第16話 戦闘民族化への兆し

 魔法という夢のスキルとスキル習得の新たな可能性を見出した私は、将来設計を大幅に上方習性させつつ確認の続きに戻った。



 スキルの次は『能力値』!

 ちょこちょこ目には入ってたけれど、落ち着いてゆっくりとその成長度合いを見てみよう。


「ステータス!」


――――――――


【ステータス】

名前 【神埼宮子かんざきみやこ

種族 【人間ヒューマン/(遊戯者プレイヤー)】

年齢 【17歳】

    

称号 【世界の歪みに挑みし者ワールド・クリッカー


能力値

総合LV58 (+24)

HP   247.5/268.4 (+37)

MP   6/23.6 (+17.6)

CP   3/13 (+8)

筋力  31 (+15.2)

魔力  14.2 (14.2)

防御  14 (+6)

精神  56 (+25)

器用  55.7 (+16.7)

敏捷  39.1 (+22.1)

幸運  22 (+4.8)

存在因子リソース獲得+0.4% (+0.2)

ATEF 60 (+20)

CDMG  52.8 (+37)



保有存在因子キープリソース

2560.1 (+2312.1)


総獲得存在因子レコードリソース

16215.7 (+14963.7)


所持金

0


職業

【無職LV30】【見習い冒険者LV16】【見習い狩人LV10】【見習い商人LV1】【見習い魔術師LV1】


『職業スキル』

【モラトリアムLV2】【初級植物知識】【狩人の直感LV2】up【存在因子リソース保管術LV1】【トーチライト】new【クリーン】new【フリント】new【モイスチャー】new【魔力操作LV1】new【インスタンスマジック】new


『アップグレード』

【親が買ってきた下着】【快適な冒険のための生活魔法 上】【森を畏れる心】new


――――――――


 すっごい強くなってる。スーパー宮子ちゃんとかただの雑魚だった。これが少年漫画的インフレってやつか、オラわくわくすっぞ!

 筋力が予想一般人数値の2倍。防御も魔力も人並みで、精神器用に至ってはトリプルスコアだ。敏捷も40に近くなり超早いのでは?

 試しに反復横跳びしてみたら経験したことのない軽快すぎる動きで頭が混乱してこけた。100m走なら10秒の壁を超えられそうな気すらする。元敏捷2の私は25秒の世界しか知らないので特に根拠はない。


 異世界に来てまだ3時間も経ってないのに、いつの間にか人類やめかけてる件について。やっぱりクリッカーのスキルはチート過ぎた。


 そして地味に大きな変化といえば、ついにCDMGが筋力の同数値ではなくなっていた。なんだこれ、計算式がわからない……。

 謎の影響で今まで筋力とイコールだったのが1.5倍くらいの威力に上がっている。何気にこれは嬉しい。

 これまでの経験からくる感覚的に、もはや単位として認識しているヒエラ草は恐らくHP180前後あるか、またはCDMG累計180相当のダメージで消滅すると見ている。

 試しに足元のヒエラ草を突いてみるが、やはり4クリックで消滅した。1ヒエラは180~200CDMG。多分間違ってない。


 そうなると、今の私の1クリックは『能力値』初期の私のクリックの26.4倍の威力ということになる。うん、非常に強力になっているね。

 5~600存在因子リソースをくれる美味しい低木くんは推定3500CDMG前後なので、こうしてつんつんすれば1分ちょいでほら消えた。これは凄まじい。

 今後の加速度的な成長に胸がときめく。


 そういえば【破壊の指先デストロイ・フィンガー】は『クリックによって減らしたHPを『存在因子リソース』に還元する。』という説明だけれど、CDMGとHPと存在因子リソースの相関性がよくわからないな。

 まだ鑑定を持ってないので獲物のHPを確認できてない、なのでCDMG分がそのままHPを削っているかはわからない。

 防御で減衰されてたら実際に削ったHPの量を把握できないし、そもそもHPがまるまる存在因子リソースに変換されてるかも不明だ。実際に入っている存在因子リソースとCDMGの数値を考えると結構減衰されてるか、HPの存在因子リソース変換率が悪いことになる。

 稼ぎの効率に関わるのでその辺がわからないとちょっともやもやする。鑑定スキルはやっぱり異世界には必須なんだよ。



 確認も終わったので、残った仕事に取り掛かる。そう、可食テストだ。クリックは呼吸。作業ですらない。

 腕に貼ってた可食テストの葉っぱは地面に落ちてた。悲しくて泣きかけた。

 15分は多分経過していたのにまた一からやり直すのも嫌だなぁ……と思ったけれど、ここで【クリーン】の生活魔法を習得していることを思い出した。私はなんてかしこいんだ。

 まず地面で無惨に横たわる葉っぱさんを拾い目立つほこりを払う。そしてスキルのアシストに従い【クリーン】の起動シーケンスをイメージする。

 もしMPが足りなかったらどうしようかとも思ったけれど、【魔力操作】の感覚上はいけると感じた。【インスタンスマジック】も同じ感覚でいけたので多分大丈夫だろう。


「【クリーン】!」

 これは詠唱が必要だった。無詠唱では魔力が解放される感じがしなかった。

 詠唱がいらない【インスタンスマジック】は多分固定の魔法というよりMPを捏ねるねんど遊びに近いような無形の技術なんじゃないかと思う。お遊びで唱えるのは恥ずかしすぎるので次からはやめよう。


 魔法の発動と共に、手に持った葉っぱさんの汁で一体化してしまい払っても落ちなかった土などの汚れがキレイになっていく。

 なって……うーん、一部分だけかぁ。MPが足りなかったのか、4分の1くらいをキレイにして魔法は終わってしまった。

 MPは0になっていたけれど、恐れていた魔力枯渇現象での気絶はなかった。

 まぁね、元々からして0だったしね。これが転生で身体をこの世界仕様に作り変えられてたらわかんないけれど、私はただの転移(多分)。元の世界に魔力が無かった以上、それを失っても影響はそんなにないんだろう。

 ただ、これからどんどんMPや魔力が増えていったらまた違うのかもしれない。一応注意し続けよう。


 キレイになった部分を千切り、今度は唇に乗せる。唇に乗せたらもうほとんど口に入ってる気がするけれど、これじゃ判定されないんだよね。変なところでケチなシステムだ。

 今度はロストさせず5分後にちゃんと食べられるよう、口元に意識を向けながらクリックをし続けた。



 つんつんしてる間、特に何もイベントは起こらず5分が経つ。【モラトリアム】はちゃんと数字をカウントすれば時計代わりになるね。

 5分で稼いだ存在因子リソースは合計4361.5。必死に突いて1だった最初の頃を思うと何とも言えない哀愁に包まれる。

 まぁ過去は過去だよ。今を楽しもう。


 さぁ、まずは先に葉っぱを試食しよう! わかるくらいの身体への異常はやはりなかったので、安心して味わえそうだ。

 ちょっとマナーが悪いけど唇からそのままお口の中へひょい!

 ああー、瑞々しい自然の味がするよ! 疲れた身体に潤いが染み渡っていく。

 そしてティロンという電子音。


――――――――


【ハーギモースの葉】


マナと水分を多く蓄える性質を持ったハーギモースの葉。


しゃきっとした食感と噛めば溢れるエキスは高級サラダとして好まれる。


錬金術にも使えるので、常に在庫不足気味の人気の品。


価値:1450ソール


――――――――


 一回前の可食テストのオーランツの実は味わえなかったからなぁ。口寂しさが紛れるね。

 まだ空腹にはなっていないけれど、結構運動してるので水分と栄養を得られて身体が喜んでいる感じ。あっ、飲み込んじゃった……。

 ふぅ、一旦食レポはこのあたりにして。


 識別結果は可もなく不可もなくだった。

 マナが多いっていうのは将来性はあるんだけどね。食べて即効果がなければまだ錬金術のれの字の可能性も見えてない状態じゃ宝の持ち腐れだ。

 出会った時としては消滅時の存在因子リソースが大っきかったから、もっと特別なファンタジーな効果を期待してたけど普通の食材レベルだなぁ。

 


 いやでも、庶民のおやつらしいオーランツの実が8ソールという価値だったのにこれは1450ソール。

 錬金術の素材としてなら高いか低いかわからないけど、サラダの具材としては確実に高いだろう。

 ヒエラ草の情報を呼び出しても、香草に使えるのに420ソール程度だし。


 ソールという恐らく通貨であろう貨幣価値がいまいち情報不足で判断しずらいけれど、この3つの関係性だけでいうならレアなアイテムではある。

 ハーギモースの葉を拾ったあたりの木を見上げれば、結構わさわさ生えている。一攫千金狙えるのでは…!?

 まぁまだ金銭という文明の恩恵にあやかれない森暮らしウーマンなので、しばらくは毎食のサラダになってもらおう。結構美味しかったから食事が楽しみになったね!



 でも落ちたハーギモースの葉はできれば食べたくないから、今日中に木に生えたままの葉を収穫する方法を考えなきゃ……。

 結構高いところに生えてるんだよね……決して私の背が低いだけではない。

 木に煽られてる気分になったので、八つ当たりにびしびしと幹をクリックしてやった。異世界で力を手にした以上、私の身長をイジるやつはギルティなのだ……!!

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