第34話 チェックイン
14時に予定通りホテルにチェックインをして、南国リゾートっぽいインテリアの部屋を見て回る。
先週出張で泊まった部屋に比べると倍くらい広さはあるように見えたけど、スイートとかじゃないので、そこまで広くもない。でも居心地はよさそうな部屋だった。
「真依、探検終わった?」
葵さんは2つあるベッドの片方に腰を掛けていて、手招きをしてくる。
隣に座ると葵さんの体が寄せられる。
「葵さんは見ないんですか?」
「それよりも真依に触れたいかな」
口元を緩めた葵さんの顔が近づいてきて、そのままキスを受け取る。触れられなかったことのストレスを埋めるように私からもキスを求めた。
「葵さん、今はこれ以上は駄目ですよ」
葵さんの手が上着の下に潜り込んで来て、ストップを掛ける。
「久々だし、真依に触れたくて仕方ないんだけど」
掠れた声で甘く囁かれて流されそうになったけど、辛うじて拒否を出す。
「15時からエステの予約をしてるから、今は駄目です。いちゃいちゃしたいからさっさと済ませよう、って時間決めたの葵さんじゃないですか」
ホテルを選ぶ時に、ちょっと贅沢にエステつきのプランを2人で選んだ。でも、オフを満喫しようとしているから素肌に跡をつけないなんて無理だと主張したのは葵さんで、チェックインしてすぐの時間を予約している。
「そうした記憶はあるけど、それはそれ。今、真依に触れたいのは我慢できない」
「私だって葵さんに触れたいです。でも、葵さんは今週ずっと忙しかったので、まずはリフレッシュして元気を取り戻してからでもいいんじゃないですか?」
「真依、最近躱し方上手くなってない?」
「そんなことないです。私だって、葵さんに早く触れたいです」
「じゃあ時間まで触るだけはいい?」
その言葉は拒否できなくて、エステの時間になるまで私は葵さんの腕の中で過ごした。
別々の部屋でエステを受けた後、合流して併設されたスパに2人で向かう。
18時すぎと、夕食時の時間のせいか入浴している人もまばらで、無人の露天風呂に移動する。
石の露天風呂に胸までを浸すと、自然と深い息が出る。
「お湯に浸かると落ち着くよね」
葵さんも同じことを感じたらしい。肯きを返す。
「エステを受けてる間、ほとんど寝ちゃった。真依は?」
「初めは緊張しましたけど、途中から意識が曖昧になってましたね。でも、人に全身を触られるのって慣れてないから恥ずかしかったです」
自分でお金を出してエステに行こう、と思うほどに私は意識は高くなかったので、これが人生初のエステだった。
「いつもワタシが触ってるのに?」
「葵さんが触るのとは別です。触れられるって分かっているのと、無防備に相手に全部任せるは全然違います」
「真依って、自分が認識できないことには弱いよね」
「……そうですね。葵さんみたいに何でも好奇心でチャレンジできるタイプじゃないのは分かってます」
「ワタシは無謀な所あるから、真依のちょっと腰が重いくらいで釣り合いが取れてちょうどいいんじゃない?」
引っ張られればついて行くけど、引っ張られなければ行動できない性格なことは認識していた。
「葵さんに甘えてばかりじゃ駄目だなって思ってるんです」
「真依が可愛すぎる」
葵さんの腕がお湯の中で伸びてくる。
「葵さんっ、ここ公衆の場ですっ」
「もう暗くなり始めてるし、中もほとんど人がいなかったから大丈夫、大丈夫。湯気でこっちから中の様子もほとんど見えないから向こうからも見えないでしょ?」
「こっちに誰か来るかもしれないじゃないですか」
「そんなこと言ってたら真依に触れられないから聞かない」
葵さんは聞く耳は持ってくれなくて、葵さんに腰を抱かれたままで唇を奪われる。そのまま濡れた首筋に唇が落ちて、音を立てて葵さんが吸い付く。
私の体はそれだけで葵さんを期待してしまう。
「ちょっとだけですからね」
人が来たらという迷いはあったものの、淋しさを早く埋めてしまいたくて、結局葵さんを止められなかった。
「うん。ちょっとだけにするから」
笑顔の葵さんは、言葉通りにしてくれるはずはなかった。
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