第45話 1日目のリザルト

 夜も更け薄く色づいてきた空をダイナミックに吹っ飛ぶこと数回。

 距離的には6,7kmほど離れただろう。


 ゴブリンの走破力はわからないけれど、昨日の撤退戦で連中を撒いてから防衛陣地で再び合間見えるまでの結構な時間を考えると足が速い方ではないはずだ。

 それだけ時間を稼げた人間の足でも森の中では一日に10〜15kmも移動できれば良い方らしいので、それより大きく劣るゴブリン相手ならこれだけ離れれば半日は安全だと思う。



「ふぅー……いやーがんばった! 私頑張ったよ!」


 生まれて初めて戦闘した日の翌日に数万の敵との消耗戦とかありえなくない!?


 バランス調整を明らかに間違えたバトルイベントにやや不満を感じるけれど、しかし実際のところそんな戦闘ピヨピヨベイビーなヒヨコちゃんでも多少の危険があった程度で切り抜けられてしまっている。

 チートがすぎるクリッカースキルにおいては丁度いいどころか調整がヌルいすらあり得てしまうので余計なことは言わないでおく。

 運営神様がヘソ曲げてもっと凶悪バランスにされても困るしね!!



 とにもかくにも今日の戦果確認だ。


 2時間ちょいのアタックの結果、得られた存在因子リソースは約3300万だった。

 個体差はあるけどゴブリン1匹は平均3000存在因子リソースに収束する。

 ちなみに【破壊の指先デストロイ・フィンガー】を使わないで倒すと30存在因子リソースまで急落するので、倒した敵の素材を得られない分だけ成長率が凄まじいのだ。


 上位個体の存在因子リソースは流石にもっと多いだろうけれど、今日はほぼ雑魚個体のみだったから単純計算して1万1千匹のゴブリンを抹殺したことになる。


 うぅーん、たった1日でキルカウントが凄まじいことに。

 人類最弱から一気に歴戦の猛者になってしまったのでは???


 まぁ実際はスキル頼りで身体能力に振り回されているから、ホンモノの実力者と戦うとかはまだ無理だろうけれどね。

 でも固定砲台として通用する限りは無敵と言えるから、明日も大きく戦術を変える必要はない…と思いたい。


 もし回避の必要がある攻撃をする敵が出てくると一気に不利になってしまうから、そこはしっかり見極めないと。



 ま、反省会もほどほどにして。

 それではお楽しみの強化タイムだよ!!!


 得られた存在因子リソースを振り分けてポチポチポチっとな!


 そして出来上がった新宮子ちゃんがこちら!



――――――――


【ステータス】

名前 【神埼宮子かんざきみやこ

種族 【人間ヒューマン/(遊戯者プレイヤー)】

年齢 【17歳】

    

称号 【世界の歪みに挑みし者ワールド・クリッカー


能力値

総合LV365 (+32)

HP   294913/354825 (+76800)

MP   523/3485.4 (+662.9)

CP   450/585.5 (+135.5)

筋力  2164 (+185)

魔力  1250 (+195)

防御  4432 (+261.3)

精神  2101 (+314)

器用  1546 (+71)

敏捷  876 (+48.3)

幸運  711 (+115)

存在因子リソース獲得+5.5%(+1.5)

ATEF 389620 (+88872)

CDMG  324600 (+74058.6)


保有存在因子

870134.6 (-59413691.4)

総獲得存在因子

198799802.1 (+37623064.9)

所持金

0


職業

【クリックマスターLV2】

【無職LV50】【見習い冒険者LV60】【見習い狩人LV50】【見習い商人LV50】(15UP)【見習い魔術師LV50】(5UP)

【見習い僧侶LV50】(10UP)【見習いシーフLV20】【見習い鑑定師LV15】【見習い盾使いLV10】【見習い騎士LV4】(1up)


特殊職業

【料理人LV1】(1UP)【伐採師LV5】




『スキル』

破壊の指先デストロイ・フィンガーLV2】【異世界言語翻訳LV1】


【チェインスキル】

閃光穿ピアッシング・レイ



『職業スキル』

【モラトリアムLV2】【自己研鑽LV2】【初級植物知識+】『装備イクイップメント』【狩人の直感LV3】【存在因子リソース保管術LV2】

【ブラック耐性LV1】new【トーチライト】【クリーン】【フリント】【モイスチャー】【魔力操作LV3】(1up)

【インスタンスマジック】【魔術魂基マジック・デザイア】【多重詠唱マルチキャストLV1】new【ヒール】【アンチドーテ】

【ヒーリングオーラLV1】new【回避の心得LV3】(2up)【鑑定眼】【簡易鑑定】【隠密LV1】

【守護の盾LV3】【騎士の誓いLV1】new【調理LV1】new【自然特攻LV7】


『インスタンススキル』

『飛斬光』『ファイアーボール』『ロックシェード』『エアスラスト』『ライトオブジェクト』new『火精の輪舞曲フレイム・ロンド



『加護スキル』

創造クリエイト



『アップグレード』

【親が買ってきた下着】【快適な冒険のための生活魔法 上】【武器屋の助言】【森を畏れる心】【狩りの極意】new【商人の嗅覚を鍛える特製鼻薬】【鑑定メガネ】new

【ギリースーツ手作りキット】【10歳のための職業一覧】【属性魔術の使い方 初級編】【魔術師の心得】new【祈りの聖典】【自己犠牲の精神】new



――――――――


 森林横断弾丸ツアー後の強化ほど『能力値』に劇的な変化はなく、今回のメインは商人、魔術師、僧侶の各職業をLV50にしたことで得られた新スキルだ。



 【見習い商人】LV50に上げると『アップグレード』として【24時間戦う根性】が出た。

 これを取ると『職業スキル』である【ブラック耐性LV1】が得られる……見習い時代からブラックなのか、それでいいのか商人よ。


 内容は眠気や疲労、その他行動を阻害する影響全般をスキルレベル×10%軽減できるスーパースキルなのだけど……なんとかとブラックは紙一重だなぁ……。

 もしこれを完全に極めてしまった時、私は一体どうなってしまうのだろうか……。



 【見習い魔術師】LV50で手に入ったのは『アップグレード』の【魔術師の心得】で、これは【多重詠唱マルチキャストLV1】という『職業スキル』を取得できる。

 効果はまぁ予想通り魔術をスキルレベル分だけ同時に発動できるというもの。


 魔術の同時発動は以前から出来ていたけれど、結構複雑な脳の使い方をするため集中力が欠けると不発したりするので安定して追加で発動できるなら非常時には助かるだろう。




 【見習い僧侶】LV50では『職業スキル』の【ヒーリングオーラLV1】が手に入った。

 これはありがたいパッシブ回復スキルで、毎秒HPをスキルレベル×0.01%回復してくれる。


 効果量は地味に見えるけれど、1万秒=約2.8時間でHPが自然に全快すると思えば強力であることがわかる。

 もしスキルが10LVまで成長すれば16分で瀕死から完全回復できちゃうのだ。人間やめてるね。



 どれもこの状況ではありがたいスキルばかりでホクホクだよ。

 できればステータスの底上げもしたかったけれど、現時点でもゴブリン相手にはオーバースペック気味なので今はできることの幅を広げることが正解なはず。


 ついでにちょっと余った存在因子リソースで、【狩人の直感】で補足した対象を追跡できるマーカー的な【狩りの極意】、鑑定の消費MPを軽減する【鑑定メガネ】、仲間のダメージを肩代わりできる【自己犠牲の精神】も取得しておいた。


 【自己犠牲の精神】は街からの増援と合流した時に使えそうだけど、下手に使うと死にそうだから使い所は難しそうだ。

 硬い私が攻撃を受けるなら軽微でも、普通の中級冒険者じゃ防御が薄すぎて肩代わりするHPがマッハで飛んでいく気がする。

 これは飽くまで万が一に備えてのセーフティーネットだ。



 うじゃうじゃいるゴブリンのお陰で結構な存在因子リソースが手に入ったけれど、同時に強化に合わせて消費存在因子リソースも増加してきているので、今後は慎重にレベルアップさせていきたい。

 まぁ切り札の抱え落ちほど間抜けなことはないから、できる限りの強化はするけどね!



 明日以降の方針として、当面は今日と同じように雑魚を減らしつつ存在因子リソースを稼いで、できれば強い敵も削っていきたい。

 移動しながら攻める方法は少し考えたから上手くいくといいな。


 そして万が一勝てない敵が出たら【狩りの極意】でマーキングして即時撤退。


 スタンピードの中核となるボスモンスターとの決戦は早くても3日目以降にして安全マージンを取っていこう。

 よし、これで完璧だね。



「ふわぁ……。とりあえず寝ようかな……」


 戦闘中もハーギモースの葉をもしゃもしゃしていたのでお腹はわりと減っていない。

 反省会を終えて気が抜けた今の私を支配するのは圧倒的な眠気だ。



 ただゴブリン集団を大きく引き離したとはいえ、やはり無防備に寝るのは躊躇われるのでセーフティーエリアを作りたいと思います。

 後々上位存在からの保護があったと分かったものの、改めて初日の夜に何もせず寝込んだ事には背筋がブルっとなりますよ。


 さて、それで今回はどうするかというと。


「『アースコントロール』」


 まず即席の地属性魔術で地面を4mほど掘り返します。


「『創造クリエイト』ウォール」


 そして掘った穴の中に3m四方の天井が無い箱(強化石製)を埋めます。


「そぉい!」


 ぽすっとその中に着地したら。


「むむむむむ…『創造クリエイト』! ウォール!」


 集中してイメージを固め、天井を生成し結合、天井の一部には空気穴を作りそこから6m上まで煙突を伸ばしました。


「これで安全! たぶん!」


 なんということでしょう。

 なんの変哲もない普通の森の中に、5畳ほどの秘密基地が生まれました。



 快適空間とはいかないけれど、少なくともこれで寝てる間に死ぬことはないでしょ。

 上位個体がいなかったとはいえ、雑魚ゴブリンじゃ何万匹群がっても壊せなかった安心と信頼の素材だしね。


 ぐっすり寝て英気とMPを養って、明日はもっとゴブリンをぷちっとしちゃうぞ!!


「おやすみ!!」


 さすがに疲労の限界だったのか、私の意識は一瞬で落ちたのだった。

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