思考

@GMm

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2020


 中学三年生になり、新学期が始まったばかりのことだった。馬鹿だった。頭が悪かった。このころから自分の進路や人生について考え始めた。遅かった……

 こう思ったのはいじめが原因だった。周りはからかってただけだったと思う。しかし、やられた自分自身は笑って誤魔化した。バカにされていい気はしなかった。

「こいつらとは同じ高校に行きたくない。茨の道を進もう。」

と思った。自分を悪く言う奴らはみんな馬鹿だったから自分は県内でもレベルの高い進学校に進学しようと決めた。しかし、最初は当然上手くいかなかった。いわゆる一発逆転だったからだ。残りの一年間だけで三年分の勉強をするためかなりしんどかった。人に勉強のことはなかなか聞きづらい環境、周りに笑われても、助け舟を出す人もいなくても、一人で戦った……

 一人で戦い続けた結果見事一発逆転に成功した。自分は相当嬉しかった。心の底から喜んだ。周りの先生、クラスの人たち、いじめてきたやつでさえも、すごいと言ってくれた。結果を出して認められたのだ。しかし、認められると同時に恐怖心が湧いてきたのだ。自分の性格、内面を見てはもらえず、結果といった外面の上辺だけの取り柄を見られただけだった。自分といった一人の人間としてでは無く、やり遂げだ成果だけを認められた。勉強ができて、功績のあるやつとわかった途端に今まで罵声を浴びせてきた奴ら、苦しめてきた奴が手のひらを返してくるかのように近寄ってきた。この時ふと思い返した。自分は勉強が分からない時にめんどくさそうに対応する教師にわからないところを質問した。だるそうに教えてくれるクラスの人にもわからないところを聞いた。この時自分は求めた答えだけを聞くと、

「ありがとう」

と言った。ここに感謝の気持ちは一切なかった。

「そうか、自分は利益を求めるために人を使っていたのか。利用してただけだったのか」

と思った。この瞬間から人の見方が変わった。どんな人にも様々な感情が無くなってしまった。感謝、喜び、怒り、悲しみ……いつしか冷めきった人間にかわってしまった。だから自分は他人に対してこう思うようになった。

「人は自分が生きるための道具でしかない。」

と……

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