第27話 ご飯にする?それともお風呂?

 無事に大怪我をしていたアイシアさんを救い、ぱあっと笑顔が咲いた3人。

 いいねいいね、私はこういう和気あいあいとした人たちを見て和むのが大好きなんだ。



「皆さんは戦闘後でお疲れでしょうし、ここで休んでてください。私はちょっと森でお肉を取ってきますね」


 この人達にもっと笑顔になってもらうため、私はご飯の準備をしよう。

 美味しいものを食べると幸せになれるからね!


 あときっとこの人達は依頼に出ていたなら塩とか保存の効く調味料を持っているはず。

 香草になるヒエラ草は持ってるけど私は味付けが欲しいのだ。もう葉っぱをそのままの味でムシャムシャするのは飽きた! 下心? いいえ、相手の心配りを想定しているだけです。

 


「それなら俺たちが行こう。あれだけの大魔術に治癒魔術だ。お前も相当消耗しているだろう」


「私は狩り得意よ! この弓で狩ってきてあげるわ!」


 まぁーそうなるよね。この人たちいい人そうだし。

 でもMPを結構削られたとはいえまだ余裕はあるし、毎分着々と回復しているので問題ないのだ。


「さっきのはまだ3,4回撃てるので大丈夫ですよ。MP量には自信があるんです」


 実際MPは最大値2822で今1400ほどだ。『火精の輪舞曲フレイム・ロンド』は約300MP。私が綿密にコントロールして無駄が少ないせいか派手な割に意外と安上がりなのだ。


「し、しかし獲物を持ち帰るにも人手が……」


 粘るねー。至れり尽くせりで申し訳ない気持ちはわかるけど、ソロの方が効率がいいから却下だ。


「私、こう見えて筋力も高いんですよ。おっきな熊とかでも2、3匹は一度に持てます」


 ついでのように色々と上げているので筋力も1979。なんと元々の私約1000人分だ……0には何を掛けても0だからあんまり強そうに見えないぞ? 筋力2はあったけどさ。


「なっ……ミヤコは【魔術師】じゃないのか?」


「うーん。魔術は里でもそれなりでしたが、一番高い数値は防御なのでちょっと特殊なんですよね」


 嘘はいってない。元の世界では魔術なんて誰も使えなかったからね!

 防御値は脅威の4171。今の私は歩く要塞だ。現時点で唯一スキルによるバフが掛かっているため、HPMPを除く他の最大『能力値』のダブルスコアになっている。スキルのちからってすげー。


「本当なのか……!? 筋力、魔力、防御のバランスがいいといえば【騎士】なんかが有名だが、それでも魔術は相当な修練を経てやっと並の魔術師と並ぶという……。

 ミヤコはどれほどの修行を重ねたのか、俺にはわからないが戦士として尊敬する」


 グリンペディアから色々聞けるね。実際森の移動の間に私は【見習い騎士】を取得している。バランス的にもその通りの上昇値だったはず。

 この人、脳筋に見えて結構インテリ派なのかも。ぶっきらぼうな話し方だけど、決して粗野ではないしね。


 あと私はクリッカースキルというチートで強くなっているので、ちょっと申し訳ない。まぁ昨日は文字通り死にものぐるいでクリックを頑張ったから、努力してないわけじゃないんだけども。



「それにまだ周辺にゴブリンがいるかもしれませんし、ここに作る簡易拠点を守っていてください」


 何を言ってもきっと付いてこようとするだろうから、ここは別の目的を与えて意識を逸らす!


「簡易拠点……?」



 そう。私が川でしたかったメインイベント、お風呂である! やっぱり【クリーン】でキレイにするのはまた違うんだよなぁ。一応さっぱりはするんだけどね。


 意識を集中させ、河原の真ん中に大人一人がゆったり入れるサイズのバスタブをイメージ。

 ついでだし石床と、女性陣用に壁も作っちゃおう。


「『創造クリエイト』、バスルーム!」


 イメージの型にMPと魔力を流し込み、物質として変容させる。

 なんとなく浮かんだ『創造クリエイト』という詠唱の影響なのか、想定していたより遥かに消費が少なかった。


 脳裏で【創造神フィリアの加護】がふんすふんすと息巻いてるイメージがよぎったのは、もしかしてこの加護をくれた創造神がアピールしてるのかな?

 私が主に感謝の祈りを捧げているのは【破壊の指先デストロイ・フィンガー】をくれたであろう【破壊神】に対してなので、それで羨ましかったとか?


 やっぱり見られてるのかなー。アシストはありがたいから遠慮なく享受するけどさ。

 『創造クリエイト』はとても便利そうだ。私の生配信視聴料として存分に使わせていただこう。



「……これは……」


 言葉を失うグリンさん。いきなり大自然の中に人工物が出てきたらそりゃあ驚くよね。


「ヒュー! やるねぇミヤコ! さすが大魔術師様だ!」


 ハンスさんからは大魔術師認定されてしまった。今の私では上には上がいると思うので、早々にその肩書に見合うように強くならなきゃね。私は期待には応える女なのだ。


「きゃぁ~! 急に家が生えたわよ!! これもミヤコの魔術なの!?」


 ケイさんは相変わらず楽しそうだ。

 だがここからが本番、喜び疲れしても知らないぞ!



「あれはお風呂です。中に浴槽があってお湯を入れておくので、私が狩りに行ってる間に順番に入っておいてくださいね」



 ガタッ!


 全員に衝撃が走る。グリンさんとケイさんは目をまん丸くしているね。ふははは、そうかそうか、お風呂好きか。


「まさか……こんな場所で風呂だなどとは……」


「ミヤコ、お前すげぇな……いや、やってることっつーか考えがよ……」


「お風呂入れるの!? やったー!! 私一番よ!!」



 ハードめの撤退戦をしたであろう4人は結構汚れているし汗もかいているだろう。

 お風呂でさっぱりリフレッシュできれば、その疲れも癒えるはずだ。


「あっ、その前に【クリーン】!」


 でも先に【クリーン】で見るからに汚い汚れは落としておく。

 私不在ではお湯が汚れてくだろうからね。少しでもキレイに使っておくれ。



「あ、ああ……なんというか、もう言葉が出てこないな……」


 その通り。チートスキルの前に言葉はいらないのだ!



「じゃあ、行ってきますね。

 まだ敵が来るかもしれないので、警戒だけはお願いします」



 浴槽にお湯を張って、ちょっとぶりのソロ冒険タイムだよ!

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