第8話 実食!
しんみりした気持ちを拭い去るように、ありったけの
一気に収益が1.4倍だ。
クリックで稼げない私にとっては救世主のような存在に見える。
やはりこの【無職】は有能な【無職】だと思う。
ありがとうと感謝を込めながらクリックし続けること5分後。
【無職19LV】まで上がり、ついにレベルアップのための消費
今後は大きな変化がない限り更に成長が遅くなるだろう。
一度ステータスを確認して、方向性を調整しよう。
「ステータス!」
――――――――
【ステータス】
名前 【
種族 【
年齢 【17歳】
称号 【
能力値
総合LV22
HP 202.1/204
MP 0.3/1.8
CP 1/1
筋力 5.4
魔力 0
防御 4.5
精神 30
器用 35
敏捷 2.9
幸運 16
CDMG 5.4
7.3
181.7
所持金
0
職業
【無職LV19】【見習い冒険者LV3】
スキル
【
『職業スキル』
【モラトリアムLV1】【初級植物知識】
――――――――
「ふおぉぉぉぉ!!」
筋力値がさらに上がり、もうすぐ元の宮子ちゃん3人分へと届きそうになっている。
あと何気に精神もがっつり上がっている。
人並み以上だった器用の『能力値』に近いので、今の私はメンタル強者になっている可能性がある。精神が文字通り精神面に直結しているかはわからないけれども。
うーん、これはかなり強くなってるね! 元が弱すぎたともいう。
CDMG6はどの程度の相手を倒せるのか、本格的に調べる時が来たのかもしれない。
ついでに最新職の【見習い狩人】もチェックしておこう。
――――――――
【見習い狩人】
獲物を狩り日々の糧にする道を選んだ者の職。
人の知恵を武器に獣を追い詰める。
LVUPボーナス HP+4 CP+1 筋力+1.7 敏捷+3 器用+1 幸運+0.3
――――――――
おぉ。
さすが消費
ボーナスが掛かる『能力値』の種類も多いしその割に上がり幅が大きい。
恐らくクリック速度にも影響している敏捷が3も上がるのはかなりの強みだ。
現時点で私の初期値から敏捷が約1上がっているけれど、そのせいか以前より身体が軽い。
さらにクリックしても腕の疲れがそこまで感じられなくなっている。
これは筋力も影響している可能性があるけれど、とにかくこの恩恵は無視できない。
【見習い狩人】は【見習い冒険者】をだいたい4回レベルアップできる
セオリー通りなら新規ランクを買うのは一つ下のランクをある程度強化してからの方がいい。
でも【見習い冒険者】を4回レベルアップしても、私のクリッカースキルの仕様ではすぐに稼ぎが上がるわけではないので普通のクリッカーのセオリーは一旦忘れてもいいかもしれない。
同じ
よし、あと2回【モラトリアム】を受け取ったら大体15分だし、とりあえずそれで【無職LV20】まで上げてしまおう。
その後は唇での5分間の可食テストを行いつつ
そうすれば【モラトリアム】だけでも100の
ここは我慢だ!
つんつんつんつんつん。
じっと雑草を突きながら待つ。
【モラトリアム】2回で得た
どうやら20LVの節目ではなにもボーナスはもらえないようだ。
肌での可食テストも同時に終えたので、草をまた揉んで汁を滲ませ唇に乗せる。
長い雌伏の時が来た。
つんつんつつつん。
リズムを刻みながらレベルアップしたい欲求を抑えつつ突く。ひたすら突き続ける。
毎分ごとにレベルを上げていたのでただ突き続けるのはとてもつらい。
お楽しみがないとやってられないぜ!
しかし今は力を溜めることを選ぶ。
この停滞は大いなる躍進のための対価なのだ。
つんつんつん。
つんつんっつんつつつつつん。
つつつつつつん。
YOU! レベルアップしちゃいなよ! という悪魔の囁きに耐え抜き、5分間の拷問を凌いだ!!
がんばった私!!! えらいぞ私!!!
自分を目一杯褒めつつ、可食テストしていた唇の上の草を手に取る。
レベルアップで強化もしたいけれど、まずはこの草を処理してしまおう。
これが食料にならないようなら、レベルアップ作業と同時に次の種類の雑草を試さないとだしね。
謎の草をじっと見つめる。
君とも、長い付き合いだったね。
肌、唇と草を当ててきたもののかぶれたり痒くなったりといった異常はなかった。
次はいよいよゴールのお口にポイである。
結構色々使いまわしたので同じ種類の新しい草にチェンジしたいけれど、それで万が一違う種類の草を食べてしまったらこの20分間どころか私の命まで水泡に帰しかねないので諦めて同じ草を口に含むことにする。
多少きちゃないくらいでは命には変えられないのだ。
「いくよっ……いただきますっ」
勇気を出して……はむっ。
ティロン♪
軽快な電子音が頭に響く。
――――――――
【ヒエラ草】
緑の多い日向でよく見られる植物。
香草として用いることができる。
一般的に知られる回復薬の基幹素材でもある。
価値:420ソール
――――――――
「おおおおおおおお~~~~~!!!」
こ、これだよ!!
すごく異世界ファンタジーって感じだよ!!!
電子音とともに頭の中で念願の異世界産情報がポップした。
【初級植物知識】は視覚的に見るタイプではなく知識として直接蓄えられるタイプのようだ。
ウィンドウ形式もいいものだけれど、色々な形式が体験できてホクホクだよ!
そして肝心の草の情報。
どうやら一発目でビンゴしたみたい。
内容的に食用できそうだし、なんならHP回復までできるかもしれない。
周りを見回すと辺り一面にこのヒエラ草が生えていることがわかる。
一度識別できたものは食べなくても感覚的に理解できるようだ。便利だね。
どうやらこの辺りはヒエラ草の群生地だったみたい。
これで最大の懸念だった食料と水分は最悪なんとかなるはずだ。
過剰摂取の問題もあるかもしれないし、数週間これだけで過ごしてたら確実にミネラル不足で体調を崩しそうだけれど、少なくとも数日で餓死というルートは回避できただろう。
正直ここまで「この夢の世界が楽しいから」モチベーションが続いていた。
一種の興奮状態というものでもある。
だから、そのうちエネルギーが切れ冷静になってしまい、心が折れる可能性も高かった。
夢の異世界とはいえ、サバイバルでのうのうと生き残れると自惚れるほど私が強くないことは痛いほど自覚してたからね。
なので、心折れる前に生き残りの確証を得られたのは非常にプラスだ。
無意識に強張っていた身体から、すっと力が抜ける感触があった。
やはり生死の堺という環境は結構なストレスになっていたのだろう。
まだ外敵によるリスクは残っているが、ひとまずは転移してからずっと心をチリチリと炙っていた焦燥感の鎮火に成功したのだった。
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