第1話
『暖かな春の日差しに包まれて、桜木高校のシンボルの桜も満開になった今日、この良い日に、私たち、第107期生は、桜木高校の門をくぐりました。
真新しい制服を身にまとい、入学式会場に来るまでの桜並木を歩いている時、私たちは不安もありながらもこの桜木高校に入れた実感が得られ、期待と希望で胸がいっぱいでした。
これから桜木高校で過ごす三年間は校訓にある様に、己を磨く三年間にしたいと思います。百年の人生の内で三年間しか無いこの貴重な高校で過ごす時間の中で、きっと壁にぶつかることも、前への進み方が分からなくなることもあると思いますが、そんな時、立ち止まるのではなく、これから高校生活を共にする友と共に、壁を乗り越え、手を取り合い、時には先生方、先輩方、保護者の皆様の力を借りながらも、一歩ずつ、少しでもより良い自分になれるよう、前へ進めるように努力してまいります。
私たち新入生一同は、桜木高校の生徒としての自覚、誇りを持ち、家族や先生がた、そして今日まで桜木高校の歴史と伝統を築き、守ってこられた先輩方に恥じることのないよう、一つ一つの行動に責任を持ち、自立した高校生活を送れるよう心がけていきたいと思います。
どうぞよろしくお願い申し上げます。
本日はありがとうございました。
新入生代表 早川いをり』
入学式が終わり、それぞれ先生に連れられて各々の教室に戻る。
芸能科一年ハ組
教室に戻り、全員が席についたのを確認してから、先生が口を開いた。
「皆さん、初めまして。今年度皆さんの担任になる結川みやこと申します。
『こ』がついた名前をしていますが、まだ26歳です。この中に知っている人もいるかもしれませんが、3年前までアイドルをしていました。
今年で先生2年目ですが、まだまだペーペーなので、至らないところもたくさんあると思いますが、頼れる先生になれるようにがんばります。
担当科目は、社会です。よろしくね♪」
生徒全員『よろしくお願いします。』
「はい、それじゃ、綾川さんから出席番号順に自己紹介をしてもらえるかな?」
かなは、先生から指名されてから、息を吐いて気合を入れる。
(私は、アイドルになりにきたんだから、明るく、笑顔で!)
「はい!綾川かなです、演技をすることと、歌うことが好きです。
私の夢はトップアイドルになることです!
みんなと仲良くしたいです!
これから一年、よろしくお願いします♪」
そう言い終わって席についたかなは、みんなからの拍手が聞こえて、誰にも見えない様に胸を撫で下ろした。
「はい、ありがとう。じゃぁ、次は……。」
緊張が解けて、安心しきったかなは、自分よりも出席番号が4つ遅い人の自己紹介からしか耳に入らなかった。
みんなの自己紹介や、学校からの配布物の配布も終わり、先生が帰りの挨拶をする。
「はい、皆さん、入学式お疲れ様でした。これから、楽しい高校生活を送っていきましょうね。それでは、突然ですが、芸能科クラスの担任として私が一番最初に皆さんに教えるのは、挨拶です。
これから芸能の世界に進むのであれば、挨拶は基本中の基本。
いくら、人当たりがよかろうが悪かろうが、インフルエンサーだろうがなんだろうが、挨拶のできない人はお仕事がもらえないと思ってください。
それでは皆さん、元気よく!お疲れ様でした!」
先生の声に、生徒が続く。
「お疲れ様でした!」
「結構!気をつけて帰ってくださいね。」
「はい!」
そう言い終わると、各々が自分のタイミングで教室を出た。
なんだか入学式は予想以上に忙しなかった。
夢のステージ! 波須野 璉 @sakazuchi
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。夢のステージ!の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます