閑話・隣に立つと決めた日4

「み、水! 水、持ってくるね!」


 妙にメリハリがきいたというか、ギクシャクしたような動きでルフォンは水を取りに部屋を出ていった。


 程なくして部屋にきたのはルフォンではなく医者の男性だった。


「はい、水」


 水がなみなみと注がれたコップを受け取って一気に飲み干す。

 体に染み渡るようで水が美味しい。


 もう1杯水を入れてもらってそれも半分ほど一息に飲む。


「ぷはぁ……生き返るぅ!」


「ははっ、まだ様子見が必要だけどその分なら大丈夫そうだね」


 リュードの様子を見て医者が笑う。酒を飲んだおっさんのような、子供らしくない態度が面白かった。


「あの、ルフォンは?」


 少し落ち着いて医者の後ろを確認してみたりしたけれどルフォンはいなかった。


 水を頼んだのはルフォンになのに、どうして医者の方が来たのだろうか。


「ルフォンちゃんね……ちょっと今は君の両親でも呼びに行ってもらっているよ」


 リュードの質問に答えにくそうな医者。


『なんだかね、いきなり、シューナリュード君の顔が見られなくなっちゃったの! すっごい胸がドキドキして、顔が熱くて、私、変な病気かな……』


 水を取りに来たルフォンが医者に言った。


 医者でなくともすぐにその病気が何なのか分かった。

 病気であって病気でない。


 その病気については医者は専門外であるし、何か変なアドバイスもできないと思ってルフォンを使いにやった。


 水をもっていかせて2人きりにするか悩んだがルフォンに考える時間をあげたくてリュードの両親を呼びに行ってもらうことにした。


 ヴェルデガーとメーリエッヒはルフォンの知らせを聞いて飛んできた。


「このバカ息子!」


 言葉とは裏腹にメーリエッヒの抱擁は優しい。

 怪我をしたリュードをいたわって力をぬきながらもギュッと抱きしめる。


「ごめんなさい」


 気丈そうに振舞っていたメーリエッヒだったが内心心配でたまらなかった。

 リュードも恥ずかしいやら申し訳なくてバツが悪いやらでどんな表情をしていいか分からない。


 ヴェルデガーも叱ってやろうと思っていたけれど元気そうなリュードの姿を見てそんな気も失せた。


「無事目を覚ましてくれ良かったよ」


 部屋にはお隣さん一家も来ていた。


「ありがとう、シューナリュード君」


「ありがとう、話は聞いたわ」


 ウォーケックとルーミオラの2人が頭を下げ、後ろに隠れていたルフォンも2人にあわせて頭を下げた。


「そんな、頭をあげてください……」


 大の大人に頭を下げられてどうしたらよいか分からない。


「いや、君は妻とルフォンの命の恩人だ。私たち人狼族は受けた恩を忘れず必ず返す。


 何にか望みがあったらいつでも言ってくれ。

 いつでも君の力になると誓おう」


「私と娘も同じよ」


「分かりました。ありがとうございます」


 変にいいですとかいうとめんどくさそうなので素直に受け入れておく。


「まあうちの娘をお嫁さんに欲しかったら私は恩とかなしに賛成だから言ってね」


「お母さん!」


「ルーミオラ!」


 ウインクしながら言ったルーミオラの言葉に反応して2人の悲鳴のような声が重なる。


「ちゃんと本人の意思は尊重するわよ」


「そういうことじゃ……」


 リュードとルフォンの目が合う。

 ルフォンはすぐにルーミオラの後ろに隠れてしまいリュードは首をかしげる。


「ふふっ、本人の意思次第よ」


 この日以来お隣さんとの距離は縮まった。


 そして心情の変化があったルフォンはリュードについて回り、外にも積極的に出るようになった。


 ルフォンはリュードをリューちゃんと呼び、両親もなぜかリューと呼ぶようになっていったのである。


ーーーーー


お知らせ

こちらの作品現在書き直しで再投稿しております!

導入から物語に入るまで長かったかなと思ったので導入バッサリと削りました!



どこかのタイミングで導入だったところも入れたいと思いますがリュードの物語にさっさと入る形にしました。

あとは人称おかしかったところを三人称に直していったり表現も少しずつ修正してます。


カクヨムコン参戦してるのでよければお星様など入れて応援していただけると嬉しいです!

実は第10章ぐらいまで続きは考えてあるのでそちらで波に乗ればゴリゴリと書いていきたいと思うので是非ともよろしくお願いします!

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