルトンがいれば聞けて安心なのに。
そういえばコルトンはどうしたのだろうか。
これまではリュードたちに先回りしてダンジョン付近にいたのに今回はコルトンの姿は見ていない。
バカ真面目に待っていたのにここにいないというのもおかしな話であるとリュードは思った。
危険そうならルフォンたちに助けてもらったって別にいい。
やるだけやってみよう。
リュードたちに気づいたスケルトンが動き出す。
「私はもうあまり魔力はありませんので助けにはなれないかも知れませんよ」
「いてくれるだけでも心強いさ」
「リュードは口がうまいですね。
道は私が開けて差し上げましょう」
モノランが大きな雷を落とす。
スケルトンの集団の真ん中が雷にやられて穴になる。
モノランはスケルトンの集団に突っ込むと前足でスケルトンを薙ぎ倒していく。
「スケルトンは私に任せてください!
みなさんは早く行って下さい!」
「ありがとうモノラン!」
モノランの背中から飛び出してスケルトンの集団を飛び越えて行く。
「はっ!」
しっかりとフルアーマーの鎧を身につけたスケルトンナイトが通さないと言わんばかりに立ち塞がった。
スケルトンナイトに対して前に出たのはルフォン。
スケルトンナイトの剣をかわして思い切り蹴りを入れて無理矢理前から退かせた。
「リュード様、ご領主様を……ラスト様をお頼み申し上げますよ」
スケルトンメイジがルフォンに向かって氷の塊を発射する。
それをヴィッツが炎をまとった剣で切り裂いて防ぎ、2人は足を止めた。
そのままリュードとラストは走り抜けていく。
「また2人で戦うことになりましたな」
「ヴィッツさんなら強いから大歓迎だよ」
「お褒めにあずかり光栄でございます。
さっさと終わらせてペリアリーフの使い方でも話し合いましょうか」
ペリアリーフとはルフォンがもらってきた香辛料の1つの名前である。
「そうだね。
お昼もちゃんと食べてないしお腹が空いちゃう前に終わらせたいね」
少しだけこれまでのスケルトンナイトやスケルトンメイジとは違う雰囲気がある4体。
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