分かってるよ3
まずはギルドの人に話を聞く。
詳細な情報が欲しいなら多少のお金も必要だけど軽く話を聞くだけならそれも必要ない。
向こうもプロなので無料で教えられるラインというものを分かって話してくれる。
次はギルドの中にいる冒険者に話を聞く。
こちらは当たり外れがある。
知っている知っていないだけでなく、酒を一杯奢ってくれるならという人もいればサラッと教えてくれる人もいる。
今回は割と当たりの方でベテラン風の冒険者がリュードを無視してルフォンに色々とダンジョンについて教えてくれた。
若干ムカつくけど情報に変わりはないのでリュードも笑顔でお礼を言っておいた。
ルフォンのように顔がいいこともこういったことでは役に立つこともある。
大抵リュードの顔がいいと言って情報を教えてくれるのは女性の冒険者じゃなくてそっち系っぽい男性の冒険者だから役に立つけど考え物でもある。
ダンジョンは特徴的で分かりやすくボーンフィールドなんて呼ばれている。
アンデッドのダンジョンなんて呼んでいる人もいたけれどつまりはアンデッド系の魔物の中で、スケルトンと呼ばれる人骨のような見た目をした魔物が出てくるダンジョン。
本当に人骨な場合もあるし、それっぽい見た目をした偽物のこともあるらしいのだけどその違いを分かる人はまずいない。
ダンジョンの中に人骨があるわけもないしダンジョン産のスケルトンは結局人骨っぽい人骨じゃない何かなのだろう。
スケルトン相手ならあまり苦労はしないと思われるのだけれどこのボーンフィールドダンジョンは高難易度ダンジョンに分類される。
理由はいくつかある。
まずこのダンジョン広いらしい。
フィールド型と呼ばれるダンジョンで中は暗めの山岳地帯のようになっていて、端から端までかなりの距離がある。
中に出現する魔物は主にスケルトンなのだがこのスケルトン、リポップして、その間隔や早さも早いらしく、中は常にスケルトンで満員状態であるとのことだった。
数が多いと一体一体弱くても厄介である。
スケルトンはアンデッド系の魔物なので疲れも恐れも知らない。
ずっと攻撃にさらされることになる。
さらにこのダンジョンにはボス部屋というものが存在しない。
ボスはフィールドのどこかにいて探し回らなければいけない。
それだけでも厄介なのに、ボスはデュラハンという魔物であり、毎回出てくる場所も違えば移動もするし、デュラハンそのものも毎回姿が違うらしい。
楽なデュラハンの時もあれば強いデュラハンの時もあるようでランダム要素も大きいのが特徴である。
「……面倒なダンジョンだな」
リュードはともかくラストは相性が悪い。
アンデッドの中でも幽霊系じゃなくてガイコツ系が出てくることが確定している。
大体の場合アンデッド系の魔物を相手にする時には神聖力という聖職者の使う力が1番アンデッドに対して効く。
次点で効果があるのは火である。
そしてガイコツ系など体のある魔物に対しては物理力も一応効きはする。
幽霊やゴーストと呼ばれるタイプだったら無理だけどガイコツなら殴って破壊してしまえば倒せてしまうのである。
剣で切っても同様に破壊できるので不便なことは少ないのだけどラストの武器は弓矢である。
生身の相手に対しては威力が高くて強い武器であるけれどガイコツを相手にするには分が悪い。
通じないこともないだろうけど矢は有限、生身の部分がないので頭を正確に狙わなきゃいけないので多くのスケルトンが出ると圧倒的に矢も狙う時間も足りなくなる。
このダンジョンに対しては相性が悪いのである。
数が多いというだけでもやや不利なのに相手がスケルトンにまでなるとラストにとっては最悪のダンジョン。
もちろん他の人にとっても楽勝なダンジョンではない。
生半可な覚悟で行ってしまうと帰ってくることもできなくなってしまう。
「うーん……気が進まないけど対策はしておこうか」
一応アンデッドに対抗する方法はある。
ただ嫌な予感がするなぁと思いながらそれを求めに教会に向かう。
「え、たっっっっか!」
「やっぱりか」
アンデッドに対するもので、なおかつ教会にあるもの、といえば聖水である。
対アンデッド用の定番の商品で直接アンデッドにふりかけてもよし、武器にかければ一時的に武器に神聖力を宿らせて戦うことができる。
聖水は値段も品質も一定ではない。
作る人や作る教会、作る場所によって効果や値段といったものが変わってくる。
他の活動と違って聖水の生産は慈善事業でもないので値が張ることはしょうがない。
けれど限度ってものがある。
このチッパにある教会で売ってある聖水は限度を超えて高かった。
高いことは予想はしていたけれど思っていたよりも高い。
気軽に買って使える値段ではない。
高い要因はもちろんボーンフィールドダンジョンが近くにあるせいで聖水の需要が高いことに起因している。
ただしそれだけではない。
そんなダンジョンがあるので作られる聖水の品質も1番安い聖水のものからすでに高く、かつ偽物対策に1ビン1ビンに教会の刻印が施されている。
そりゃ値段も上がる。
需要と供給の問題から値段が高いことはどうしても起きてしまう。
パーティーに聖職者がいないなら聖水に頼るしかないので多少の商売っ気を出してもみんな買っていくのだ。
教会も教会で聖水の質を上げて値段も上げ、他で出してきた紛い物とちゃんと区別できるようにもしている。
非常に悩ましいところだ。
高いのは高いのだけれど手が届かないものでもない。
しかし弓矢に関しては聖水の効果も限定的となる。
矢筒一つ分の矢に聖水をかけてどうなる。
打ち切ってしまうと矢を回収しなきゃいけない。
胴体を狙うのは難しいので結局は頭を狙うことにもなる。
背骨に矢を当てろってのも酷な話だろう。
だから弓矢では厳しいと言わざるを得ない。
「しょうがないとはいえ、あくどい商売だよな」
効果が弱いものは持続時間も短くてすぐに効果が切れてしまう。
効果が強くて長く持つものもあるけど高いし、おそらく一本じゃ持たない。
魔物の数多めのダンジョンでは時間なんかあっという間に過ぎていく。
広くてフィールド型のダンジョンなら尚更である。
ボスであるデュラハンも探して、デュラハンにも神聖力が必要なことを考えると出費は増えていく。
これが神聖力の宿っている武器でもあったのなら良かったのに。
いわゆる聖遺物とか言われる類の武器のことである。
そんなもの手元にあるわけないし、そこらにあるものでもない。
2人きりで攻略しなきゃいけないので聖職者を雇って連れていくこともできない。
「どうする?」
「……一旦帰ろう」
もっとダンジョンに関する情報を集めて効率的な方法を考える必要がある。
とても2人で攻略するダンジョンじゃない。
ボス部屋があるならスケルトン一切無視でボス部屋に駆け込んでしまう方法もあるけれど毎回姿の異なるデュラハンを広いダンジョンの中で探し回るのは骨が折れる。
スケルトンを無視して探し回ってデュラハンを見つけても最終的に追いかけてきたスケルトンに囲まれることになる。
ひとまず宿に帰って情報の整理をして、今後の対策を考える。
「リュード、見て!」
「……どこからそんなの出してきた?」
もっと早くからダンジョンのことを調べて聖水でも買っておけばよかった。
移動の早さを重視して失敗した。
反省しているとラストがどこからかムチを取り出していた。
道中どこかで買ったものではない。
ある程度使い込んでいることも見受けられるし元々持っていたもののようだ。
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