第22話 旅立ち
明日になればこの森ともお別れだ。まだ無事に森を抜けられるとは限らないけど。まぁ気分的には最後の夜だよ、運が良ければその通りになるしね!
というわけで、最後の夜なのだ。そう、夜なのだ。
「どうしよっかなー!」
全てのタスクをクリアしたので、あとはもう寝るだけ。
何度も繰り返すが、夜、寝るだけ。
異世界モノに限らず、ファンタジー作品を嗜むならほぼ知っているであろう知識。
それが"野営は大変なんだよ"というものだ。いや、現実でもキャンプとかするならそれなりに大変だけどね。
つまるところ、安全が確保されていない環境で寝るというのは非常に危険なのだ。
今日一日、この初期エリアは特に危険はなかった。小虫なんかの生物も、毒を持ってたり人を食い散らかすような凶悪な連中ではなかったしね。
でも、だからといって夜間の間ずっと安全という保証はない。夜にだけ活性化するモンスターがいる可能性は充分ある。
パーティを組んでいれば交代で夜番をしたり、あるいは罠作成スキルができれば鳴子を仕掛けたり警戒ができたけれど……。
残念ながら、ソロの私が持っている使えそうなものは意識がないと意味がない索敵スキルだけだった。
対策を全く考えてなかった訳ではないけれど、何も思いつかなかったからノーガードで寝るつもりでいた。
でもいざとなったらやっぱり怖いのだ。木の上で寝る? まず木に登れないんですが?
徹夜してクリックしまくるという手もある。ヒエラ草とハーギモースの葉のお陰か心身ともにほとんど疲れていないし一晩くらいなら無理できると思う。
でも寝たいなぁ……。私は寝ることが結構好きなんだよね。休日は13時間ぐっすりと寝たりもする。
それにこの幸せな気分のまま今日という日をいい思い出にしたいのだ。それが徹夜では美談としてはなんとも締まらない。しょうもないオチはいらないよ!
かといって選択肢はほとんど無いしなぁ……。安全を信じてそのまま眠る……さすがにこわいな……。
……よし。力技で解決しよう。私のなにかのスイッチが入った音がした。
すっと立ち上がり、【トーチライト】を使いながら近くの木を……おらぁ!!
ふぅ……15分ほどちょっと運動しちゃったよ。食後の軽い運動だね、うんうん。
なぜーか
――――――――
【見習い盾使い】
盾を構え続ける人生を選んだ者の職。
守るべきもののため、その身を試練へと投げ出すのだ。
LVUPボーナス HP+4670 筋力+124 防御+256
――――――――
今までのボーナス値は一体なんだったんだってくらい上がる。ついに本格的なインフレ来たな。
消費
これを……ポチっ!
――――――――
『職業修練』 消費
【無職LV50】 11358.6
【見習い冒険者LV40】 10205.4
【見習い狩人LV30】 29673.5
【見習い商人LV10】 7679.2
【見習い魔術師LV10】 15737.1
【見習い僧侶LV10】 34910.5
【見習いシーフLV10】 80702.4
【見習い鑑定師LV1】 176400
【見習い盾使いLV1】↑ 138万4千
【見習い騎士LV0】 1284万9千
【???】 1億1781万
――――――――
Fooooooo↑
やっちまったぜ! しかもついに億がお出ましだ!
すごい世界に来てしまったものだ。初期の『能力値』とかほんとゴミみたいなものになっちゃったな。
でもまだ安心できないのでもうちょっと運動しておこう。HAHAHA。
ちなみに何がとは言わないけれどさっきと同じ量の運動は15分から8分に短縮して、途中でさらに短くなったよ。あと【自然特攻】がLV3に上がってた。なんでだろうねぇ~。みやこわかんなーい。
――――――――
【守護の盾LV1】
背負ったものを守り抜くという誓いの体現。
常時防御を(防御×S.LV×0.1)上昇させる。
――――――――
【見習い盾使い】のスキルは防御系ではあったけれどまだちょっと恩恵が少ないね。
さて……。
――――――――
『職業修練』 消費
【無職LV50】 11358.6
【見習い冒険者LV40】 10205.4
【見習い狩人LV30】 29673.5
【見習い商人LV10】 7679.2
【見習い魔術師LV10】 15737.1
【見習い僧侶LV10】 34910.5
【見習いシーフLV10】 80702.4
【見習い鑑定師LV1】 176400
【見習い盾使いLV4】↑ 246万4千
【見習い騎士LV0】 1284万9千
【???】 1億1781万
――――――――
【自然特攻】は最終的にLV4になっていた。食後から合計で40分掛かってない運動なのにおかしいなぁ~。いやそもそもただの運動なら【自然特攻】が上がる事自体がおかしいんだけども。
いい感じの夜のまま寝たいという気持ちが先走ってついカッとなってやらかしたけど、後悔はない。運動前まで抱いていたロマンチックな気分もない。もうヤケになった自分しかいない。
そんな弾けた私の『能力値』はHPが19318(+18680)、筋力が617(+496)、防御が1205.6(+1133.6)。はぁ。
なんかノリではっちゃけたせいでイマイチ感動がない。まだ深夜にもなってないのに謎の深夜テンションだった。
もうこれで目覚めずに死んでたら諦めるよ。もうどうしようもない。これが今できる私の限界なんだ。
あまりのインフレ具合に爆上げされたテンションから一気に冷静になってむしろ虚無にまで落ち込み、もうどうにでもなーれという気分で枝を追加した焚き火の側で横になった。
おやすみ。
「ふわぁ……さむ……ほわぁ?」
真正面に緑。
右を見ても緑。ダメ押しの左も緑。
目が覚めるとそこは森でした。
……遠景は。
一発で目が覚めた。昨日までこの周囲は森だったはずだ。
しかし一晩寝て起きたら草原が広がっていた。しかもそこら中穴ぼこの荒野一歩手前。へんてこな光景に、思わず頭の悪い声も漏れるというもの。
火が消え炭の山になった焚き火跡に視線を落としながら考える。
あー……思い出してきた……。なるほど、なるほどね……。
「よし。
グッバイ森よ、まだ見ぬ森の民よ。
私は行くよ。罪を問われない新天地へね!
第一章 目覚め、森、異世界! ~人類最弱から成り上がれ!~ 完
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