第25話 買い物

ほぼ毎週末葵さんはうちに泊まりにくるようになって、部屋でいちゃいちゃ過ごす日もあれば、出かけることもある。


ずっといちゃいちゃしてるわけじゃない……いや、葵さんが持ち帰り仕事をしていない時以外はしてるかな。葵さんにおいでって言われると、全部放り出して傍に行ってしまう。


あと、葵さんとするのもかなり慣れた、とは思う。


今思えば初めの方の葵さんは、私にかなり気を遣ってくれていて、手加減してくれていた。


葵さんの教育のお陰か、最近では私からも葵さんに触れられるようになって、葵さんに気持ちいいとも言ってもらってる。


葵さんの照れの混ざった笑顔は、私だけに見せてくれるものなので、独占してる感が半端ない。


「大好きです、葵さん」


そんな言葉を出せるくらいには、私は葵さんを掛け替えのないものだと認識できるようになっていた。





その日はいつものように金曜日の夜から葵さんは泊まりにきていて、翌日の昼から近くのショッピングモールに向かう。


葵さんのお泊まり用の服をもう少し揃えようが今日の目的だった。


部屋着をファストファッションの店で買った後、モール内を散策している内にランジェリーショップに目が留まって、2人で入っていた。


下着もいるよね、と葵さんに手を引かれるまま店内に入る。


「真依、こういうのどう?」


葵さんが勧めて来たものを見て溜息を吐く。


それはほとんど紐に近くて、申し訳程度に残っている布地もレース地が多くかなり透けている。勝負下着と言う部類に入りそうだったけど、私が着けられるかと言えばそうじゃない。


「無理です」


昨夜も葵さんとして、隠す所なんかないくらいに全身を知り合えているのは事実だけど、私にとって挑戦的な下着を受け入れられるかと言えばそうじゃない。


「私が買ってプレゼントしてもつけてくれない?」


「絶対着ません」


「残念。真依がこれで誘ってくれたら萌えるのに」


「エロすぎたら別れますからね」


そんな釘を刺してみたりしながら、もうちょっと下着には力を入れようとは誓う。


葵さんが提示した下着は流石にノーだけど、恋人が気にするなら頑張りたいところだった。


「はぁい」


「今日は葵さんのものを買いに来たんですよ?」


「じゃあ、真依はどういうのがいい?」


友人同士なら何気ない参考レベルの問いでも、恋人という関係であれば意味が全く違う。


葵さんは背が高くて細身だけれど、女性らしい曲線美も持っている。下着で妖艶さを出す方向に持っていけなくもなくて、ちょっと危険だと首を振る。


「葵さんは何もつけないのが、一番魅力的です」


「真依ってほんと天然だよね」


「なんで、ですか!?」


「天然でエロいなって。今日は帰ろうと思っていたけど、泊まろうかな、やっぱり」


「泊まってもいいですけど、エロくないです」


葵さんにまた笑われて、ほっぺたを膨らませると、葵さんが頬に触れるだけのキスが飛んで来る。


「葵さんっっ!」


「大丈夫。誰も見てないから」


「エッチなのは葵さんじゃないですか」


「好きな相手が傍にいるのに、伝えない方がおかしくない?」


前向きな葵さんの性格は大好きだったし、やっぱりストレートに求められることを嬉しいと感じてしまうようになってしまった。


付き合い初めてから、私は一層葵さんが好きになって、葵さん以外でこんなに居心地がいい人は現れないだろうとも感じ始めている。


私を甘やかしてくれるだけではなくて、考えが違うものは意見をくれる、理解し合って行こうと言ってくれる葵さんが好きだった。


結局2人で葵さんの下着を何着かセットで選んで店を出る。


「休みだし、親子連れ多いね」


広いショッピングモールの通りには、子供の声が木霊している。1人で来ると用事だけをさっと済ませてしまうので、周囲を気にすることもなかったけど、休日ということもあって家族連れが特に多かった。


「子供が遊べる場所もありますし、いろいろ纏まってるから買い物しやすいんじゃないですか?」


「うん。そうだね」


葵さんの返事は素っ気なくて、それ以上葵さんとの会話が続かなくて、流れのまま出入り口に向かう。


目的も果たしたしとショッピングモールを出て、徒歩で家に帰った。

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