第5話 本気の自宅警備をお見せしますよ

こつこつつんつん



【無職】になり新たなスキルを得た私は張り切って雑草刈りをしていた。


「おりゃおりゃおりゃおりゃーーー!!!」

 右腕が死にそうだったので【破壊の指先デストロイ・フィンガー】を左手に装備できないかイメージしたところ問題なくできた。

 助かった。ほんと助かった。

 私の右腕くんは明日を見ることができそうだ。私が明日を見れるかはまだわからないけれど。


 同時に2つは装備できないみたいなので、ローテーションを組んで左右交互につんつん。

 多少ペースを上げても疲労は軽減できそうだ。

 そして、更なる効率アップに貢献したのは存在因子リソースの目安だった。


 ステータスを確認しながら雑草を突くと、入手ポイント量を把握できた。

 【無職】をLV1に上げたことで保有存在因子キープリソースは1.1から0.1になっていた。

 そこから1雑草分が増えた保有存在因子キープリソースは0.3だった。


 つまり1雑草で得られる存在因子リソースは0.2です。

 雑草雑魚い!!

 次に刈り取った時は0.4存在因子リソースになっていたので、どうやら個体差があるみたいだ。

 まぁ微々たる数値ではあれ、具体的な目処が付いたのは精神衛生上とてもベネ。

 "わからない"ということは想像以上にストレスを与えるものなのだ。



 そして待ちに待った1分が経った。とても長い1分だったよ。

 ひゃぁ! 初のお恵みだぁ!


――――――――


保有存在因子キープリソース

1.4(+1)


総獲得因子レコードリソース

2.4(+1)


――――――――



 旨すぎる! 不労所得おいちいおいちい。思わず笑っちゃうね。

 ポイントが溜まったので即座に【無職】をレベルアップさせる。


――――――――


『職業修練』      消費存在因子リソース


【無職LV2】↑      1.4


【見習い冒険者LV0】   10


【???】       100


――――――――



 これで1分後には2存在因子が手に入るよ!

 ちなみに能力値はこう。


――――――――


能力値

総合LV2 (+2)

HP   182/196.4 (+0.4)

MP   0/0

CP   1/1

筋力  2.2 (+0.2)

魔力  0

防御  3

精神  16 (+2)

器用  35

敏捷  2

幸運  16

ATEF  2 (+2)

存在因子リソース獲得+0.02% (+0.02)


CDMG  2.2 (+0.2)



――――――――


 ちょびっと強くなった。

 私の17年間の集大成が筋力2しかなかったことを考えると、これは非常に劇的な変化といえますねはい。

 HPも最大値が上がってるけれど、現在のHPは上がらなかった。


 RPGではおなじみなピンチでのレベルアップ回復は無理なのか……。

 余裕を持ってHPを維持しなくちゃ。


 存在因子リソース獲得ボーナスは小数点第二位以下が表示されないのでまだ恩恵を感じにくい。

 あとATEFという謎の数値が現れていた。

 長押ししてみたら詳細が出てきて、どうやらモラトリアムくんのオートクリックが稼ぐ数値だったようだ。


 無職から生えてきたスキルのくせにきっちり仕事してるねぇ!

 周囲から恵んでもらってるだけだからやっぱり仕事はしてないんだけどね!



 目安が確認できるようになり稼ぎも増えたことでモチベも上がり、ちょっと心の余裕が生まれたので雑草消滅までのデータも調べてみよう。


 つんつんつん。

 無理のないペースで突くこと78回で雑草は光になった。

 だいたい10秒間に30回突くペースなので、約26秒で0.2存在因子リソース

 『能力値』開放前はたしか6分間で6房ほどだった気がするので、ほぼ半分に短縮できたことになる。

 筋力2でも意味はあったんや!!


 データを取りつつまた1分が経過し、モラトリアムの保有存在因子キープリソースが2.7になる。

 レベルアップ! レベルアップ!



――――――――


『職業修練』      消費存在因子リソース


【無職LV3】↑      1.6


【見習い冒険者LV0】   10


【???】       100


――――――――



 いい感じ~!

 勢いに乗りさらに突いて1分、稼いだ分と【モラトリアム】の3で保有存在因子キープリソースは4.9。

 個体値や存在因子リソースブースト、小数点第二位以下の蓄積が効いているのか、徐々に予想値とズレてきているな。

 


【モラトリアム】の絶大な効果で存在因子リソースが大幅に溜まったので、一気に2レベル上げる。

 


――――――――


『職業修練』      消費存在因子リソース


【無職LV5】↑      2


【見習い冒険者LV0】   10


【???】       100


――――――――


 きたきたきた~! 加速してきたね!!

 【モラトリアム】様々である。自宅警備員の面目躍如だね。

 

 これにより1分後には更に5存在因子リソースが増える。

 存在因子リソース加速度が上がりワンランク上の職を狙った方が効率が上がる圏内に入ってきたので、そろそろ次の【見習い冒険者】を目指そう。


 【見習い冒険者】の詳細確認だ!


――――――――


【見習い冒険者】


駆け出しの開拓者の職。


未知を切り開くには力不足だが、まだ見ぬ世界を夢見て経験を積み重ねる。


LVUPボーナス HP+1.4 MP+0.6 筋力+0.5 防御+0.5 敏捷+0.3


――――――――


 ほほー。

 上昇値は【無職】からまだ大きく伸びてないけれど、防御と敏捷が上がるのはとてもありがたいね。

 防御も敏捷も生存性に直結しているはずだし、なにより敏捷は連打に影響があるかもしれない。

 そうなればレベリングはさらに加速しインフレしていくはずだ。ワクワクしちゃうね!


 それに筋力。

 今の私の筋力は【無職LV5】の恩恵で2.5まで上がっている。

 【見習い冒険者】をLV1にすれば、ついに筋力が3になるのだ。


 それは単純に考えればこれまでの1.5倍のパワーを得るということ。

 所詮人類最弱の2から3になるだけなので人からすれば大した差ではないだろうが、小学1年生程度の力しかなかった私にとっては全能感すら感じる変化になるはずだ。

 6歳の力から9歳の圧倒的パゥワーに……あれ、年齢にするとそんなに強くなさそうだぞ……?


 ま、まぁそれもレベルを上げていけばトントン拍子で跳ね上がっていくから……。



 問題は効率だね。

 【無職】をレベルアップするごとに毎分1存在因子リソース利益が増えていく。

 今の【無職】と【見習い冒険者】の消費存在因子リソースの差は5倍。


 【見習い冒険者】で得られるメリットは、その差額を埋められるのか。

 クリッカーゲームでは上位ランクの強化を得れば、数分後には一気に下位ランクの強化をまとめ買いできるほどの大幅な利益をもたらす。

 まさに数字の暴力だ。


 しかしそれはクリックで強化された分の定数ポイントが入るからこそ。

 私のクリッカーシステムは存在因子リソース獲得が突き回す対象に依存している。

 筋力が上がってより多くの存在因子リソースを得られる雑草以外も楽に倒せるならば効率は上がるだろう。


 だが筋力の上がり幅は0.5。

 元が低いから大幅な強化に見えるが、それは敵のステータスと相対的に見た時に影響がある値なのか。

 それに、より強い相手を倒せるといっても、それは順当に雑草より1段階上の相手でなければ割に合わないのだ。

 能力は上がっても対戦相手は提示されないと思うので、次に突くべき適切な相手も探さないといけない。



 安定して時給が上がる【無職】を上げるか、リスクとリターンがある【見習い冒険者】を上げるか。

 この数分の決断で後の成長速度が大きく変わるかもしれない重要な分岐路に私は立たされたのだった。

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